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2005年12月28日

moonbeams---bill evans

[ジャズ--jazz ]

moonbeams---bill evans
1962年5月17、19日、6月5日録音
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Bill Evansという名前。
リリカルで耳に心地よいピアノジャズ。
連想するもの、イメージするもの。リラクシング。
そして、この「Moon Beams」というレコードは
そうしたビルのイメージ、まさにそのもの、なんだろう。

年の瀬のあわただしい時間の中で
温かいお茶を飲みながら一息つきたい、そんなときに
そうだ、エヴァンスのこのレコードを聴こうと手にする。
僕は、チャック・イスラエルズの、ぼーんぼーんと響くベースは結構好きだ。
ビルのゆったりとしたソロから、モチアンとイスラエルズがはいるところ。
「Re:Person I knew」
僕は、耳を澄ませ、たんねんにひとつひとつの音を確認する。

手にしたジャケット。
そこにいるのは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
黄色いバナナのジャケット
そこで、けだるい日曜日を歌っているニコ。
もちろん、そんなことは、ビルのレコードが録音されたずっと後のことだ。
でも、僕にとって、この二枚のレコードは目の前に同じように並んでいる。

そんなことを考えていたら
僕の耳はどんどん冴えてくる。
ビルの紡ぎ出す音のひとつひとつが鮮明に現れてくる。
そこには、どうしてだか、「あり得ないフレーズ」が
細かく細分化されて、砂の山のようにうずたかく積み上げられている。

そこで僕は聞く。
ビル・エヴァンスが原野を切り開いている、その鉈を振り下ろす音を。
革新者としてのビル・エヴァンスの姿。

ビル・エヴァンスは、一度として過去の遺産の上にどかりと座ってえらそうな顔をしていたことなんてなかった。
常に自分の座る場所は自分で切り開いていた。
そういう革新者としてのビルの姿が、ビルの腕が、ビルの指が、
砂の山のような音と音との隙間から、僕の目の前に現れる。
誰も、今までやったことのない、音と音との探求。
目先だけの斬新さなんてうそっぱちだ。
本当に新しいものとは
深く深く自分自身に問うてみる、そういう地道な作業からしかうまれない。
それはそれは孤独な作業に違いない。
ゆえに、その孤独な作業に一路の明かりを灯し、
同じ道中を歩むはずだったラファロの死は、想像できないほどの喪失感をビルに残していった。

その喪失感のなかに埋もれているビルが
あらたに、イスラエルズという希有のベーシストを迎え望んだレコーディングは
こうして僕らの目の前に残され、今でも輝きを放つ。
何気なく聞こえるその音。
その何気なさ。
これ見よがしの斬新さとは縁のない、心に深く届くメッセージが、そこにはある。
そして、吉村順三の建築に、僕は同様の何気なさを感じるのだ。
それは僕の目指すものでもある。

<蛇足>
ベースのイスラエルズは、当時ドン・フリードマンのトリオのレギュラーだった。
イスラエルズを見初めたビルが、強引に引き抜いて自分のところのメンバーにしてしまった。
結構強引なビル・エヴァンスという人物像が浮かび上がる。
ほぼ同時に録音されたドン・フリードマンのこのレコードもすばらしい。

Circle Waltz---Don Friedman
1962年5月14日録音
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投稿者 furukawa_yasushi : 2005年12月28日 11:30