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2006年05月30日

「ジム・ジャームッシュ インタビューズ」

[books ]

「ジム・ジャームッシュ インタビューズ
  —映画監督ジム・ジャームッシュの歴史 」
出版:東邦出版
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最新作「BROKEN FLOWERS」の公開にあわせて出版された
ジャームッシュの実質的なデビューである
1980年から2000年までのインタビューの邦訳。
ここで、僕に関心があるのは
彼の映画作りの方法論。

ジャームッシュの言葉を書き留めておこう。

いい演技は常に監督と俳優の共同作業の成果として出てくるんだと思う。役者にしてほしいことをただ押しつけたり、あるいは逆にただ「自分自身でいろ」なんて言うのは、どちらも僕のスタイルじゃない。(1985年P.61)
思うに、いい演技とはなにかというと、自分自身の中にキャラクターと合う部分を見つけ出して、それを強調し、同時に合わない部分を抑制することだ。(1985年P.91)
役者たちにとっては繊細で大変な仕事だった。彼らは常に、他の役者ともっと違って見えるような個性や特徴を欲しがった。それで僕は---なんというか、ある種---彼らをだましたんだよ、ある程度。なだめすかしてね。でもみんながお互いにあからさまに違うというのは嫌だったんだ。 だからこの場合、僕はジョン・ルーリーにしろ、トム・ウエイツにしろ、自分のキャラクターを完全に展開させ切ってほしくなかった。順撮りにしなかったのもこの理由からだ。彼らを欺いたわけじゃなくて、つまり、役者が意識すべき部分と、すべきじゃない部分があるってことだね。(1986年P.113)
ストーリーは僕にとって二次的なものだ。キャラクターが一番大事だね。それとムード。その後、ストーリーが自分を示唆するんだ。つまり、僕は選び出したすべてのディティールをいろいろに組み合わせてみる。そしてそのときに、物語を語ることになる。ストーリーを作った上で細部を肉付けするというのの逆なんだよ。 でも僕にとっては、こっちのやり方のほうが入りやすいんだよ。もしかしたら客観的なだけかもしれないけれど、こっちのほうが人生に近いと思う。僕は人生を、きっちり組み立てられたものだとか、大きな劇的物語だとは思っていない---というよりいろんな出来事の集まりであって、人はそれを偶然だと言ったり、その時々の気分で解釈しているわけさ。(1988年P.146)
あらゆることは政治的だ。映画に関して僕が心底、嫌だと思うのは、そういうことに疑問を持たず自明視して、意識的であれ無意識的であれ、資本主義、民族主義、拝金主義、成功という概念、キリスト教、消費単位としての家族、ほかにもたくさんあるけど、そういうものを観客がいつのまにか受動的に信じ込んでしまうよう導く作品だ。これらは決して絶対的なことではない。危険だと思うね。(1989年P.170)
よく言われることに、物語の種類は限られているとか、すでにあらゆる物語が語り尽くされた、ということがある。基本的には僕も当たってると思う。何十億という人間がいたとしても、彼らの物語を語ったときにはすべてのある限られたプロットの型にはまってしまう。でも僕を惹きつけるのは、どこの誰であろうとも、人生に対する眼差しは一人ひとり特別で、ほかの誰とも違うということだ。僕はそういうものの感じ方や境遇のマイナーな違いに興味がある。だから僕はバルザックが好きなんだ。こうした差異、そして境目の曖昧なもの、それが僕にとってこの地球で生きていてもっとも刺激的なことだね。しかし、悲しいかな、皮肉なことにこうした差異が、世界の美しさの決め手でもあると同時に、その美しさが永続することを妨げる当のものでもあるんだ。(1989年P.171)
僕らはリハーサルでかなりのセリフを変えてるよ。かなり多いね。役者を台本に縛り付けることにはまったく興味がない。どんな掛け合いなのかというアイデアには忠実でいてもらうけれど、正確にどんな言葉を使うかはこだわらない。つまり、シナリオが機能する程度には忠実であった方がいい。(1994年P.231)
ヴィム・ヴェンダースから特別な影響を受けたというつもりはないし、僕の好きなほかの監督とその点では違わないね。ヴィムのやり方は僕とは違うし、思うに、シナリオなしで撮り始めてそこから物語を見つけてゆくほうをしばしば好むね。僕はそういうやり方はしない。(1999年P.332)

映画作りを家づくりになぞらえてみる。
・映画監督=設計者
・脚本=設計図
・俳優=住まい手
・照明、大道具、衣装、メイクなどなど=職人さん(工務店さん)
・完成した映画=家

このように読み替えてジャームッシュの言葉を読むと
僕が考えている家づくりの理想がみえてくる。

方法論に関心があるというのは、こういうことだ。

まだ書き留めておきたい言葉もあったが
方法論に絞ってみた。
示唆に富んだインタビュー集である。

○「ジム・ジャームッシュ INTERVIEWS」(訳注を担当された岡村さんのブログ記事)


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2006年05月30日 00:00

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コメント

ジャームッシュを見る度に、「ルックスは力」ですなと思ったりしますです。ほほほ。

投稿者 kazoo : 2006年05月31日 08:31

kazooさん
ジャームッシュ、かっこいいですな。
10歳違うから、僕も10年後はニール・ヤングではなくて
ジャームッシュを目指すことにしましょう。方向転換です。
ちなみに、うちの奥さんはジャームッシュの大フアンです。

投稿者 fuRu : 2006年05月31日 09:26

トラックバックありがとうございます。

ごめんなさい。
今、間違って消してしまいました・・・

投稿者 okmrtyhk : 2006年06月06日 08:22

okmrtyhk さま
本書の訳注をされた方の記事にTBしてしまえるというのも
ブログの醍醐味。というわけで、失礼とは思いましたが、TBさせていただきました。
>今、間違って消してしまいました・・・
と、ここは、しつこくもう一度TBっと・・・。

投稿者 fuRu : 2006年06月06日 10:36

いやーこちらこそすいません。

ありがとうございました。

投稿者 okmrtyhk : 2006年06月07日 23:08

いえいえ、こちらこそ。

投稿者 fuRu : 2006年06月07日 23:16