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2004年05月24日

take_House プレカット図

[0401---take_House ]

take-040524.jpg

take_Houseのプレカット図をチェックしている。
木軸在来工法、つまり一言でいえば、柱に梁をかけてつくる工法のことだが、木材の組み方によって柱の長さは一本一本違うし梁の加工も違ってくる。

昔は一本一本違う材料を大工の棟梁がそれぞれ墨付けをして手作業で加工していた。「墨付け刻み」と言う作業だ。墨付けは棟梁にならないと出来ない仕事だが、棟梁に墨を付けてもらった材料の刻みの作業は、見習いの大工が道具の使い方の基本を覚える良い機会としてやっていた。

刻みの作業には、そうした後継者の育成という意味合いもあるが、同時に、見習いは賃金がそれほど高くないので、刻みの作業は手間がかかる割に安価な仕事だった。
それが、今では若手の大工見習いがとても少ない。大工になりたいと思う者がいたとしても、体を使うハードな仕事の割には、なかなか一人前になることが出来ない辛抱のいる仕事だ。(早い人でも5、6年かかる)
現役の棟梁に聞くと、昔は疑うことをしなかった、ほかの道を考えることもなかった、大工の道だけを考えていた。だから、なんだかんだと言って辛抱できた、一人前になることが出来た。だけど、今の若い人はいろいろな道が目の前に見えちゃっているから、それはそれで可哀想だよと言っていた。
というわけで、今時は墨付け刻みをやるもの一人前の大工さんがやることが多く、手間代がバカにならないという事態が生じている。

日本各地の木材の産地に近いところでは、巨大プレカット工場というのがある。24時間稼働の工場で、30坪くらいの家なら20分くらいですべての刻み作業を終えてしまうのだそうだ。機械化というのはすごい。人力で刻みをすれば2人がかりで2週間かかるようなその作業。とても太刀打ちできるものではない。もちろんコストも一人前の大工さんが手で刻むのに比べるとプレカットの方がだいぶ安く出来る。

しかし、すべての仕事がプレカット工場で対応できるわけではない。僕の仕事でも「Ballan:17_House」はプレカットと手刻みのコラボレーション、共同作業で実現している。

いまはローコストで建てたいという方が多い。やはり経済的な未来像に夢物語を語ることが難しい時代。森永さんの「年収300万円時代を生き抜く経済学」は僕らのところにもやってきている。
というわけで、ローコストというのはこれからの家づくりの必要最低限の条件と言うことになるだろう。となると、少しでも工事金額を安く押さえることの出来るプレカットを最大限に生かした設計が大切になる。

僕ら設計者も、プレカット工場に任せられる仕事とそうではない仕事をしっかりと見極めて使い分ける必要がある。そして、それは建設工事費に大きく影響するのだ。

ところが、「森林をいかす家づくりの会」が生まれるきっかけになった「Taketo_House」は、全くプレカットにたよっていない。それは、梁材に杉を使ったからだ。

杉材は現在梁材に主に使われる米松に比べて、強度的には少し劣るくらいだが、乾燥による変形が大きく(もちろん材にもよるが)、柱などの小さな断面のものならプレカットが出来るのだが、梁材のように大きな断面のものともなるとプレカットの機械に通すには大きなリスクがともなう。よって、杉の梁材については、材料持ち込みで加工してくれるプレカット工場はない。(プレカット工場は材木でもうけている。大量に安く全国から材料を仕入れているから、小売りで材木を売っているような流通とは比べものにならない。だから、どちらにしても材料持ち込みで加工だけお願いすると安くない。ローコストからは離れてしまう。)

というわけで、杉材でつくる「Taketo_House」は大工さんの手で刻まれたのだが、最近では杉の梁材のプレカットをやっている工場もでてきている。そこは工場と言うよりも材木屋さんが元になっているところだそうで、もちろん自分のところで乾燥させた大断面の杉材だけをプレカットしている。杉材だからプレカットできないと言う時代は終わりにきているようだ。

プレカットということを巡って、日本の家づくりというものが少し浮き彫りにされる。
プレカットの大工さんの手仕事の融合。そのバランス。そしてコスト。そんなことを考えながらプレカット図をチェックしていた。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年05月24日 21:15

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コメント

最近は、レーザーで曲がりを計測して、丸太梁までプレカットで加工できます。
確かに、職人を育てるとか、技術を伝承するという意味では、墨付刻みの工程は大きな意味を持ちます。しかし、住宅のローコスト化、地価の高い都市部での作業スペースの確保、近隣の騒音対策等々、刻みをしにくい環境になってきました。

投稿者 迎川 利夫 : 2004年05月25日 10:39

迎川さんの言われる通りですね。
技術の進歩とさまざまな作業環境の変化が
プレカットへの道を助長しています。

レーザーで丸太のまがりを測定するのですか。
それはすごい!

投稿者 古川泰司 : 2004年05月25日 11:12