2012年10月15日

「ブルックリン・フォリーズ」---ポール・オースター

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「ブルックリン・フォリーズ」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 出版:新潮社

ポール・オースターのフアンであるというのは、どういうことなんだろうか、なんて考えてしまうこともあるのだけれども、この本はとってもとっても面白いので、オースターって誰?という方にも、アメリカ現代文学好き、はては村上春樹好きの方にも読んでいただきたいと思っていたりします。

オースターの小説は、時にくどくて、読んでいて重い気持ちになるものもあるかなと思いますが、このおはなしはとてもとても明るい希望のラストシーンに向かって、めまぐるしい展開が次はどうなるのかという興味となりとても面白く、ついつい引きこまれてしまいました。

オースターの小説で、これほど希望に満ちたおはなしは他にあったでしょうか?

というわけで、多くの方にすすめできる面白い本であります。
柴田元幸さんの翻訳というのもおすすめポイントです。

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2012年08月20日

「あの川のほとりで」---ジョン・アーヴィング

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「あの川のほとりで」
著:ジョン・アーヴィング 訳:小竹由美子 新潮社

長い長い、ジョン・アーヴィングの新作を、随分と長い時間をかけて読み終えました。

読み終えてわかることではありますが、主要な登場人物はさほど多くありません。しかし、場所を移動するたびに名前を変える主人公たちや、チョイ役で出てくる人物が大変多くて、読んでいるうちに頭の中が混沌としてきます。それが作者の狙いのひとつだろう、だから、頭を混沌とさせながら読むのがいいはず。それは間違いなく確かなことだと思いますが、大した役ではないと思っていた人物が、物語の実は重要な役回りとして後から出てくるなど、何人かの登場人物が物語のプロットとしても重要なので、ますます頭の中を混沌とさせて読まないといけないことになります。

こんな紹介をすると、なんだか難しそうな小説だなと嫌厭されてしまうかもしれませんが、でも、人生、そんなに簡単でシンプルなプロットと展開であるはずもなく、そうした人生の問題に身を寄せるように共感を呼ぶ物語に触れるには、そのような、極めて技巧的に構築された小説世界に触れる必要もあるのではないかと、思ったりします。そうした意味で、アーヴィングのテクニックは凄まじいものがありまして、その凄さを読むのもこの小説を読んでゆく楽しみかもしれません。

そして、最後の最後で、ほっと元気をもらえる、そんな本です。
こんな紹介文で興味を持たれた方には、超お勧めの一冊(実は上下巻あるので二冊)です。

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2012年06月25日

「週末、森で」---益田ミリ

「週末、森で」
著者:益田ミリ 幻冬舎文庫

家内が好きな作家に私自身もはまってしまうことが時々あります。
宮部みゆき、斎藤隆介、町田康、ジョン・アービングもそうです。
そして、つい最近、家内がはまって、私も一気に読んでしまった作家が益田ミリさんです。
代表作の「すーちゃん」も良かったですが、なかでも、この「週末、森で」という本がよかったです。

主人公の早川さんは懸賞で自動車が当たったことがきっかけで、都会を離れ田舎に引越します。
田舎とは言っても駅の前ですし、畑を耕したりと自給自足のエコライフ、ナチュラルライフを実践するわけではありません。
田舎暮らし、というと、どうしてもそうしたエコライフやナチュラルライフの実践のために、というイメージがついてきてしまいますが、早川さんはそういうこととはまったく縁がありません。
自然のなかで、自然体で暮らす一人の女性として描かれています。

早川さんには仲の良い友人が二人います。マユミちゃんと、せっちゃん。どちらも都心でOLをやっていて、その二人が週末になると早川さんの家に遊びに来るようになります。手土産は都会のお店でしか手に入らない限定スウィーツだったりします。その二人は早川さんと森を歩きいろいろな気づきをします。その気づきが彼女たちを森へと誘うのです。

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2012年02月25日

「小屋と倉」---安藤邦廣

2月18日の土曜日(2012年)、学士会館で行われた、安藤邦廣先生の建築学会賞受賞を祝う会に末席ではありますが参加させていただき、先生の受賞をお祝いさせていただきました。

安藤先生の恩氏である内田祥哉先生を始め建築界のビッグネームが集まる盛大な集まりでした。私は武蔵野美術大学の建築学科を卒業したあと筑波大学の大学院に進学。そこで安藤先生と出会うことになります。今から25年も前のことです。

もともと、民俗学や文化人類学に興味があった私は安藤先生に誘われ民家の調査に出かけるようになりました。今回の学会賞の授賞対象は、ちょうどその頃から先生が始められた民家の壁について構法の点からまとめられた一連の著述に対してということでその成果は「小屋と倉」という一冊の本にまとめられています。

その本のなかに「八溝山地のせいろう倉」というのがあります。巻末に調査年が書かれていて最初の年が1985年とでています。まさに、1985年頃とは、私が安藤先生に同行して北茨木へせいろう倉の現地確認を行った時なんですね。その時は予備調査という感じでしたので正式な調査協力をしたというわけではないのですがそれでも、本で紹介されている倉を見てとても懐かしくなったのでした。

安藤先生がパーティの中でご自分の現在にいたるまでのお話をされたのですが、八丈島の台風被害の調査に行ったことが原点であったということを言っておられました。八丈島の被害にあった民家の被害の状況を調査している時に、村人が集まってきて、みんなで 一軒づつ茅葺の屋根を葺き直していったのだそうです。その村中総出で力を合わせて作っている様子を見て、民家のそれも茅葺屋根に興味を持ち茅葺屋根の研究に進まれたとのこと。その後、興味は屋根から壁に移り、板倉などの民家の壁の研究に進まれます。

八溝山地のせいろう倉はその研究のほぼスタート地点だったというわけです。私は、そんな転機に安藤先生に出会い、民家を教えてもらったわけです。

安藤先生からはなんども民家調査のお誘いを受けて同行させていただきましたが、そのなかでも、気仙沼での調査が未だに忘れられません。
気仙大工というのは独自の世界を作った興味深い大工さんたちなのですが、その大工さんが昔ながらにやっている上棟の様子を記録するのがその時の調査の目的でした。私はビデオカメラを担ぎ上棟の様子を映像に収める役割。とったビデオは編集して、後日大工さんたちにお渡ししました。

気仙沼というと震災で大きく被害を受けたところ。その時の大工さんたちはどうしたのか、気になっていたのですが安藤先生にお聞きしたら無事だったとのこと。

本当によかったです。(アトリエフルカワ通信 Vol.443 より一部修正のうえ転載。)

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2011年10月20日

「大地の家」---鈴木喜一

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鈴木喜一さんは建築家です。設計活動を行いながら、神楽坂で「あゆみギャラリー」をやられています。そして、神楽坂建築塾も主宰しておられます。

工業高校の建築科を卒業され,設計事務所で実務を経験された後に武蔵野美術大学に入られました。ですから,私の先輩になります、が、ムサ美は建築学科ではありませんでしたので、正確には先輩ではないですね。
ムサ美を卒業された後、1980年~1981年、「鈴木喜一建築計画工房」を開設される前、フランスを拠点として世界各地を旅されてます。その旅先で見た風景に、住まいの原風景を感じた、写真に収めた,紀行文を書かれた,それがこの本です。

文章というものには力があります。本を書いた者として言えるのは、著書を記すというのは大変な作業だということです。書きなぐったものがそのまま本になるということは、専業で著述業をやっておられる方だとしても、まずはありえません。ましてや、本業は別にあればなおのこと。私が書いた本も、書いては消し書いては消しの繰り返しで、本になった文章の裏には日の目を見なかった膨大な量の文章が存在しているのです。それくらい厳選して、やっとそれなりの本になる。そうやって、文章を丁寧に磨いてゆくと、やっぱりそこにある言葉は力を持つようになるのです。(私などは、まだまだですが・・・)

鈴木喜一さんの、この「大地の家」に記された言葉には力があると思いました。文章に、言葉に力があると、読んでいてぐんぐん引きつけられます。それは、私が、ここに出てくる地名のいくつかをこの足で踏んでいるからだけではないと思うのです。

鈴木喜一さんの研ぎ澄まされた視線がある。その視線の力を言葉に潜ませるために鈴木喜一さんの気持ちのパワーがこの本からは溢れていると感じます。世に、建築家の書いた本は数多あれども、この本のように言葉にしっかりとした力がある本は残念ながら数少ない。そういう意味で、稀有な本です。ただ、残念ながら版元在庫なしで、鈴木さんの手元にある分だけということです。鈴木喜一さんのブログに注文の方法が書かれています。多くの人に読んでほしい一冊だと思います。

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2011年09月26日

「香港裏グルメ-路地的・女子的」---池上千恵・小野寺光子

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ブログ友達としてお付き合いさせていただいている小野寺光子さんが挿絵を描かれている本「香港女子的裏グルメ」が人気ということで、そのおかわり「香港路地的裏グルメ」が出ました。
見ているだけでお腹が減ってきます。おいしそうな写真が満載。香港、裏グルメツアー、行ってみたい、という、とってもとっても、楽しい本です。

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2011年09月06日

建築家の心象風景-1 泉幸甫

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建築家の心象風景-1 泉幸甫
著:泉幸甫 出版:風土社
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家づくりの会、家づくり学校でも大変お世話になっております、敬愛する建築家泉幸甫さんの本です。
この本は建築家の作品集というよりも建築家の自叙伝のようなところがあって、ひとりの建築家の生き様までもトレースして人生と作品のつながりを浮き彫りにしようとしている、そんな感じの本です。
思えば、建築設計事務所を独立してやるというのは、これはもう生き様の問題です。自分の考えと世界観への共感をもとに、クライアントも施工者も一丸となって一つのものを作り上げるのが建築です。そうした建築を成し遂げるという生き方を選ぶということが、独立して設計事務所を営むということにほかなりません。
泉さんの本を読みながら、そんなことを考えました。

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2011年08月09日

「最後の授業」---北山修

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「最後の授業」
著:北山修 出版:みすず書房
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私は北山修のフアンです。
もちろん、私はフォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」が大ヒットした時代に幼少期を送った世代なわけですが、その時に北山修を知っていたかというとそんなことはありません。たまたま学生時代に本屋さんでみつけた「他人のままで」という単行本の著者として、精神分析医として、私は北山修と出会ったのです。

フォーク・クルセダーズが1968年に解散したあとの北山修はラジオのDJをつとめながら音楽活動を続けていました。特に作詞家としての功績は素晴らしい。その北山修は精神分析医としての道を進むべく大学院に進学、それと同時に音楽活動から離れてゆきました。

北山修はラジオのDJを通じたマスコミュニケーションの送り手側の体験者としての自らの貴重な経験から、マスコミュニケーションとパーソナルコミュニケーションの分析をはじめます。先にあげた「他人のままで」もその一冊なのです。
その後、さらに北山は、一方公的なマスコミュニケーションが、インターネットなどにより双方的になったことと、パーソナルコミュニケーションの差異を分析しています。その論理と精神分析医としての臨床を通じたひとつの回答がこの「最後の授業」のテーマになっているのです。

北山修のフアンに限らず、メディアを通じたコミュニケーションについて考える人には読んでみる価値のある本ではないかと思います。

コミュニケーションツールとしてインターネットに可能性があるとすれば、インターネットコミュニケーションとパーソナルコミュニケーションとの違いを考えることが必要だと思うのです。

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2011年07月29日

「村上ラジオ-大きなかぶ・むずかしいアボカド」---村上春樹

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「村上ラジオ-大きなかぶ・むずかしいアボカド」
著:村上春樹 出版:マガジンハウス
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村上春樹の最新エッセイです。ananに連載されたものをまとめたのだそうです。連載は今も続いているようで、なんともたわいもない短いエッセイ集。

そのなかで印象に残ったのはおにぎりの話。

ananという女性誌に連載エッセイを書くことは、読者である若い世代の女性から、世代的にもカルチャー的にも離れている(と思われる)村上さんにとって難しいのではないか?というような質問をされて、たしかに難しいが、しっかりと握られたおにぎりは気持ちが伝わる、文章も同じようなところがある、と答えた、というお話でした。

しっかりと握られたおにぎり。おいしそうです。

なんだか、いい話を聞いたなあ(読んだなあ)と思ったのでした。

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2011年07月20日

「<現代家族>の誕生」---岩村暢子

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「<現代家族>の誕生」
著:岩村暢子 出版:勁草書房
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変わる家族 変わる食卓」での「食ドライブ」の調査を補足するものとして「親の顔が見てみたい!」という調査が行われました。「食ドライブ」調査では崩壊した家庭の食卓が報告されたのですが、その崩壊を生んだ原因は一体なんだったのか、という問いかけから、調査対象の主婦たちの親の世代への聞き取り調査「親の顔が見てみたい!」が行われたのです。本書は、その親世代への聞き取り調査をまとめたものです。
副題は「幻想系家族論の死」。

ところで、現在放映中のNHKの連続テレビ小説「おひさま」は、戦前から戦後にかけての時代を生き抜いたひとりの女性が主人公のドラマですが、食べ物がひとつのテーマと言ってもいいくらいにドラマの重要な要素になっています。食べ物が家族を、そして人々をつないでゆくのですね。そして、ちょうど「親の顔が見てみたい!」調査は、この「おひさま」の主人公たちの次の世代が対象となっていて、「おひさま」世代と「親の顔が見てみたい!」世代の二つの世代の間に横たわる大きな距離こそがこの本のテーマなのです。
この「距離」というのは、戦争による日本という国のイデオロギーの大転換と経済の混乱によるものなのですが、その大きな距離について、この本を読みながら「おひさま」をみながら考えてしまうのでした。

というわけで、内容については触れません。
ただ、「変わる家族 変わる食卓」そして、「食ドライブ」の調査の継続報告である「家族の勝手でしょ!」を読まれた方に、この本を読んでみられることをおすすめしたいと思うのです。

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2011年07月11日

「使える!内外装材[活用]シート」---みんなの建材倶楽部

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「使える!内外装材[活用]シート」
著:みんなの建材倶楽部 出版:エクスナレッジ
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設計仲間が本を作りました。
住宅を中心に、世にあまたある建材を使い尽くすための本です。
実はスタート地点では私も関わっていましたので、そういう本の完成はことさら嬉しいものですし、本の出来がいいとなればなおさらです。
設計事務所必携の一冊が出来上がったのではないかと思います。

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2011年07月05日

「家族の勝手でしょ!」---岩村暢子

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「家族の勝手でしょ!」
著:岩村暢子 出版:新潮社
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1998年から2002年までの「食DRIVE」調査をまとめた「変わる家族 変わる食卓」の続編です。2003年以降、2009年までの調査結果が、今度は豊富な写真で紹介されています。
前著も衝撃的でしたが、今回は読み進めるうちに、言いようのない不安感が湧いてきました。それは、一体どこから来るのだろうかと思っていたのですが、先日、電車の中でこの本の頁をめくっているときに思い当たりました。

それは、本音と建前につきまとう「矛盾」の不在です。

好ましい理想的な食事のあり方について語る主婦たち。しかし実態はそこからかなり乖離しているというのがこの調査が明らかにしているところ。ここには主婦たちの本音と建前があるわけです。
ところで、私たちは、本音と乖離した建前を語る場合に、ある種の照れや、後ろめたさを抱きながら語るわけです。これは、ひとりの人間の中で本音と建前が矛盾として結びつけられているからだと思います。
ところが、この本の中で紹介される主婦たちの言葉には、この矛盾が存在しないのです。ひとりの人間の中にまるで二人の人間がいるかのように、本音と建前が共存している。本音と建前がまるで別人になって分裂している、この分裂感。この分裂感に私は言いようのない不安を感じながらこの本を読んでいたのでした。

これは一体何なのか?とてもとても深い深いものが、ここには潜んでいるような気がします。これについては、引き続き、その正体を突き止めるべく考えてゆきたいと思っています。

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2011年06月15日

「変わる住宅建築と国産材流通」---赤堀楠雄

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「変わる住宅建築と国産材流通」
著:赤堀楠雄 林業改良普及双書
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日本の住宅の多くは今でも木造です。昔から大工さんがつくってきました。大工さんは木材を仕入れ、目を光らせてそれを吟味して、一軒一軒の家に一本一本の材木を使ってきました。それは、木というものが生き物であり、決して均質な材質ではなく、一本一本個性的な材料だからです。一本一本の特徴を見極めて使わなくてはバランスのとれた長持ちする家は出来なかったからです。ですから、木を生かした家づくりの要は大工さんだったのです。

だったのです、と書いたのは、今では木材という材料を吟味できる大工さんが激減してしまったからです。

激減の背景には、家づくりを効率化してゆこうという社会の要請がありました。特に太平洋戦争のあと、戦災での住宅不足を解消するために効率的な家づくりが求められました。大工さんが目を光らせてしっかり作ってくれる方が良いに決まっているけれども、一戸でも多くの家を完成させるために、それまでの方法を変えてゆく必要があったのだと思います。

それから、日本の高度経済成長とともに労働力のホワイトカラー化がすすんだことが昔ながらの大工さんの激減をまねきました。技術の習得に何年もかかる大工という職業が時代遅れのものになっていったため、大工になろうという若者が激減してしまったのでした。

大工の文化が支えてきた木の家づくりですから、その大工がいなくなったらどうなるでしょう。大工が担っていた役割を近代的な技術で受け継いでゆくしかないと思います。しかし、戦後からしばらくは大工の文化は古くて捨ててしまってもいいものだと考えていた人が多かったのでした。それが最近になり、木の品質を問うことによって、木という生き物と真摯に向かい合った結果、大工が何百年も培ってきた木を使う文化の大切さが分かってきたのです。

住宅の生産を前近代に戻すことが1番なのかもしれませんが、そうした態度は住宅を必要としている人に対して、私たち住宅を作る側としては無責任だと思います。やはり、効率的に作れるほうがいろいろな意味でいい。では、木という生き物と付き合ってゆくにはどうしたらいいのか。そうした問の中で、私も含めて多くの人が木の家づくりに取り組んでいます。

前置きが長くなてしまいましたが、この本は木の家づくりが抱えている問題をバランスよく解説していると思います。木の家づくりに関わる人には必読の書ではないかと思うのでした。

真摯に問題と向き合う。そこからしか物事は始まらないのです。

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2011年06月07日

「マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則」---P.ドラッカー

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「マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則」
著:P.ドラッカー 訳:上田 惇生 出版:ダイヤモンド社
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川島みなみさんがこの本を読んでいるというので読んでみました。私は本家の「もしドラ」は読んでいません。NHKで放送されたアニメを見て読んでみようと思ったのです。
実は、アニメ番組の各回の最後におまけとして、ドラッカーに影響された人のインタビューがありました。そのなかで誰が言っていたのか忘れてしまいましたが、ドラッカーの「経済人の終焉」という本の紹介をしていた方がおられて、その本が第二次世界大戦後、全体主義への批判として書かれているということを知り、私もドラッカーに興味を持ったのです。アンチ全体主義を根底に持った組織論。そう考えると俄然興味も湧いてきます。

さてさて、内容ですがとても実践的な本なので実務として様々なマネジメントの問題に直面している人であれば、水を得た魚のように読むことが出来るのかもしれませんが、組織と呼べるようなものに所属した経験のない私には、残念ながら理解が難しいところも数多く、読み終えるのが結構しんどかったというのが正直なところです。しかし、最後の最後に、マネジメントとは「人の強みを生産的なものにすること」という一言があり、人を大切にするマネジメント論の核心がここにあると思いました。川島みなみもこの言葉を噛み締めて高校野球部のマネージャーをやったことでしょう。

また、「マネジメントのパラダイムが変わった」という付章では、グローバル化などで組織として柔軟性が求められている現状が的確に分析されており、本書の原著が1974年に出版されてからの大きな変化にもしっかり向き合っていると感じました。そのために、「マネジメント」を35年以上前に書かれた昔の本と言って済ませられないものになっており、それはイノベーションの大切さをとくドラッカーの、まさにその姿勢が現れているのではないかと思いました。

この本の翻訳が最初に出たのが1975年。その本も版を36版まで重ねたといいます。そして、付章が加えられた今回の2001年の新訳も、私が買った本で43刷。
現代社会では様々な場面で組織で行動することが避けられない時代です。マネジメントすることの意味と意義を各人がそれぞれ模索している時代なのだと思います。

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2011年06月05日

「ロング・グッドバイ」---レイモンド・チャンドラー

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「ロング・グッドバイ」
著:レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹 発行:早川書房
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「純文学」と「娯楽小説」に何らかの違いがあるとすれば、いかに長い期間に渡って多くの人に愛され支持されてきたかが鍵となるでしょう。この違いは「古典」と「現代」の違いと言い換えても良いかもしれません。
レイモンド・チャンドラーが1953年に発表したこの小説は、1958年には清水俊二氏の訳で同じく早川書房から刊行され、日本においても長きに渡って愛されてきました。とすれば「ロング・グッドバイ」という小説は「古典」であり「純文学」であるといえます。
でもしかし、そんなふるい分けなんて笑い飛ばしてしまうほど、この小説は面白く、今なお多くの人の心を揺さぶるのです。
もともと、「純文学」という括りは小説全体の中で一段高い価値のあるものというブランディングによる決めつけでしかありません。
小説とはなにか?小説をなぜ私たちは読むのか?それはただ単純に面白いからです。笑い転げたり、共感したり、悲しくなったり、憤ったり、本を読みながら私たちは疑似体験をし、物事を深く考えるきっかけをもらっているのです。それが「面白い」ということであるし、「面白い」ということは定義されるものではなく経験されるものなのですから、実は小説の価値、面白さというものは、ブランディングという、いわば定義(決めつけ)とは一番遠いところにあるものなのです。
村上春樹が「ロング・グッドバイ」を「準古典小説」と言って理論武装するその意図は、たぶんこの小説の面白さを最大限にフォローしたいということにあるのだと思います。
「面白ければいいじゃない」
まさにそのとおり。でも、ただ面白だけで何十年も愛され続けることはない。そこに、この小説のほんとうに面白いところがある。
心理描写がなく客観的な記述だけで物語を語る。物語とはそもそも解説されるものではありません。登場人物の心理を説明することなど、ただの余計なこと。そのように、淡々と記述することに徹したためにこの小説は今までなかった小説の地平を築くことになった。村上春樹の分析はそのようなところにあるのだと思います。そして、その心理描写をせず物事の起こったさまを客観的に記述するというスタイルはジョン・アーヴィングへの系譜の源流となっているのだと思うのです。

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2011年05月20日

「俳句入門」---寺山修司

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「俳句入門」
著:寺山修司 光文社文庫
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いい俳句を詠みたいと思うならば先人の残した良い俳句を読むのが一番、ということで、いろいろな本で紹介されている俳句を読むことになるのですが、そのなかでも、はっ!とする句が時々あって、その作者は誰だろうかと気にすると、ここのところ寺山修司の名前によく出会うようになっていました。
寺山修司というと「田園に死す」とか、私の場合にはまずは鮮烈な映像作家としてあるのですが、実は高校時代に俳句の世界でその名を知られるようになったということはつい最近知ったのでした。
しかし、俳句から短歌へと定型詩でその実力を世に知らしめた寺山は20歳で俳句を詠むことを一切やめてしまいます。
その後の寺山の活躍は多くの人の知るところ。その活躍があってこそこうした高校生時代の俳句に関する原稿を集めた本も出版されることになるのでしょう。ですから、この本は「俳句入門」とありますが作句の本ではなく、若き(青森の高校生)のいささか青臭い俳句に関する批評的言説集。寺山修司という人物を深く知るための一冊というところでしょうか。

「俳句入門」を期待して読んでいたので、ちょっと肩透かしではありましたが、誰もが詠める大衆文学としての俳句というようなことを言う人に対して、俳人とはなにか?と問う寺山の問いかけが私の関心を呼びました。私が考える、住まい手参加の家づくりに共通した大きな問いかけがそこにはあるからです。

寺山は詩を吟ずるということは祭り事であり、詩人・俳人は祭司であるから、彼らが詩や俳句を詠むのは一般の人が詠むのとは違った意味合いがあるのだ、というようなことを言っています。
そういえば、家づくりも同じです。家づくりは祭り事であり、それを司る大工の親方は棟梁として神様に近い存在として家づくりの中心にいたのです。
現代社会になって、様々なものが変わったとはいえ、家づくりが祭り事であることは変わっていません。もちろん、住まい手参加の家づくり、ハーフビルドの家づくりも祭り事としてあるべきだと思うのです。その時に、昔の大工の棟梁が司っていた祭司としての役割を誰かが果たす必要がある。ひょっとして、ハーフビルドでの祭司は建築家か?いやいや、住まい手が自ら祭司となるのか。これは、ハーフビルドの家づくりを考えるときに忘れてはいけないことだなと思ったのでした。

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2011年04月20日

「下水道革命」---石井勲

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「下水道革命」
著:石井勲 出版:藤原書店; 改訂二版 (1995/11)
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師匠である長谷川敬さんの事務所に私が入るきっかけとなったのは、長谷川さんからいただいた一枚の年賀状に描かれていた浄化槽のイラストでした。
年賀状には、その浄化槽で処理した水は飲めるくらいにきれいになるんだよという夢のようなメッセージが書かれていました。
ちょうどその頃、その時に務めていた設計事務所で水の問題についてのレポートをまとめなくてはならなくなり、長谷川さんにその浄化槽について話を聞きに行ったのを今でも覚えています。
その時に、長谷川さんからは「石井式浄化槽」というものを教えていただき、あわせてこの「下水道革命」という本も紹介いただきました。

浄化槽というのはバクテリアに有機物を分解してもらう装置です。酸素を使って分解するバクテリアと酸素が嫌いなバクテリアがいて、大きく二種類に分けられるバクテリアのためにそれぞれ部屋をつくって、そこに有機分を通して分解・浄化します。市販の浄化槽も原理は全く同じなのですが、どうしても処理能力があまり高くない。

石井氏は市販の浄化槽の問題点を大きく2点にまとめています。
ひとつはバクテリアの生活圏である槽の大きさが十分に大きくないことであり、
もうひとつは槽内の環境が複数のバクテリアが共存するのに適していないことです。バクテリアは複数種がコロニーを形成してバランスを取ることによって活発に活動するようになるのです。

こうした問題点を解決するために、まずは、市販の浄化槽よりも大きな槽にしました。そして、バクテリアの生活環境を良くしてあげるために、エアーの調整をまめにして、さらには様々なバクテリアが生活できるよな環境を作るためにヤクルトの空き瓶を槽の中に充填しました。その結果、飲用が出来るほど綺麗に浄化することができる浄化槽の開発に成功したのです。

この高性能な浄化槽があれば、河川の汚染を防ぐことができます。また、数軒から数十軒程度の処理能力を持った浄化槽をコミュニティで共有することで、下水道という巨額のコストが掛かるインフラからの脱却が出来るのです。

今回の震災での下水道インフラへの大きなダメージを考えると、個人でこうした高性能な浄化槽を持つことはその対策としてとても有効だと思います。ただ、槽の大きさが大きいので敷地に余裕が無いと設置できないという問題があります。ですから、一軒で使うというよりも、数十軒で共有する事で、中域、小域での下水処理を実現すれば、災害時のリスクを分散する事が出来るわけです。下水道というような広域を対象とした考え方ではない、中小を対象とした小さなインフラの集合体で考えること。そのためには、石井式浄化槽の考え方が有効ではないかと思ったのでした。ずいぶん前に読んだ本ですが、この機会にご紹介させていただきました。

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2011年04月12日

「設計監理を極める100のステップ」---家づくりの会

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「設計監理を極める100のステップ」
著:家づくりの会 発行:エクスナレッジ
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家づくりの会の仲間と本を作りました。
ひとことで言うと設計監理の本です。
今までは、現場監理の本はありましたが設計監理の本、特に住宅の工事に特化した設計監理の本はなかったのではないでしょうか。
設計施工も含めて、住宅設計に関わる人たちにおすすめ出来る一冊になったかと思います。

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2011年04月02日

「経済成長なき社会発展は可能か?」---セルジュ・ラトゥーシュ

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「経済成長なき社会発展は可能か?」
著:セルジュ・ラトゥーシュ 訳:中野 佳裕 出版:作品社
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私たちの最大の関心ごとの一つがエネルギーです。
この本のタイトルには「経済成長」とありますが、実は論点はそこではなくて、エネルギーをふんだんに使ってきた今までのような「発展」は、ほんとうに必要なのか?という、大きな問いかけにあります。
ただ、残念ながら人間は理屈で生きているわけではない、「憧れ」や「羨望」といった理屈では解析できない事象の中で私たちは生きているわけです。ですから、本書を読んでいて感じたのは、私たちを「発展」へと駆り立てているものの実態が、解析できない不透明なベールに包まれている以上、そこにロジックでメスをいれるのは難しいのではないか、という正直な感想でしたし、その不透明なベールの内部を見据えることなくしてはなんの解決にも至らないだろう、ということでした。
しかし、だからといって、この本で語られていることがすべて絵空事だなどどいうつもりは全くありません。というよりも、本書に書かれていることを私は大変興味深く、そして大いなる共感を持って読み終えたのでした。

なんだか、賛成なんだか反対なんだかわからないような書評になっていますが、こればかりは読んでいただいて議論を交わさなくてはならない部分ではないでしょうか。

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2011年03月25日

「はてしない物語」---M・エンデ

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「はてしない物語」
著:M・エンデ 訳:佐藤 真理子 出版:岩波書店
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映画「ネバーエンディングストーリー」を見たのはいつのことでしょうか?
先日、図書館でこの映画のVHSテープを見つけて家族で見ようということになりました。それは、娘がこの原作を読み始めたからなんですが、その原作本が銅色の布で装幀されたハードカバーの、本文は二色刷りの本で、実は家内が小さい頃に家内のお父さんから買ってもらったという、特別な一冊だったのです。

先日「モモ」を読み終えてエンデに興味を持っていた私は娘が読み終わった本をバトンリレーのように受け取り一気に読み終えてしましました。

本当に面白いですね、この本は。
この、面白さ、わくわくする感じ、ドキドキする感じ、読み進める先の展開を、ああかな、こうかなと想像力をフル回転で思い描く楽しさ。本という物、本を読むということの楽しさを久しぶりに存分に味わったのでした。

読んでみると映画は前半しか描いておらず、実はこのおはなしは後半が肝なんだということがわかります。現実世界から想像の世界を見ている前半から、想像の世界に入り込んでしまう後半が、鏡の向こうとこちらのように一対の世界となっています。
それは村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」にも近い物語の構造ではないかとも思いました。
それほど重要なその後半を今まで知らなかったなんて、うかつでした。もっと、早く読んでいればよかった。でも、このおはなしは40過ぎのおじさんが読んでも深く胸に響くものがあるのですが、でもこの響いているところは少年の頃の自分にはなかった部分だなと思います。ですから、40過ぎて読むのも悪くないかなと、そんなことを考えていました。

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2011年02月21日

「雑文集」---村上春樹

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「雑文集」
著:村上春樹 発行:新潮社
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村上春樹の最新エッセイ集というと語弊があるかもしれません。古くは1979年の群像新人賞を受賞したときの受賞の言葉も掲載されているように、今まで単行本の形で発表されていなかったさまざまな文章が集められています。他愛もないものも多いのですが、それでもこの本は「壁と卵」という有名なスピーチの全文が掲載されているだけでも買う価値はあるなと思います。

それ以外にも印象深いエッセイも多く、特に音楽について書いている「余白のある音楽は飽きない」と「日本人にジャズは理解できているんだろうか」など、村上春樹はこんなことを書いていたんだと、新鮮な気持ちで読むことができました。
さらには、翻訳という行為ついて語るエッセイでは自らの創作についての類似性にふれており、かなり興味深い自己分析だと思いました。

まあ、あとがきに代えて収録されている、安西水丸さんと和田誠さんの村上春樹についての対談は、村上春樹の人物像を知る一助としても面白すぎる内容になっていて、これだけでも必見ですね。

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2011年02月10日

「もういちど村上春樹にご用心」---内田樹

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「もういちど村上春樹にご用心」
著:内田樹 出版社:アルテスパブリッシング
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amazonからのお知らせで、ああまた内田樹が村上春樹についてのエッセイを出したんだと思いポチっとして届いた本のまえがきを読んでびっくり。なんと、前著である「村上春樹にご用心」の再編集版ではないですか。ああ、騙されたと憤慨するものの、返品するのも大人げないので、机の上に見えないようにほったらかしにしておりました。
それが、どういうわけか、虫の知らせといいますか、急にこの本を手にとってみようと思って読み始めたわけです。前著は読んでいますから、もう読んでしまったところは読み飛ばしてと思って読み始めたのですが、あれよあれよという間に全部読んでしまいました。
そして、読了後の感想はというと、全部読んで大満足。どうも不思議な感じで読み終えました。ずいぶん前に読んでしまったエッセイも未読のエッセイに挟まれると、なんとも言えない新鮮な気分で読み進むことが出来たというのも発見です。一冊の本を通して、内田樹の村上春樹論がより鮮明になっているとも感じました。
再編集版だということで、躊躇されている方。買って損はない一冊になっていると思いますよ。

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2011年01月05日

「樹の本」が届きました。

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aki's STOCKTAKINGで知った「樹の本」。
さっそく申し込んでいたものが私のところにも届きました。
これはハンディですばらしい。
樹形のイラストも秀逸で外構の植裁計画の時にも活躍しそうです。

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2010年12月24日

モモ---ミヒャエル・エンデ

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モモ
著:ミヒャエル・エンデ 訳:大島 かおり 出版:岩波書店
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ちょっと前ですが、ミヒャエル・エンデを初めて読みました。
ああ、この本を もし高校生のとき、あるいは大学生のときに呼んでいたらどんなだったろうかと、頭をよぎります。
たぶん、私は間違いなくエンデの世界にのめりこんでいったことでしょう。

人は自分の時間を自分自身のために使っています。
他人のために人に協力する時間も、感謝され、人と人とのつながりを感じることが出来ますから、すなわちそれは自分自身のために使った時間だと言えるのです。
しかし、一方では無駄な時間もたくさんあります。おしゃべりしたり考えたり、一緒に悩んだり。でも、無駄とはいっても、その人にとっては大切な時間。それらの時間は人と人の架け橋であり、人と人をつないでくれる潤滑油です。このように、人は自分の為に必要な時間を使っています。無駄な時間なんて本当はありません。その時間が人と人をつないでくれているのです。

でも、少しでも早くたくさんのことを成し遂げようとすれば、おしゃべりは禁物。悩んだり考えたりすることも無駄な時間とされてしまう。その無駄な時間を取り除き合理的に時間を使うことができれば、もっともっと時間を有効に使うことが出来る。モノを作るのだったら、もっともっとたくさんのものを作ることが出来ます。
しかし、そのとき時間は、人との関係を失ない生産性で評価される、つまり時間がお金としてやり取りされるようになります。
自分自身のためにあった時間をお金と引き替えに差し出すこと。自分の時間を誰のものでもないお金にして貯めること。そして、自分の為に必要であったはずの時間が失われ、お金を貯めることが目的になったりします。
「モモ」はそのように自分の時間を失ってしまった人たちの物語です。

モモの中ででてくる「時間泥棒」とは自分自身のものであったはずの時間を奪われていませんか?と、現代人へ大きな疑問符です。

一人一人が自分自身の時間を持つこと。自分自身であること、自分を失わないこと。

ファンタスティックなお話でありながら、テーマは深い。深いけれども暗くはない。これはこれはとても素敵な物語なのです。

クリスマスの夜に書き留めておきたい一冊。

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2010年12月22日

「住宅工事現場写真帖」---刷り上がってきました

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おおおおお!
届きました。
「住宅工事現場写真帖」。
初の単独著書です。
今まで、何度もゲラの状態では見ていましたが、こうして本になってやってくると感慨深いものがあります。
一般の書店に並ぶのは来週くらいからのようです。
amazonでは予約開始。24日発売となっています。

書店に並び始めたら、またレポートいたします。笑

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2010年12月15日

「住宅工事現場写真帖」---初の単独著書です。

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今週の月曜日の早朝になります。
初の単独著書となる「住宅工事現場写真帖」が校了。
私も朝方の3時過ぎまで原稿のチェックと校正をしていました。
校了というのは印刷所にデータが渡って印刷が始まるということです。
出版側の担当者Fさんと編集担当のHさん。デザイナーのKさん。お疲れさまでした。最後まで私のこだわりにお付き合いいただきましてありがとうございます。それから、執筆協力してくれました「ハーフビルド研究会」をいっしょにやっている菅沼さんに感謝いたします。

この本は3年越しの企画がようやくひとつの形となったものです。
なんでこんなに時間がかかったかといいますと
今回の本は「やっぱり、木の家がほしい!」のような文章主体の本ではなく、写真解説がメインの本になっていています。解説を客観的に書くだけならば技術的な問題なのでそれに従って作業を進めてゆけばいいのですが、私にはただの解説書にはしたくないという強い思いがありました。その思いを実現するための書籍としてどのようにしたらいいのかを編集者と喧々諤々。一時期は作業が中断してしまうこともあるような、書いては直し書いては直しの試行錯誤だったからです。

3年の間に当初の思いは幾分修正され、掲載したい情報もずいぶんと整理されました。逆にそれで読みやすい本になったと思います。この本が、著者である私の独りよがりにならなかったのは、編集者の客観的な視線が道標になってくれたからだと深く感謝いたします。

それで、本書の内容ですが、副タイトルに「新しい手づくり住宅のススメ」と付けておりまして、セルフビルドで家を建てたい人のためのガイドブックです。ただし、基礎工事から骨組みまですべてを自分でやるのは大変です。だからといって、自分で家を作ることを諦めてほしくない。無理なく出来る自分なりのセルフビルドを見つけてほしい。だからフルメニューのセルフビルドではなく、半分だけのセルフビルド、ということでハーフビルドのすすめをうたった本になっています。

発売予定日は 12月20日。
私もまだ刷り上がった本を手にしてはいませんが、良い本になったと思いますので、ぜひみなさんも書店に並びましたらお手にしてみてください。

<追記>
写真はカバーの案としてデザイナーさんが作ってくれたものの一つで、実際のカバーに一番イメージが近いものです。副タイトルがこの時は「本格的手づくり住宅のススメ」になっていますね。

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2010年12月13日

「世界で一番やさしい 木材」---木の研究会

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「世界で一番やさしい 木材」
著:木の研究会 発行:エクスナレッジ
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家づくりの会の有志の呼びかけで、木の家に関心をもつ、林業家・製材所・工務店などが集まった「木の研究会」が、それぞれの知見や今までの活動の成果を一冊の本にまとめあげました。
本の対象は「2級建築士の試験を受験する人」ということでしたが、内容はどんどん濃くなってとても密度の高い本になったと思います。
設計者、工務店など木材に関わる人にとって一冊持っていても損はない内容になっています。

第一章と全体の取りまとめを私がやらせていただきましたが、第二章を土曜日に家づくり学校でお世話になった協和木材さんに、第三章を木童さんに、第四章を堀井工務店さんにそれぞれ取りまとめ役をやっていただきました。皆さんの尽力がなければこの本は完成しませんでした。お陰さまで良い本を完成させる事ができました。ありがとうございます。

なお、「はじめに」を私が書かせていただいておりますが、そのなかで肩書きに「木の研究会代表」とありますが、これは「木の研究会を代表して」の誤りです。この場をお借りしてお詫びと訂正をさせていただきたいと思います。
近日中に正誤表を作成いたしますのでよろしくお願いします。

<正誤表Ver.1(2011/01/27)>

17ページ
<誤>古川泰司(木の研究会代表)→<正>古川泰司(木の研究会を代表して)

22ページ
<誤>中段 (図3)→<正>下段3行目に移動

35ページ
<誤>西川材・秩父材 マップ上の位置 埼玉県東部→<正>埼玉県西部

42ページ
<誤>中段 14行目 国産のマツ材→<正>国産のアカマツ材

52ページ
<誤>下段 E-70のスギ、E-90のヒノキ→<正>E-70以上のスギ、E-90以上のヒノキ

70ページ
<誤>上段 15年輪を超えたあたりから辺材は成熟期を迎えて心材となり、これが成熟材となる。このため、年輪の少ない樹木の先端に成熟材は存在せず、未成熟材となる辺材だけが存在する。
→<正>15年輪を超えた丸太の外側の部分は成熟期を迎えた成熟材となる。このため、15年輪以内の樹木の先端にあたる部分には成熟材は存在せず、未成熟材だけが存在する。

98ページ
<誤>中段 7産地→<正>8産地 8番の北米材の解説が抜けている

144ページ
<誤>左段 雨が降ると仕事を休んだ。→<正>雨が降ると仕事を休む、などと言われた。

154ページ
<誤>上段 6行目 手早く入手できる。→<正>手早く入手できる。(表1)

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2010年12月10日

「今さら人には聞けない木のはなし」---林知行

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「今さら人には聞けない木のはなし」
著:林知行 発行:日刊木材新聞社
発行元通販

明日は家づくり学校の2年生を引率して福島の協和木材さんを訪ねます。
家づくり学校では1年生にも木の話をしています。
新建ハウジングプラスワンにも先々月ですが木材のはなしを書かせていただきました。
昨年暮れに出した共著ではありますが初の出版物は「やっぱり、木の家がほしい!」でした。
千葉県の林業家である斎藤さんとの地域材を使った家づくりの運動も8年目。
もうそろそろ書店に並ぶ「世界で一番やさしい 木材」でも、30名近い仲間との共著ですが取りまとめ役をやらせていただきました。
このように、どっぶりと木の家に関わっているわけですが、それでも、間違ったことを書いてはいまいか、言ってはいまいかと、いつもいつも確認しています。
この本は「今さら聞けない」とあるように、知っているようで知られていないと著者が思う項目を分かりやすく解説してあって、今までの私のやってきたこと言ってきたこと書いてきたことを確認させていただくことができました。
もとが「日刊木材新聞」という一般の方の目にはふれることのない業界新聞の連載なのだそうですが、専門家向けの小難しい話ではなく誰が読んでもわかるようなわかりやすい文章になっていて、木のことに感心を持っておられる方、木の家に感心を持っておられる方には大いにお勧めしたい本です。
とても良い本なのですが、残念ながら一般書店やamazonでの取り扱いはないようで、日刊木材新聞のホームページから注文できるようです。

最後に、著者のブログを紹介しておきましょう。

今さら人には聞けない木のはなし(ブログ編)

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2010年12月06日

「木の家リフォームを勉強する本」

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「木の家リフォームを勉強する本」
「木の家リフォーム」プロジェクト編 出版:農文協
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このところ、自分で書いたり関わったりしている本が多いのですが、これは私の仕事をご紹介していただいた本です。
国産材を使った木の家リフォームの事例が沢山紹介されており、「satoyama_House」を「ライフステージで考える木の家リフォーム」(P100)で、「ginkgo_House」を「木の家リフォームで実現させたマンション・シンプルライフ」(P134)で紹介していただきました。

実例もたくさん紹介されていてそれだけで充実しているのですが、この本のすごいところはタイトルにあるように、木の家リフォームをやってみたいと考えている人に役立つ知識が満載されているところです。

木の家リフォームを考えておられる方だけでなく、これからリフォームを考えておられる方にもおすすめの一冊になっています。

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2010年12月02日

「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」---C.ダグラス・ラミス

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「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」
著:C.ダグラス・ラミス 平凡社ライブラリー
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なんだか難しそうなタイトルですが、内容はいたって平易で、特に本書の前半は面白かったです。あまりにも面白く、誰が書いているのかも確認しないで読み進めていって、読み終わる頃に、作者がアメリカ人であることを知ってびっくり。そう思って読み返すと、こういう本は日本人には書けない本かもしれません。

経済学の本かというとそれだけではなくて憲法9条についての鋭い分析があります。

経済については、トルーマン大統領が開発の進んでいない国々に手を差し伸べて発展させるという政策を打ち出した、という話から「発展」という言葉の持つ意味を掘り下げることで、アメリカの政策が、しいては経済先進国が何を目的としていたのかを分析しています。

そのなかで、「経済発展」と「自給自足」が対比されて書かれています。
経済発展主義が歴史を豊かでもあるが問題を多く抱えてしまった現代社会に導いたのです。
著者は、経済発展主義は必然でもなんでもない、特定の要求で推し進められたもので、それが常識であるとするならば、現代の常識とは現代の常識でしかない、と言います。

経済発展の名のもとに地球の資源を使い尽くそうとしている人類。
著者は、その姿を沈没するタイタニックにたとえています。
沈没するのを知っていながら誰も止めることができない。
考えてみると怖い話です。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というジョークがありましたが、横断歩道ならば車も止まってくれますが、真冬の海に飛び込めば全員凍死してしまいますね。

豊かさとはなにか、どういうことか?経済発展は豊かさの一つかもしれませんが、その問題点もある。では、どうしたらいいのか?

「自給自足」が対比されているのは言い得ているなあと、私は膝をたたきながら読んでいました。

ここには、私が考えている家づくり、参加するハーフビルドの家づくりに通底している考え方があると感じました。

これについては、改めて書いてみたいと思います。

みなさんにもおすすめの一冊です。

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2010年12月01日

「オラクル・ナイト」---ポール・オースター

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「オラクル・ナイト」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 発行:新潮社
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アメリカの現代作家、ポール・オースターの「幻影の書」に続く最新訳、とはいえ、本国で出版されたのは2003年ですから、日本の読者は7年間のお預けだったことになります。翌年、あるいは2年後には日本語訳が出るアーヴィングとはずいぶんと違うわけですが、オースターといえば柴田さんの訳で読みたいところですから、ご多忙の柴田さんの訳を待つのも、それはそれ、楽しい時間なのかもしれません。

小説は入れ子の入れ子というような複雑な構造になっていて、そのちょっと入り組んだ構造を解きほぐしながら読むという、まるでパズルを解くような楽しみがこの本にはあります、が、訳者あとがきで柴田さんが書いておられるように、その複雑な「構造」、それは記憶と想像の人としてのありかたそのものなのですが、それこそがオースターの描きたかったことなのでは、という考えに深くうなずけるところがあります。
オースターの小説世界にがっちりとコミットメントしている訳者ならではの解説だと思いますし、まさに日本語に訳することによって、作者の言いたかったことを「日本語」という世界で我々に伝えてくれるという離れ業が成し遂げられている本だと思います。

とってもとても面白い本です。

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2010年11月22日

「facebook完全活用術」---佐々木和宏

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「facebook完全活用術」
著:佐々木和宏 発行:アスキー・メディアワークス
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facebookを始めて、いろいろ活用しております。
知人を探そうとしてgmailで検索して、ほうぼうに招待メールを送ってしまったりと失敗も多いのですが、いろいろな機能があって、これは十分使える手応えを感じています。
とくに、情報発信ということで言えば、今までHPやブログ、Twitterが担っていた事を、このfacebook一つで十分に対応できると思います。
特にわたしのところのようなアトリエ系の設計事務所にとって、facebookで自分のウォールを持てば他にHPもいらなくなるのではないか、とも考えています。
この本は、そうしたfacebookの解説書で、特に私が知りたいと思っていたいくつかのポイントが書かれていて大いに助かったのでした。

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2010年11月15日

「建築家のピカイチ間取り集」

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「建築家のピカイチ間取り集」
文化出版局
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家づくりでは、間取りだけが大切というわけではないですが、やはり、自分たちにあっている家を考えてゆくには間取りは役に立ちます。
建売のような決まりきったプランでは、なかなか解決できないことも少なくないわけで、そういう時に、他の方のお住まいの間取りを覗いてみると、そこになにか解決のきっかけが見つかるかもしれません。

この本は数十名の建築家が手がけた間取りだけを集めた本です。

大きなページ分けは建物の大きさ別で、巻末には「狭小地」とか「中庭」とかのキーワード検索も出来るようになっています。もちろん、建築家別のインデックスもありますが、どちらかといいますと、建築家は脇役で間取りが主役という本です。

私も三つのお宅の間取りを掲載させていただいておりますが、建築家が前に出ていないのがとってもいいなと思ったりしております。

というわけで、寒くなってきたこの頃、部屋を暖かくして間取りを眺めながらそこでの生活を思い描いてみるのも、ちょっとマニアックかも知れませんが面白い時間の過ごし方ではないでしょうか。

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2010年11月12日

「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」---村上春樹

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「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」
村上春樹インタビュー集 発行:文藝春秋
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1997年から2009年にかけてのインタビュー集。海外のものが多数収録されていますが、邦訳されて発表されたのは初出のものが多いのではないでしょうか。

自動筆記のように小説を書き始める村上春樹の方法はとても興味深いところです。「物語」がどこにあるのか、どこから生まれるのか、ひとりの人間が生んだ「物語」に、どうしてこれほど沢山の人達の心が揺さぶられるのか。想像と創造の不思議な世界は、実は私たちのとっても身近にあるわけで、人と人を深く繋ぐその世界を私たちは無意識のうちに信じて生きていると言ってもいいのではないでしょうか。

建築の世界では空間の魅力を語るときに「スケール感」という言葉を使います。では、そのスケール感が人々の感覚として成立するための根拠はどこかというと、人の身体のサイズからということになります。たしかに、私たちは自分の手の大きさ、足の大きさ、などでモノの大きさを把握している。しかし、だったら、身体の大きい人と小さい人ではスケール感が異なるのか、空間の魅力は異なるのか、というと、そうではないのが建築の面白いところ。そこには、なにやらゆるけれども共通して我々がもっている大きさの感覚があるようです。この共有感がなくては、実は建築の設計はできないかもしれません。

言葉も同じでしょう。あまたの言葉の意味するところは、それぞれの人の生きてきた経験によって裏付けられている。しかし、だからといって言葉が独りよがりのものにならないのは、なにかそこに大きな秘密があるからです。

村上春樹のこのインタビュー集を読んでいて、そんなことを考えてました。

とても、とても、面白い本です。

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2010年11月01日

prefab house

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本の行商、なんていうとびっくりする方も多いでしょうが、設計事務所の方々ならば懐かしいなあと思うわれる人も多いはずです。私が学生時代にアルバイトしていた設計事務所にも定期的に建築関係の本を売りに来るおじさんがいて、所員の方たちは結構高価な大型本をこぞって買っていました。建築関係の人は本に目がない。私もそうですが。
しかし、そうした行商さんも最近ではめっきりその姿を見かけなくなりました。
それが、先輩建築家の紹介で、数少ない行商さんがときおり私の事務所に来られるようになったのです。行商さんも商売上手で、こういう傾向の本は気に入ってくれるかなと、それぞれの設計事務所の傾向をよく研究しておられる。
というわけで、ズバリ、私の事務所にこの本を持ってきてくださったのでした。
「prefab house」
重い本なのにご苦労様です。

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2010年10月26日

「俳句という愉しみ」---小林恭二

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「俳句という愉しみ―句会の醍醐味」
著:小林恭二 岩波新書379
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やあやあ、俳句というものが好きだ好きだと思っていたのですが、こういう本を読むと、俳句という世界の冷たくも透明な厳しさというものがよくわかります。
うーん、研ぎ澄まされた言葉の感覚。奥が深いですねえ。

この本は『俳句という遊び』につづく第二弾。実は最初のを未読でありますが、なかなかどうして、この第二弾も相当に面白い本であります。

俳句を詠む、というのは、なんとなくかっこいいなあと思ったりしていて、私の動機は至ってミーハーなものなのですが、読んでみて良いなあと思う句に出会えたりすると、何かとっても栄養価の高い、でもちっちゃな木ノ実を、口の中に入れて味わっているような感じになるのであります。

そんなことをしていると、やはり、いい句を自分でも詠みたい、などと身の程知らずのことを思うように至ります。

俳句を詠み、句会で他の方の意見を伺うことで、言葉の感覚が鍛えられてゆくのでしょう。
来月の「釘ん句会」に備えて少しづつ詠んでゆこうとおもいます。

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2010年10月22日

「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」---坂口恭平

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「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」
著:坂口恭平 出版:太田出版
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著者の言う「都市型狩猟採集生活」というのには、ちょっと「?」でしたが、本書の内容については大いに共感できる部分がありました。
一番面白かったのは省エネ生活。人間はどこまで省エネで生活できるのか。この大いなる問の答えは路上で暮らす人々の生活にあります。自分の体にぴったりあったダンボールの箱に身を埋めれば体温だけでずいぶんと暖かく快適に眠ることができる。配給される一日二個のおにぎりと、あと少しの食べ物で十分にお腹いっぱいで元気に暮らせる、とか。
面白いなあ、面白いなあ、と気に止まったページの端を折っていったら、ずいぶんと沢山のページの端が折れていました。

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2010年09月16日

「ねじまき鳥クロニクル」再読

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「ねじまき鳥クロニクル」は村上春樹の作品の中で、私から一番遠くにいる作品だったと思います。他の作品は、出版されるとほぼ同時にハードカバーで読みましたが、「ねじまき鳥クロニクル」に関しては、出ていたことも話題になっていたことも知っていたのですが、どうしても手が出ずに、第三部も出て、文庫になって、やっと手にとったのでした。

ちなみに、「ねじまき鳥クロニクル」の初出は

第1部 泥棒かささぎ編(1992年『新潮』10月号~1993年8月号に連載)
第2部 予言する鳥編(1994年4月 新潮社より書き下ろし)
第3部 鳥刺し男編(1995年8月 新潮社より書き下ろし)

文庫化されたのが1997年10月

となっています。

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2010年08月30日

Jhumpa Lahiri

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Jhumpa Lahiri、ジュンパ・ラヒリ。
NY在住、ロンドン生まれ。両親はインド人。

彼女の名前を何処で知ったのかは、今は記憶も定かでありません。
デビュー作である「停電の夜に」を何気なく読んで、軽い痺れと共にやってきたショックのうちに、私の中では彼女の名前は記憶されることになりました。

女性であることが、その研ぎ澄まされた鋭利な表現に結び付けられがちですが、どうもそこには大きなトラップが待ち構えているような気がします。

しかしながら、彼女の小説は彼女(!)でなければ書けなかったであろう世界であり、そのまなざしは決して男性のものではないことは確かだと感じます。

これは正確にいう必要がありますが、彼女の言葉に感じるのは「非男性」ではありません。男性でも女性でもないところ。そのような視点で淡々と即物的に語られる世界。男性の味方でも、女性の味方でもない言葉。ややもすると冷たすぎるとさえ感じる彼女の言葉の魅力とは「誰の味方でもない」という、そこに尽きるのかもしれません。

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2010年08月26日

「エビスくん」---重松清

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「エビスくん」
著:重松清 新潮文庫
amazon(新潮文庫「ナイフ」)

重松清さんの本を初めて読みました。
短編集「ナイフ」です。表題にもなった「ナイフ」は賞ももらったようで有名らしいのですが、私としては「エビスくん」が一番、というのが正直な感想です。

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2010年08月21日

MAGNUM

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本屋さんの書棚で見つけて衝動買い。

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2010年07月21日

「考える人」-村上春樹ロングインタビュー

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「考える人」2010年夏号は村上春樹氏へのロングインタビューが掲載されています。
写真のページをはさんで80ページ。文章だけで正味69ページ。雑誌のほぼ三分の一を占めています。これほどまでとは買って手にするまで思ってもいませんでした。
三日間にわたるインタビューの話題はさまざま。
村上氏にとってアーヴィングの「ガープの世界」は特別な存在だって言うことも良くわかりました。

インタビューの中で出てきた、いくつかのキーワードを覚書しておきます。

クローズド・サーキットとオープン・サーキット。
一度閉じてしまうと自己判断が出来なくなる怖さ。

1Q84 Book3はじっくりと読んで欲しいとうこと。読み返してみます。

心理描写なしの純文学。自我を直接描かないであぶり出しのように浮き出させる。
近代以降、ポストモダンで照らし出された問題意識だと思います。自我というものは果たして存在するのか。レヴィ・ストロースのサルトル批判というのもそういうことだったのでしょうか。内田樹さんの受け売りですが。

小説に大切なのは文体と内容とストラクチャー。
サリンジャーの最大の問題はストラクチャーをつくれなかったこと。
文体と内容とストラクチャー、なんだか建築の話みたいです。

基本的に話題は「1Q84」を中心に展開しています。
長い長いインタビュー。とてもとても面白くて刺激的でした。

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2010年07月11日

「ユング自伝(2)」---C.G.ユング

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「ユング自伝(2)」
著:C.G.ユング 訳:河合隼雄など
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ユングには昔から興味を持っていましたが、ちゃんと本を読んだこともなく今に至っていて、どうしていまさら、という感じで自伝を読もうと思ったのは、それも二巻目だけなんですが、村上春樹の「1Q84」にユングの塔の逸話が出てきたからでした。

ユングは晩年になって自分が考えてきたことを「かたち」にしたいと強く考え、石を積んで円筒形の建物を作ることになります。
それは石をひとつひとつ積んでつくらなければならなかったし、最初に作った塔だけでは、何か足りない物を感じ、何度かの増築が行われることになりました。
ユングの自伝の二巻目である本書には最初の塔の写真から、増築が加えられていった過程の写真も掲載されています。そして、塔をつくろうと思ったことや増築の経緯についてユングが語っています。

人は生きているということは周囲の物理的な環境の影響を受けながら生きていることは間違いないわけで、とすると建築というものは人が生きるということと不可分に関係するものであるし、そう考えると途方も無いものに建築の設計に携わる私などは関わっているということになります。

ユングの塔の話は、最後は塔の周りを幽霊が廻っている「音」を聴いた、というような話になってゆくのですが、精神的なものと建築というものの深いつながりを感じていたユングという人がそこにはいるのです。

この自伝を読んで印象的なのはユングが霊魂の世界の存在を感じていたということでしょう。
今の世の中、「幽霊、いるの?えーっ?」なんて言われてしまうわけで、怖い話やふしぎな話は大好きなくせに、いざ、精神世界の存在となると誰も深入りしなくなってしまう浅い会話が充満しているわけです。
荒唐無稽な話とひと蹴りにされるようなエピソードも多いのですが、精神世界と真正面から向き合うユングの姿勢には新鮮な驚きさえあります。

村上春樹の小説の中で展開されている「こと」も、深い精神的なつながりの中で沸き起こる「物語」だと、私は感じているのですが、それを裏付けてくれるもの、そうした考え方に勇気を与えてくれるものがこの本にはあったのでした。

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2010年06月14日

「iPhoneとツイッターはなぜ成功したのか?」---林信行

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「iPhoneとツイッターはなぜ成功したのか?」
著:林信行 発行:アスペクト

ポッドキャストを通じて公開された著者の林信行氏とフリー編集者山路達也氏の対話を山路氏がテキストとしてまとめたのが本書です。が、「本書」と言いながら、書店でも販売されていますが、私が読んだのは厳密に言うとこれは書籍ではありません。
私はiTunesのApp Storeからダウンロードして通勤電車の中、iPhoneで読みました。誰でもダウンロードできます。私がダウンロードしたときは無料でしたが現在350円。いわゆる電子書籍。ちなみに、書店で販売している書籍版は1200円。
新書くらいの文章量でしょうか。iPhoneの画面に対する文字の大きさや文字数がよく考えられていて気分良く読むことができました。
電子書籍というと話題のiPadということになるのでしょうが、iPadは通勤電車の中で使うにはいささか大きいような気がします。その点、iPhoneは片手でもって親指を使って頁をめくることが出来ます。

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2010年06月10日

「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」---石 弘之

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「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」
著:石 弘之 出版:洋泉社 歴史新書
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屋久島には「ウイルソン株」という巨大な杉の切り株があります。とても有名で観光スポットにもなっているのですが、この巨大な杉の木は秀吉が奈良の大仏殿にならって作った方広寺の資材にするために船で運んだのだそうです。
秀吉は他にも多くの寺院造営を推進し、日本中の原生林の巨木をことごとく切り倒してしまったといいます。

これは、秀吉に限ったことではなく、人は木を切り、動物を狩り、自然を食い尽くしながらこの地球に生存しているわけです。

ただ、縄文時代の人間の平均寿命は残された骨から推定して15歳くらいだったとか。世界で一番古い平均寿命の調査と言われる16世紀中頃のロンドン市民の平均寿命も18歳程度。現在の日本の85歳をこえようと言う寿命に比べて、いかに人間が短命だったか。
この急速な長寿命化を考えると、人口の爆発的な増加は紛れもない事実。増える人類のために、居住地は開拓され食糧確保のために森は開墾され畑として耕されることになります。

人類の方からすると自然と共存しているということになるのでしょうが、自然からすると一方的に食つくされている感じ、それも加速度的に、なのではないかと思ったりします。

これにたいして、すこし前に噴火して地球規模の環境への影響が危惧されているアイスランドの氷河の下にあった火山のことを考えますと、人間という存在の自然の驚異に翻弄されている姿も見えてきます。

この本は「環境史」というジャンルの解説書です。「環境史」とは、人が環境に影響を与えてきた歴史と、環境が人に与えてきた歴史の双方を、様々な資料から浮き彫りにして、よりよい明日の生活を考えようという学問だと理解しました。

先程の「ウイルソン株」の事例など豊富な事例が集められていて、とても興味深く読むことができた一冊です。

<蛇足>
先日の樹海ハイキングも、この本を読んでいたから行ってみようかなと思ったのです。富士山の噴火とその後の自然の回復をこの目で見ることが出来ました。

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2010年05月14日

「寝ながら学べる構造主義」---内田樹

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「寝ながら学べる構造主義」
著:内田樹 文春新書
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どのくらい前だろう、
自他共に認める売れっ子インテリアデザイナーがTVに登場していて
じゃらじゃらアクセサリー過剰のその男性デザイナーは
お世辞にも印象が良かったとは言いにくいのだけれども
売れるものはどういうものですかという問に
「イケてるかイケテないか、じゃない」
と言っていました。
見た目や言い方はともかく「なるほど」と少しだけ合点した私でした。

やはり、人気があるものには
何かこう「イケてる感」というのがあるものです。
「正しい」とか「間違っている」という基準とはレベルと言うか次元の違う「イケてる・イケてない」。
逆に「イケて」いれば何でもいいのか、という反論もありますが、「イケてる」ものの進撃を食い止めることは、ちょっと難しいから、ここはひとつ「イケてる」ということのポジティブな意味を受け取った方が精神衛生上も良いのではと思ったりします。
まあ、一時的な「イケてる」では当然生き残れないのですけれどもね。

というわけで内田樹は「イケてる」のであります。

この本は、私が現代思想にかぶれていた学生時代に、何書いてあるかわかんないよ、とギブアップしながらも字面だけおっていた本の中に出てきた、いくつかの言葉が、目に張り付いていた鱗がするりと取れるように、ああ、こういう事だったのかと見えてくる、という、実に「イケてる」本なのです。

とくに「エクリチュール」という言葉については、初めてわかった、と膝を打つことになりました。なるほどなるほど。

こんなに、わかりやすい本はなかなかない。こんなにわかりやすくて良いんだろうか。おすすめの本です。

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2010年04月29日

「VectorworksではじめるCAD 2010/2009/2008対応」--- 五十嵐 進

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「VectorworksではじめるCAD 2010/2009/2008対応」
著: 五十嵐 進 出版:ソーテック社
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Machintoshを使うものにCADの選択肢は少ない、といいますか、およそ「MiniCAD」の時代から名前は変われども「Vectorworks」しかない、と言っても過言ではないのです。
ですから、Machintoshを愛する設計者は、Vectoeworksをも愛するようになります。AutoCADや、未だアトリエ系の設計事務所でのシェアが高いJW-CADなんて、世界標準だよ、とか、使い易いよ、とか言われても、まるで興味の対象にはならないのです。
ただ、建築のデザインをする者にとって、図面とは建築工事に関わる記号を明記したものというよりも、感覚的にそれは、イラストであり、ひょっとしたら絵画だったりするものですから、Vectorworksの紙に出力した時をイメージしながら作業を進めてゆくという考えは、実に肌にあったものと言えます。だから、というとなんですが、Windows版のシェアも伸びているのだと思います。

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2010年04月10日

「日本辺境論」---内田樹

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「日本辺境論」
著:内田樹 新潮新書
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ベストセラー。新書大賞2010第一位。
しかし、内容はそれほど御手軽なものではなく、かえってどちらかと言えばとても難解な本だと思います。この本が、これほど多くの人に読まれているということが驚きでもあります。
ただ、「終わりに」で著者自身がいうように、この本は「日本辺境論」というよりも「日本属国論」としてあって、日本は古い昔から「属国」としての処世術で成り立ってきた、という、かなり衝撃的な論旨が一貫して流れているため、言葉にならないもやもやを抱えた日本人に、ひとつの明快な言葉を与えてくれる本として、大きな注目を集めていると思います。

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2010年04月05日

「邪悪なものの鎮め方」---内田樹

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「邪悪なものの鎮め方」
著:内田樹 出版:バジリコ株式会社
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村上春樹にご用心」と同じく、内田樹さんがブログで書いてこられたことを一冊にまとめられた本です。

冒頭から村上春樹が登場します。
もうすぐBook3が発売される「1Q84」について「父」というテーマで書かれています。

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2010年03月27日

「家守綺譚」---梨木香歩

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「家守綺譚」
著:梨木香歩 出版:新潮社
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「西の魔女が死んだ」は「goma_House」の建て主さんに紹介されてDVDで観ましたが、原作の作者である「梨木香歩」さんのお名前もその時に知ったわけで、そうしたら、こんどは「suijin_House」のお宅にお邪魔した時に、この本があって「ああ、作者が梨木香歩さんだ」と感慨深く眺めていたら、ご主人が「お読みになりますか?」と差し出してくださった。

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2010年03月05日

「仕事に活かす 伝わる写真が撮れる本」---渡辺 慎一

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「仕事に活かす 伝わる写真が撮れる本」
著:渡辺 慎一  出版:ワークスコーポレーション
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デジカメが普及、携帯電話にも高性能なカメラが付いて、誰もがいつでも高画質の写真を撮るようになりました。ブログというツールが情報公開の敷居を一気に下げて、インターネットの世界ではデジタル画像があふれています。
ひとりひとりの人間がこれほど簡単に自分の表現を世界の人に見てもらえるようになったのは素晴らしいことです。でも、逆に言えば、誰でも簡単に高画質の写真が公開できちゃうものですから、どんぐりの背比べになってしまっていることも否めません。
そうなってくると、写真は自分たちがやった成果を社会にアピールするものでもありますから、うまい見せ方、伝わる見せ方に関心が高まるのも自然な流れ。
そして、今までは、そうした関心に答えてくれる良質な写真の解説書が少なかったのです。
本書は、プロカメラマンの渡辺慎一さんが、写真の基本的な原理を踏まえ、写真撮影のテクニックを解説されておられ、目から鱗の読み応え満点の一冊になっています。
特に中小の会社(特に建築関係)で、ホームページの写真を自分で撮影している人にとっては、持っておいても損はない一冊だと思います。

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2010年02月26日

「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」---水戸芸術館現代美術センター

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「ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命」
編著:水戸芸術館現代美術センター  出版:フィルムアート社
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ボイスが来日した1984年は、私は美大の学生で、建築科でしたけれども同級生の間で来日のことが話題になっていました。私も西武美術館に足を運び、その無垢なまでの表現にあっけにとられて帰ってきたことを思い出します。ちなみに、平日の西武美術館はほとんど人影もなくゆっくりとボイスの作品に触れることができました。昨今の超満員の展覧会とはずいぶんと違います。

この本は、昨年から今年の始めにかけて「水戸芸術館現代美術ギャラリー」で行われた「Beuys in Japan ボイスがいた8日間」という展覧会を契機につくられたとあります。
この展覧会には足を運びたかったのですがかないませんでした。この本を読むと、やはり無理をしてでも行きたかったなという思いがわいてきます。

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2010年02月22日

「オン・ザ・ロード」---ジャック・ケルアック

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「オン・ザ・ロード」
著:ジャック・ケルアック 訳:青山南 出版:河出書房新社
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この本の新訳が出ていることを知ったのは玉井さんのブログでした。
ブログで玉井さんはこの本の素敵な紹介をされていますが、その記事が書かれた2008年の2月11日にすぐさま私はamazoneで注文。しかし、読むきっかけを失い、なんと2年後の2月13日に読み終えたのでした。
読み始めると早い。なんといっても、疾走しています。文章も文体もストーリーも疾走しています。

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2010年02月12日

発売日が決定していました

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Book3の発売日が決定していました。
amazonでは予約注文が始まっていますが
たぶん書店で、前日の夕方には並ぶと思いますので
そちらにしようと思います。
4月15日の夕方。
わすれなように・・・。

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2010年02月09日

「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか 」--- 水野 和夫

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「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか 」
著:水野 和夫 発行:日本経済新聞出版社
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2007年3月に出版されたベストセラービジネス書。
ベストセラーと言っても読みやすいわけではなく、経済に疎い私などはどこまで理解できたものやらというところ。それでも、ブログで紹介しようと思ったのは、分からないながらも強烈なイメージが伝わってくるところが多々あり、それがとても刺激的だったからです。それがなかったら本文で300頁はある本書を読了することはできなかったでしょう。

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2010年01月25日

「変わる家族 変わる食卓」---岩村暢子

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「変わる家族 変わる食卓」
著:岩村暢子 中公文庫
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本を読み進めながら、これほどまでに複雑な思いが沸き起こってきた本も、今までなかったというのが正直な感想です。トラウマになりそうなくらいのショックです。
著者を中心におこなわれた「食DRIVE」調査の1998年から2002年までの5年間の結果について考察されています。
「食DRIVE」調査とは、首都圏に住む1960年以降に生まれた主婦を対象におこなわれた食卓の調査。調査は三段階で行われ、最初に食事に関するアンケートが行われ、次に三食一週間分の食卓にのったものをそのまま記録して写真撮影しコメントとともに提出。最後はこれらのアンケートと食卓レポートを元に面談によるヒアリングを行ったそうです。

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2009年12月15日

「無級建築士自筆年譜」---松村正恒

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「無級建築士自筆年譜」
著:松村正恒 住まいの図書館出版局 住まい学体系060
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敬愛する建築家泉幸甫氏からの熱烈なる推薦。
ずっと前に、松村氏のことを尊敬しておられた知人がいましたが、その人のおかげで松村氏の名前も日土小学校も知っていました。泉氏からこの本のことが話題になった時も、ああ知っている、と。でも、知っているって、なにを知っているんだか、というわけで、やはり本を手にするわけです。

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2009年12月13日

「アメリカの住宅生産」---戸谷英世

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「アメリカの住宅生産」
著:戸谷英世 住まいの図書館出版局 住まい学体系089
amazon

個人住宅を建築家が設計するということが日本ほど普及している国はないのかもしれません。
この本では、アメリカの住宅生産の歴史をたどりながら、現在のアメリカで主流となっている住宅生産の在り方について語られています。
他の国の話に耳を傾けてみると自分たちの姿が良く見えてくる、そういう意図がこの本にはあります。

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2009年11月27日

amazonにも出ています。

「やっぱり、木の家がほしい!」
amazonでも出ていました。
なんだか、うれしくなって投稿です。


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2009年11月24日

「小さな家の気づき」---塚本由晴

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「小さな家の気づき」
著:塚本由晴 発行:王国社
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建築家の塚本由晴氏は発見します。
敷地に対して家を十分に小さくすると得られる自由を。
私はこの本を、その発見のプロセスのドキュメンタリーとして読みました。
そんなのあたり前のこと?
しかし、現在の家づくりは、家を十分に小さくすることが難しくなっています。

家は大きい方が良い。
だから、法律で許される限りあらゆる手を使って大きく大きく作ろうとする。
土地の値段が高価だからそれに見合った大きさの建物を造らないと損をする、etc....

また、建物の配置についても縛られている。南面信仰。猫も杓子も敷地の南側を開けて建物を北側に寄せて大切な部屋を南向きに配置している。南向きが絶対に良いという考えです。でも、そんなことはないのです。夏の日差しは避けた方が良い。南向きの部屋は夏の暑さから逃れられない。夏場の北側の部屋の快適なこと。
南から直接入ってくる強い日差しの魅力もありますが、北側の窓からの回り込んでくる優しい光も魅力的。昔から、あえて北側に庭をとったりしてきた日本人の光に対する感性、さらには、明るいばかりではなく薄暗さの魅力も感じていた感性。

敷地に対して法律で許される目一杯の大きさの建物を北側に寄せて建てる。画一化されてしまった家づくりのそのような考えから自由になること。実は、そうした画一化された考えが日本の街並みから魅力を奪っているのではないかということ。

塚本氏の現在に至る言説をトレースしているわけではありませんので、その後、どのように彼の論理が展開していったのかを私は知りませんが、ここにある発見の大切さは、今こそ重要な意味を持ってきていると感じているのは、私だけではないと思います。

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2009年11月20日

「やっぱり、木の家がほしい!」

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お恥ずかしながら、執筆しておりました本が完成。見本が届きました。
タイトルは「やっぱり、木の家がほしい!」。
一般ユーザー向けに、木の家の作り方のポイントを書いています。
編著として「家づくりの会」となっていますが、会の仲間であり一緒に木の研究会をやっている松澤静男さんとの共著となります。
木の家をつくるプロセスやコストのことを松澤さんが担当、木の家の魅力や作る時に知っておきたいポイントについて私が書かせていただきました。
都市圏では26日頃に書店に並ぶ予定です。
1800円(税抜き)318頁。アーク出版より。
ISBN978-4-86059-082-6

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2009年11月13日

「10宅論」---隈研吾

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「10宅論」
著:隈研吾 ちくま文庫
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1986年10月にでた本を、遅ればせながらといえばあまりにも遅く(何といっても四半世紀)読了しました。
この本の面白いところは日本における住宅のあり方を、考現学的に、それも俯瞰的に眺めようとしているところで、もちろん23年も前の視点ではありますが、それによって建築家という存在を相対化しようとしているというところです。それも、隈研吾さんという建築家が書いているところがますます面白いわけです。

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2009年11月06日

「建築する動物たち」---マイク・ハンセル

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「建築する動物たち」
著:マイク・ハンセル 訳:長野敬+赤松眞紀 発行:青土社
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人以外の動物が行う構築行為について分析することで
人間の構築行為について考える好著。
もっとも印象に残った言葉は「空間の記憶」。
「空間の記憶」によって構築行動を起こすのは人間だけではないのかと、この本は問いかけてくれているようです。
各章の内容をメモしておきます。

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2009年11月01日

「建築学生の[就活]完全マニュアル」

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「建築学生の[就活]完全マニュアル」
著者:星裕之 発行:エクスナレッジ
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こういう本を紹介するからといって、私がこれから就活をするわけではありません。
この本は、たしかにこれから建築業界に入ろうとする学生さん向けに書かれている本ですが、複雑多様化する建築業界を、全体的に俯瞰して紹介してくれる本であり、今まさに建築業界にいる自分のポジションを見定めるための絶好のガイドブックとなっています。だから、私などが読んでいてとても面白い。ほんとに、建築業界の全体を良く把握している本だと思います。

私の事務所でもスタッフを随時募集していて、時々面接などもしたりしますし、試しに働いてもらうこともあります。これから建築業界に入ろうとする若い人と話をするのは面白い。しかし、あまりにも、さきほども書きましたが複雑多様化する建築業界について、今の若い人は何も知らないのですね。まあ、でも、私だって、学生の頃、どれくらいこの業界のことを知っていたかといえば、人のことは言えません。模型が作れる、図面がちょっとは描けると雇ってもらえるかな、なんて考えていたくらいです。
しかし、この建築業界に今まで経験したことのない大変動が訪れるのではと多くの予測があるなか、自分の生きる道をそれぞれが求めてゆく必要のある時代に、こういう業界の全体像をおさらいしておくことも、あながち無意味なことではないと思ったりします。

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2009年10月19日

「グーグル的思考」---ジェフ・ジャービン

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「グーグル的思考」
著:ジェフ・ジャービン 訳:早野依子 出版:PHP出版
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「グーグル的思考」という言葉があるそうです。それは、「グーグルならどうするか?」と考えることです。
グーグルとはインターネット検索のプラットフォームです。世界中の人が毎日毎日グーグルの窓にキーワードを入れて検索し何かの情報を得ようとしています。グーグルはそれに見合う情報を提供するプラットフォームになっている。それゆえ、グーグルに検索されやすい環境を作ることが勝者への道となります。
「グーグルジュース」という言葉がそれを言い表しています。
「グーグルジュース」とは、インターネットの世界でより多くクリックされリンクされると、それが基盤となりさらに多くのクリックとリンクを得ることが出来ることをさしています。
グーグルは今まで有料であった様々なサービスを無料で開放することで「グーグルジュース」の状況を作り上げてきました。これは今までにないビジネスモデルです。
情報のネットワークがより多くの人々の注目を集めています。
インターネットはブログやツイッターと言うツールによって、個人が世界に情報を発信することを可能としました。個人の発信が力を持てるようになったのです。個人の力で発信される情報はそれだけでは信憑性が疑われます。しかし、インターネットという世界で相互につながることで情報の信頼はどんどん上がってゆくことになります。よりリアルな、生々しい情報が世界中で共有されることになる。その実態が「グーグル的」世界です。
「グーグル的思考」で世界を眺めてみること。もちろん、すべてがグーグル的な思考で解決されるわけではありません。しかし、そこにはかなり有効な思考のヒントが、閉塞しがちな現況打開のアイデアがあるのでは、というのが本書です。
建築設計という分野の私にとってもとても面白く興味深い内容の本でした。
多くの人にお薦めしたい本です。

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2009年10月16日

「ついていく父親」---芹沢俊介

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「ついていく父親 胎動する新しい家族 」
著:芹沢俊介 出版:春秋社
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「家族のエロス」という概念からこの本は始まります。
精神学者ウィニコットの<する><ある>という考え方から<母=乳房>として子供にとっての乳房がそこに<ある>ということの大切さをとりあげ、母と子、そして家族同士の一体化を「家族のエロス」とします。家族にはエロスが必要であること、エロスによって家族が子供を受け止めてあげることが家族には必要であることがこの本の出発点です。
「家族のエロス」から家族を四つに類型化します。

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2009年09月17日

「1Q84」book3

今朝の毎日新聞に村上春樹のロングインタビューが掲載されています。
そこで、「1Q84」の「book3」を執筆中という話が出ていました。
来年夏刊行予定だそうです。

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2009年09月04日

「なぜ、ウエブに強い設計事務所は家づくりが上手いのか」---大戸浩、森川貴史

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「なぜ、ウエブに強い設計事務所は家づくりが上手いのか」
著:大戸浩、森川貴史 発行:エクスナレッジ
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sumai-open」の中心人物である建築家の大戸浩さんから著書が届きました。
インターネットに関する本を書いているという話はご本人から聞いていたのですが、ついに出版です。おめでとうございます。
家づくりはコミュニケーション術。そのためにインターネットをフル活用してきた大戸さんならではの本となっています。
クライアントとのイメージの共有、情報の共有、プロセスの共有、それを実現するのがコミュニケーション力です。しかし、とは言ってもそのコミュニケーションの舞台とは、事務所での打ち合わせであり、その時の話し言葉であり、議事録であり、実はとてもあいまいだったといえましょう。このあいまいな舞台を、クライアントとの共有をはかるツールであるインターネットを活用して「家づくり設計者」のオープンな「前線基地」にしようというのが本書の内容です。大戸さんが実践してきたことがオープンに書かれています。
個人でやっているアトリエ系の設計事務所にとって、インターネットは欠かせないツールになっていますので、本書から学ぶ事は多いにあるでしょう。

<おしらせ>
「sumai-open」で見学会があります。
2009/9/12(SAT)13:00〜16:00
VOL.16  KN-HOUSE見学会
設計:大庭建築設計事務所
詳しくは、こちらをご覧ください。

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2009年09月01日

「日本の統治構造」---飯尾潤

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「日本の統治構造」
著:飯尾潤 中公新書1905
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官僚内閣制から議院内閣制へ。日本の政治が時代の転機を迎えようとしています。
2007年に書かれたこの本は、議員内閣制はともかく、官僚内閣制ってなに?という疑問にも優しく答えてくれる本であり、それだけではなく、国を治める政治の運営における組織論としてこの本は書かれています。歴史を振り返り現在を見直す。
ずいぶん前に読んだのですが、今紹介するにふさわしい本だと思い取り上げます。
カフカ的迷宮のような日本の官僚内閣制。
その官僚内閣制がどうして日本に根付いたのか、そしてその問題点は何か、論旨も明快で文体も平易です。そして、官僚内閣制の問題点として日本の政治の「権力核」の不在に到着します。
これから、日本という国における最良な「権力核」を実現する事は出来るのか、一人の国民として注目してゆきたいと考えています。

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2009年08月22日

「チョコレート・アンダーグラウンド」---アレックス・シアラー

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「チョコレート・アンダーグラウンド」
著:アレックス・シアラー 訳:金原 瑞人 発行:求龍堂
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見覚えのある表紙が家の机の上にありました。
聞くと、娘が図書館から借りてきて読んでいるといいます。
500頁ほどの長編で小学校4年生の娘に果たして読み終えることが出来るのか・・・、なんて心配はよそに、あっという間に読んでしまいました。
この本は児童文学というよりも小説好きの間でも有名な本で、私もチャンスがあれば読んでみたいと思っていたので、娘からまた借りして、読了。
面白い本です。寓意というものがリアルさとバランスをとりながら共存している。この本から学ぶことは多いでしょう。勇気もたっぷりもらえます。とても良い本だと思います。

そして私は、娘と読書を共有できるようになったことを嬉しく感じています。

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2009年07月29日

「住宅政策のどこが問題か」---平山洋介

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「住宅政策のどこが問題か」
著:平山洋介 光文社新書396
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副題が「<持家社会>の次を展望する」です。
豊富なデータによる興味深い一冊です。
特に、興味深かったのは第2章で展開される、ジム・ケメニーの提唱する二つの住宅システムの類型による分析です。この類型は賃貸住宅をもとに考察されますが、それだけではなく、住宅の所有形態の全体像まで説明されます・
ジム・ケメニーは「デュアリズム」と「ユニタリズム」という二つの類型を、公営住宅を代表とする、社会システムとして提供される賃貸住宅(社会賃貸セクター)と、民間の賃貸住宅(民間賃貸セクター)の関係で提示しました。
「デュアリズム」は民間賃貸セクター中心に賃貸住宅の供給を考えてゆく政策で、社会賃貸セクターはそれを補うものとしてとらえられる。一方「ユニタリズム」は民間賃貸セクターと社会賃貸セクターの統合による賃貸住宅供給をはかります。

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2009年07月01日

「ジャズCDの名盤」---悠 雅彦,福島 哲雄,稲岡 邦弥

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「ジャズCDの名盤」
著:悠 雅彦,福島 哲雄,稲岡 邦弥 文春新書
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ジャズの名盤を紹介する本はたくさんあって、私も数冊待っていますが、それでもこの本を買わずにはいられなかったのは、なんとヘンリー・スレッギルが紹介されていたからなのです。ヘンリー・スレッギルの紹介に2頁を使ったジャズの名盤を紹介する本なんて初めてです。

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2009年06月23日

奪われた物語を取り戻す物語--語られない物語

その少女の両親はカルト宗教の信者。
厳格な教えの支配の下、少女は幼年期を過ごす。
給食の時間も奇妙なお祈りの言葉を声を高くして唱える。
そんな奇妙なお祈りを唱える友達はひとりもいない。
孤独。
そして、孤独を通り越した孤立。
物語とは人と人の関係をつむぎだすことだ。
人は誰もが自分自身の物語を語ることで自分の人生をつむぎだす。
人とつながり、社会の中の自分自身を見つけ出すこと。
物語は人と人を結びつけるために強く必要とされている。

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2009年06月16日

「ほぼ1円の家」---石倉ヒロユキ

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「ほぼ1円の家」
著:石倉ヒロユキ 出版:NHK出版
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「ほぼ1円の家」とは築年数が経過して評価額がほとんどなくなった「中古住宅」のこと。
そして、サブタイトルは「中古住宅ともったいないDIY術」。
現在、日本では住宅の評価額は築年数とともに年々下がり続け、ついには値段がつかなくなります。でも、値段がつかなくとも、まだまだ立派に使える中古住宅が多いわけです。評価額がなくなった、まだまだ使える中古住宅を土地の値段だけで購入することができるのです。つまり、家の値段は「ほぼ1円」ということになるわけです。

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2009年06月12日

「日本語が亡びるとき」---水村美苗

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「日本語が亡びるとき」
著:水村美苗 出版:筑摩書房
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「然し是からは日本も段々発展するでせう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、「亡びるね」と云った。(「三四郎」夏目漱石)

敬愛する建築家玉井さんのブログで紹介されていたこの本。
日本語が亡びるとは過激なタイトルですが、本論は鋭利な刃物で日本語のおかれている現状を解体してみせてくれる刺激的な本。単なる過激なアジテーションだけで終わる本とは違います。その手さばきは構造主義、ポスト構造主義を連想させるところがありますが、著者自身が持つ日本語への熱い想いを、是でもかという冷静さで分析するその眼力こそが、この本の魅力なのではないかと思います。

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2009年06月07日

「1Q84」読了---そして

一週間で77万部発行されたとニュースで伝えられ
一部の書店では売り切れも出ていたとニュースで伝えられ
それは
発売まで最小限の情報しかリークしなかった売り方の功績だと
もっともらしく伝えられている「1Q84」。
情報が限定されていたための餓えの感覚は、しかしながら私にはありませんでした。
餓え、というよりも多くの方の期待がこの爆発的な売り上げを生んだと思います。

<以下、ネタバレではないのですが本の内容にはふれていると思いますので、未読の方はご注意を>

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2009年05月30日

「1Q84」---村上春樹

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「1Q84」
著:村上春樹 出版:新潮社
amazon→12

いよいよ発売されました。
mixiで、27日の午後から書店にならんでいるという情報を見て、その日の夜に本屋さんへ。29日発売だから前日には書店にならぶだろうとは予想していたのですが、さらに一日早く入手できて「そわそわ」です。でも、27日は早く寝て早朝に起きだしてサッカーを観ていたので、まだまだ一巻目の200頁を過ぎたところ。ここまで読んだだけでもすごく面白い!ひとつひとつの言葉が、すーっとスポンジに水がしみ込むように身体の中に入ってゆく感じです。
感想はまだ書きませんし(あたりまえですが)本の内容には全くふれません。ひとつひとつの言葉がとっても大切なものとして、それが人の名前でも、本を開けた瞬間に読者と初めて出会うことを待っている、そういう本だと思うからです。
今日も続きを読みます。

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2009年04月23日

「わたしの家」---大橋歩

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「わたしの家」
著:大橋歩 講談社文庫
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建築家永田昌民に三軒の家の設計を依頼したイラストレーターの大橋歩さん。この本は自らの手になる、一軒目と二軒目の家のドキュメント。ドキュメントというと大上段に構えた感じがあるから、家づくり日記という紹介が良いかもしれません。とても面白い本です。

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2009年04月08日

「住に纏(まつ)わる建築の夢」---松村秀一

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「住に纏(まつ)わる建築の夢」
著:松村秀一 出版:東洋書店
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一戸一戸の住まいがあつまりコミュニティがうまれる。
家をつくるということは、その建物の断熱や耐震の性能も大切ですが
最終的には、人が生き生きと暮らす場所になってほしいと思い我々は家づくりに関わっています。
そのために最も大切なことはなんだろうか?
松村秀一さんは、産業と住宅のありかたについて、様々な論考を続けてきた人ですが、この本では、今までの論考を下敷きに、
建築が夢見てきたことはどういうことだったのだろうか?
住み続ける、という考えが街を育ててきたのだが、それに対して作り手側の我々に出来ることは何なのか、と、新たな視点で問うています。
スクラップ・アンド・ビルドでは街は育たない。
コミュニティは育たない。

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2009年03月17日

「建築とモノ世界をつなぐ」---松村秀一

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「建築とモノ世界をつなぐ」
著:松村秀一 出版:彰国社
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建築設計者のための本。
建築設計者の職能を問う本。
建築設計者は産業社会といかにつき合うか?
結論は「ブリッジング」。

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2009年03月16日

「NYCのシェアハウス」---写真:渡辺慎一

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「NYCのシェアハウス」
写真:渡辺慎一 文:Rai 出版:エクスナレッジ
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シェアハウスは若者の間で日本でも草の根的に息づき始めているようです。
これは「本場」ニューヨークのシェアハウスの写真集です。
与えられたスペースを自分流に創造しているのがとっても素敵です。

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2009年03月07日

1Q84---村上春樹

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この「初夏」に発売が予告されている村上春樹氏の最新長編のタイトルが発表になっていました。
昨年のインタビューでは最新作は「恐怖」がテーマだと話していました。
「1Q84」というタイトルはもちろんジョージ・オーエルの小説「1984」をストレートに連想させますが、はたしてどんな小説なのでしょうか。
初夏って5月でしょうか。待ち遠しいですね。

1Q84

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2009年02月25日

「500万円で家をつくろうと思った」---鈴木隆之・藤井誠二

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「500万円で家をつくろうと思った」
著:鈴木隆之・藤井誠二 出版:株式会社アートン
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建築家鈴木隆之氏が施主藤井誠二氏からのオファーで、500万円で家をつくることに挑戦したドキュメント。
現代日本の家づくりに巣くう問題点を切れ味のよい刃物で手際よくさばいてくれているところには大いに共感するものの、ちょっと愚痴っぽくなっている本音話もあります。
完成した家のテイストはアトリエフルカワが向いている方向とは少し違うけれども、考え方はとても魅力的だと思いました。

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2009年02月23日

「自分でわが家を作る本」---氏家誠悟

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「自分でわが家を作る本」
著:氏家誠悟 出版:山と渓谷社
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セルフビルドで自宅を建設した氏家誠悟さんが自らの体験をわかりやすく紹介した本。
著者は基礎工事から軸組(木の骨組み)の加工、屋根、外壁、もちろん室内の仕上げ工事を行い、電気配線工事をするために資格も取得しています。
氏家さんを筋金入りのセルフビルダーとよんでも良いでしょう。
でも、筋金入りというと敷居が高い感じがしてしまいますが、家づくりは実はそれほど敷居が高いわけではないというのが本書のメッセージ。
この本を手にして、セルフビルドで家を建てることに希望を抱いたも少なくないはずです。

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2009年02月13日

「幻影の書」---ポール・オースター

「幻影の書」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 出版:新潮社
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オースターの最新翻訳とはいっても2002年の著。昨年秋に柴田元幸訳で刊行。
さっそく手に入れて読んだわけですが、家づくりの会のメンバーとの富山研修旅行の帰り、羽田空港で紛失。残すところ100ページで一番良いところ。我慢しきれずもう一冊購入。しかし、専門書ならばともかく小説でこの値段は痛い。でも、読みたい。やれやれ。
というわけで、昨年暮れに読了することができました。
<以下、小説の内容にふれます>

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2009年02月10日

「住宅ができる世界」のしくみ---松村秀一

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「住宅ができる世界」のしくみ
著:松村秀一 出版:彰国社
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1990年前後に「群居」に連載していた「プロダクトとしての住宅」を中心にいくつかの雑誌で連載していた記事をまとめた本。
論の核は「プロダクトとしての住宅」です。
日本における住宅産業の全体像を俯瞰しながら、その歴史的な変遷もたどりつつ、グロピウス、フラー、イームズと世界の建築家の例もあげて「プロダクトとしての住宅」の可能性に迫まります。
また、社会がフロー型からストック型への転換を求められる今こそ「プロダクトとしての住宅」という考えが重要とし、今までの失敗と今の産業の可能性を重ね合わせ、その結果として「情報としての部品」にたどり着きます。
この「情報としての部品」という考え方はとても斬新で刺激的です。ですが、この本が出版された1998年当時から現在に至り社会の情報化は誰もが予想できなかったほど急激にすすんでしまったために、いま現在における「情報としての部品」の意味を再考する必要があると思います。

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2009年02月09日

「誰のためのデザイン?」---D.A.ノーマン

「誰のためのデザイン?」
著:D.A.ノーマン 訳:野島 久雄 出版:新曜社
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「アフォーダンス」という言葉があります。
もともとは認知心理学者のJ.J.ギブソンの言葉なのですが
この本ではデザインという世界での「アフォーダンス」の重要性についてふれています。

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2009年01月31日

「ガラスの仮面 43巻」---美内すずえ

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「ガラスの仮面 43巻」
著:美内すずえ 花とゆめコミック
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泣く子も黙る大河漫画。
1976年に少女コミック誌「花とゆめ」の創刊号から連載開始。
つまり、今から32年前。私は中学生。リアルタイムで女子部の友達の持っていた「花とゆめ」を借りて読んでいた記憶があります。
20年間の連載で1997年にいったん休載。
20年も連載していたなんて知りませんでしたが、家内が文庫化された第一巻を買ってきたのを読んで火がつき、気がつけば全巻読破。
4年前に第42巻が出て、そして最近第43巻が発売。そして、連載再開とのこと。
すごい漫画ですね。
この最新刊も話の展開はほとんどないけれども、北島マヤが阿古夜(あこや)の役をつかんでゆく過程がしっかりと描かれていて、やはり美内すずえはすごいなと感心しました。

美内すずえ OFFICIAL HP

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2009年01月29日

「停電の夜に」---ジュンパ・ラヒリ

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「停電の夜に」
著:ジュンパ・ラヒリ 訳:小川 高義  出版:新潮社
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停電の夜に何が起こったのか?
夫婦の絆を問う表題作が印象的な短編集。

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2009年01月27日

「家族八景」---筒井康隆

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「家族八景」
著:筒井康隆 新潮文庫
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昨年秋、NHKのドラマでやっていた「七瀬ふたたび」。
その昔、多岐川裕美が主演していたドラマもありました。
そういう懐かしさもあって、かかさず観ていたのですが、そうすると本でも読んでみたくなります。昔々、読んだことがあるような・・・ないような・・・あやふやな記憶で手にした「七瀬シリーズ」。
この「家族八景」は三部作の第一作目。想像以上に、俗っぽいところも目につきますが、家族の心の中のつぶやきの表現の巧みさに引き込まれてしまいました。

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2009年01月21日

「人は意外に合理的」---ティム・ハーフォード

「人は意外に合理的」
著:ティム・ハーフォード 訳:遠藤真美 出版:ランダムハウス講談社
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とても面白い本でした。
サブタイトルが「新しい経済学で日常生活を読み解く」。経済学の本です。
でも、こんなことが経済学?という内容なんですが、
貨幣価値だけでなく、日常にある様々なことをコストとリスクということで分析し、人はどういう判断をするか研究することも経済学ということのようです。
いろいろな事例が紹介されているのですが、一番ショックだったのが第5章の「居住区にて」。

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2008年12月19日

「できそこないの男たち」---福岡伸一

「できそこないの男たち」
著:福岡伸一 光文社新書
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福岡伸一さんの、またまた面白い本。

男は遺伝子をバラまくために存在している。
本書の骨子はそこにあります。
男は遺伝子を撹乱するために女性の変種として発生する。
アリマキの単性生殖を基本とし必要な時に雄が現れるという事例には少しびっくりしましたが、生物の種の保存から言えば、生存の可能性を広げるという意味では遺伝子の撹乱は重要な戦略となります。その撹乱の役目を果たしているのが「男=雄」であるというわけです。
だから男は、むやみに遺伝子をバラまきたくなる衝動に突き動かされている・・・ふむふむ。

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2008年12月16日

「TINY HOUSE」---レスター・ウォーカー

「TINY HOUSE」
著:レスター・ウォーカー 訳:玉井一匡、山本草介 出版:ワールドフォトプレス
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「タイニーハウス」-小さな家。副題は「小さな家が思想を持った。」。
訳者は私が敬愛する建築家の玉井一匡さん。玉井さんは「小さな家」の良さをずいぶん早くから言われていた人です。My Placeというブログもやっておられます。

「歴史上の・・・」「移動する・・・」「パネルの・・・」「紙と布の・・・」「用途限定の・・・」「道ばたの・・・」「アートとしての・・・」「自然の中の・・・」それぞれのタイニーハウスが集められています。

著者はアメリカの建築家。アメリカのフロンティア精神がこの本からあふれています。
この本のあとがきには

誰もが同じグランドに立って家づくりを楽しむことができるのだとこの家たちは言う

とあります。
実に感動的な言葉です。

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2008年11月01日

「はじめての<指輪>」---山本 一太

「はじめての<指輪>」
著:山本 一太 オンブック21
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ポニョ」の本名はなんていうか知っていますか?
実は「ブリュンヒルデ」といいます。
映画の中でこの名前が出てきますが、
実はこの名前、ワーグナーのオペラの登場人物なんですね。
オペラにはまったく疎い私は当然知りませんでしたが
興味本位で、そのオペラの解説本を買ってきて読んだのでした。
それが、この本。
オペラは「ニーベルングの指輪」。
前夜祭を含めて四夜にわたり上演される長大なオペラです。
「ブリュンヒルデ」というのは、神ボータンの娘で
戦いに倒れた勇敢な戦士の魂をすくい上げる女神ヴァルキューレの一人。
ストーリーの骨格はケルト神話から来ているともいわれていますが
その内容は摩訶不思議。
神様が借金をして自分の城を建てますが、借金を返さないということで娘を拘束されます、などなど。
実の兄妹が結ばれるとか、その子供が次の時代にブリュンヒルデと結ばれるとか・・・・。

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2008年10月23日

「もう牛を食べても安心か」---福岡伸一

「もう牛を食べても安心か」
著:福岡伸一 文春新書416
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生物と無生物のあいだ」のエントリーのコメントで
H.Suzukiさんよりご紹介をいただいたこの本も、やはりすこぶる面白かったのでした。

テーマは「狂牛病」、そして食の安全です。
著者独特の筆のさえが「狂牛病」に迫ります。

「プリオンタンパク質」と名付けることが大きな影響を持ったというくだりは
社会現象のありかたとしてもとても興味深い話です。
世界の真相のある一面。それも真実、というところでしょうか。
研究という実態があると思われている世界でも、コピーライトの力が影響を持つんですね。

そうした研究の世界の虚像をあぶり出しながら「狂牛病」の原因がプリオンタンパク質、それも異常型プリオンタンパク質が病気の原因ではないかという考えにたどり着く過程はとてもスリリングです。

ところが、次のような記述で、読者は大きく混乱してしまいます。

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2008年10月16日

「日本庶民生活誌」---宮本常一

「絵巻物に見る 日本庶民生活誌」
著:宮本常一 中公新書605
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いつ買ったんだかわからない本。
ずーっと、本棚に保存されていました。
背表紙だけはおなじみさんです。
こういう本、ふらっと、手にとって読み始めている時があります。
そうすると面白くて仕方がない。
きっと、今のこの時を本が待っていてくれたのかもしれません。
面白かったところを箇条書きしておきます。

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2008年09月17日

「猫のあしあと」---町田康

「猫のあしあと」
著:町田康 出版:講談社
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ある日、家に帰ると家内が
「大変だ、大変だ」と言っています。
何が起こったのかと聞けば
豆太郎が栗饅頭を食ったのだと言うではありませんか。
豆太郎と言うのはわが家の飼い猫でありまして
家猫として家族とともに12年。
もうずいぶんと年老いているわけでありますが
それが、まんじゅうを包む透明のセロファンを食い破り
中の饅頭を貪ったと言うのです。
猫に小判とは聞いたことがありますが猫に饅頭とは。

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2008年09月01日

「折り返し点」---宮崎駿

「折り返し点 1997〜2008」
著:宮崎駿 出版:岩波書店
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宮崎駿の書いてきたものなどの集大成である
出発点 1979〜1996」の続編。
この2冊をつなぐ存在として、渋谷陽一との対談集「風の帰る場所」があります。
「出発点」のようなパワーが影を潜めていることに最初は戸惑いましたが
これは作者自身が「もののけ姫」以降、自作についてめっきり語らなくなったことが、本としてまとめられたときにはっきりと現れたということです。
そして、この本を読みながら「語らなくなった宮崎駿」の姿を前向きに受け止める方が良いのではと思いました。それは「崖の上のポニョ」に深く心動かされたためでもありますし、語らない宮崎駿にある種の凄味を感じてもいるのです。
いちフアンとして、もっともっと素敵な作品を作り続けて欲しいと思っています。

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2008年08月12日

「ハリー・ポッターと死の秘宝」

「ハリー・ポッターと死の秘宝」
著:J. K. ローリング
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実は、少し前に読み終わっていました。
ついに最終巻。
10年続いてきたハリー・ポッターの物語もこれでおしまいです。
私は「不死鳥の騎士団」からの読者ですから、日が浅いのですが、それでも感慨深いものがあります。

それにしても、ポッターのシリーズは面白いですね。
ストーリーもさることながら、描かれている人間関係が深い。
これを児童書というジャンルでくくってしまうことで
この深さを狭めてしまってはいけないと強く思います。

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2008年07月29日

小林秀雄 ふたたび

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建築家の長浜信幸さんの事務所に遊びに行った時に
「古川さん、これ良いよ」とお貸しくださったCD。

「小林秀雄講演集 第二巻 信ずることと考えること」
amazon

iPodにいれて聞かせていただきました。

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2008年07月23日

最終巻!

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amazonより
さきほど私のところにも届きました。

早く読んでみたいですが
現在読んでいるアーヴィングの「ウオーターメソッドマン」が終わってからにします。

しかし、こんな注意書きのあるamazonの荷物は初めてでした。

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2008年06月26日

「超訳『資本論』」---的場昭弘

「超訳『資本論』」
著:的場昭弘 祥伝社新書111
amazon

「資本論」を読んでいます。とは言っても「超訳」です。
「超訳」ですから、新書で約350頁足らずの中に「資本論第一巻」が詰め込まれています。
もちろん、こんな新書を読んでも「資本論」を読んだことにはならないですが
「資本論」がどういう書物なのか、その概観を知るにはとても便利だと思い読みました。
どういう概念をどういう構成で書いた本か。
まずは、それを知ることがあの膨大な「資本論」を読むための第一歩だと思いますし、この本はとても分かりやすく書かれていましたので、読んだ甲斐ある刺激的な本でした。

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2008年06月17日

「生物と無生物のあいだ」---福岡伸一

「生物と無生物のあいだ」
著:福岡伸一 講談社現代新書1891
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とにかく面白い本です。
興味深くて深甚な表現の妙も豊富に蓄えた素晴らしい本であることに間違いありません。
そのいつくかを覚え書きしておきます。

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2008年06月05日

「ル・コルビュジエのインド 」---写真:北田英治

「ル・コルビュジエのインド 」
写真:北田英治 出版・編:彰国社
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先日、ドーモ・アラベスカで拝見した
北田英治さんの写真の多くは、こちらの写真集に収録されています。
あらためて、この写真集を見ていていろいろ考えました。
コルビュジェにとってインドとはいったいなんだったのでしょう。

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2008年05月29日

「M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究」---菊地 成孔、大谷 能生

「M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究」
著:菊地 成孔、大谷 能生 出版:エスクアイア マガジン ジャパン
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東京大学の教養学部でのジャズに関する講義が菊地成孔氏と大谷能生氏によって始まったのは2004年春。その講義録は「東京大学のアルバートアイラー」として単行本にもなっています。そこでは、歴史的な切り口(前期)とキーワードによる切り口(後期)で、それぞれ講義がすすめられました。そして、それに続く第三期として「マイルス・デューイ・デヴィスIII世研究」が2005年春から行われていたことは、ネット上でもその講義録が公開されるなどして早くから注目を集めていました。
先の講義録が単行本としてブレークしていましたから当然この講義録も単行本かされると多くの期待が寄せられていました。
が、しかし、講義が終われども、いっこうに単行本としてまとめられ出版される気配がありません。
どうしてしまったのかな・・・と、思うこと3年。ついに登場した本は、もはや講義録をまとめたものではなく、大幅に加筆され、インタビューや研究者の論考なども大きく取り上げられた750頁にも及ぶ大著となっていたのです。

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2008年05月21日

「イカの哲学」---中沢新一・波多野一郎

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「イカの哲学」
著:中沢新一・波多野一郎 集英社新書 0430
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「大助君は無数のイカの実存を直感した。」

建築家の秋山東一さんが持っていた本。
タイトルが不思議な本ですね、と、その場でちょっと見せてもらって、面白そうな本だと感じました。
こういう直感には素直に従う方が良いでしょう。

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2008年05月14日

「ペット・サウンズ」---ジム・フシーリ (著), 村上春樹 (訳)

「ペット・サウンズ」
著:ジム・フシーリ  訳:村上春樹  出版:新潮社
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G・グールドは1964年3月28日のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活動からは一切手を引き、以後発表される作品はスタジオで録音され編集されたものとなりました。

ビーチ・ボーイズのブライアン・ウイルソンは1964年末のツアーに向かう飛行機の中で、感情の抑制がきかなくなってライブを欠席し、これをきっかけに、コンサート活動への参加を止め、スタジオでの音楽作りに専念することを宣言します。

『ラバー・ソウル』("Rubber Soul")、1965年12月3日にリリース。
『ペット・サウンズ』("Pet Sounds")、1965年5月16日にリリース。
『リボルバー』("Revolver")、1966年8月5日にリリース。

ビートルズは1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークのステージを最後に演奏活動を停止し、スタジオでの音楽制作に没頭してゆきます。

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2008年04月11日

物語は世界共通言語---村上春樹インタビュー

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3月30日付けの信濃毎日新聞に村上春樹のインタビューが載っているのを知ったのはミクシィからの情報でした。
インターネットというのは、日本全国の情報を共有出来るツールだと、あらためて実感。
ちょうど、リフォーム工事で松本に出かける用事があったので、手を尽くしてこの新聞をゲットしました。
ともかく、このインタビューはなかなか読みごたえがあります。

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2008年04月10日

「砂漠のバー止まり木」---三遊亭白鳥

「砂漠のバー止まり木 三遊亭白鳥創作落語集」
著:三遊亭白鳥 発行:講談社
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先月の博品館で行われた白鳥師匠の独演会。
とても素晴らしかったんですが、その素晴らしさって、師匠の話に「物語の骨格」がしっかりとあったからに他ならないと思います。
でも、「物語の骨格」って何なんでしょうね。これは、説明するのがなかなか難しい。
でも、私の生業でもある建築設計にも物語の骨格というものが大切だと、最近考えているのです。

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2008年04月08日

「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書 」

「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書 」
著:アンディ・サマーズ 訳:山下理恵子 出版:ブルース・インターアクションズ
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原題は「One Train Later」。一本乗り過ごして行こうか、という感じでしょうか。
それにしても邦題の「ポリス全調書」はなんとかならなかったのでしょうかね。

二部構成の本書は
第一部にポリス結成直前までのストーリー、
第二部にはポリス結成から解散までのストーリーが綴られています。
どちらもとっても面白くてあっという間に読んでしまいました。

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2008年03月31日

饒舌抄---吉田五十八

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饒舌抄
著:吉田五十八 出版:新建築社
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建築家吉田五十八は現代数寄屋を完成した人として有名ですが
その吉田五十八が書いた物をまとめたのがこの本です。

この本を読むと、住宅を設計する者として、時代は変われども今でも参考になることがたくさん書かれていることに驚くばかりです。
社会は変わり、建築の社会的な意味は大きく変わっても人の生活というものは意外と変わっていないのかもしれません。とすれば、建築家の社会的な存在意義も大きく変わり、公共建築など「大きな建築」を手がける建築家の姿も変わってきたのに対して、住宅という「小さな建築」を設計する建築家の姿はそれほど変わっていない。ゆえに、今の我々にも吉田五十八の言葉に学ぶことは多いのだろうと思います。

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2008年03月13日

「花さき山」---斎藤隆介

「花さき山」
著:斎藤隆介 絵:滝平 二郎 出版:岩崎書店
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ある日、家に帰ると、家内が「斎藤隆介の全集がでているんだよね。欲しいんだよね。」と言うではないですか。日頃から欲しいものなんて口にしない家内ですから、どれどれといろいろ探してみたのですが、どうやら全集は絶版となっていて、古本でも高値で取引されているようなのです。1800円の本が5000円ではちょっとためらってしまいますし、そんなものを買ってきたところで家内が喜ぶはずもありません。
それにしても、どうして斎藤隆介なの、と聞けば、娘と一緒に図書館で借りてきた「花さき山」を、私のところに差し出すではありませんか。

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2008年02月20日

最新版 日本百名山---朝日新聞社

「日本百名山」といえば、今も読み継がれる深田久弥の名著ですが
そのエッセンスを豊富な写真と地図で紹介してくれるのが
この「朝日ビジュアルシリーズ」です。
すでに同じシリーズで7年前に刊行されていましたが最新の登山情報をもとに最新版が刊行され始めました。

実は、山岳写真家として有名な三宅岳さんがエッセイを書き、奥さまの典子さんのイラストを添えてこのシリーズに連載をするというのでさっそく本屋さんに出かけて買ってきたのでした。

三宅岳さんは、私が千葉の林業家さんたちと一緒に活動している「森林をいかす家づくりの会」を雑誌「住む。」で取材していただいたときにカメラマンとして写真を撮ってくださった方なのですが、奥さまの典子さんは私の家内の同級生で、私にとっても大学のワンダーフォーゲル部の後輩にあたります。そういう縁で、取材でご一緒する前から存じていたのですね。世間は狭いものです。

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2008年02月15日

「村上ソングス」---村上春樹、和田誠

「村上ソングス」
著:村上春樹、和田誠 出版:中央公論新社
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先を急がず、ゆっくりと頁をめくりたい本があります。
夜も10時をすぎると、あたりの静けさはいっそう増してきて
グラスに注いだお酒などでのどを潤しながら過ごす時間に
この本の頁をめくることの至福。

村上春樹が訳した詩と、それにまつわるエッセイ。

堅苦しいことなんてひとつもなく、ゆったりとした時間だけが流れてゆくような本。

贅沢な時間。

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2008年02月08日

「職人衆昔ばなし 正・続」---斎藤隆介

斎藤隆介は童話作家です。
童話とはいっても、村の老人が語り継いできた昔話を、語り継ぐための童話です。
そして、斎藤隆介は、職人達の語りにも耳を澄ませるのです。

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2008年01月31日

「また会う日まで」---ジョン・アーヴィング

「また会う日まで」
著:ジョン・アーヴィング  訳:小川高義  出版:新潮社
上→amazon、下→amazon

これは、ジャック・バーンズとその母の物語。
これは、ジャック・バーンズとその父の物語。
そして、
ジャック・バーンズの父の罪の物語。
そして、
ジャック・バーンズの母の罪の物語。

この本は、人の罪について語り続けます。読み終わった後も。

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2008年01月22日

「川の地図辞典」---菅原健二

「川の地図辞典」
著:菅原健二 出版:之潮
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<敷地を知る-1>
こういうブログをやっていると自分の生業が一体なんだかよくわからなくなりますが、私は建築の設計をやっているわけで、その建築の設計をするにあたり、とても重要なことは、建物が建つ土地の状況を良く知るということです。

私の場合には、まずその土地が、かつて人が住んでいた場所かどうかを調べ、その次に近くに川があれば、その川を中心として地形を読み、河川敷であった可能性などを考えます。
その時に、明治くらいの地図があると大変参考になるわけです。
明治期くらいまで、人が住んでいた場所というのは、それなりの理由があって住んでいたんだと思うのですね。もう少し時代をさかのぼれば縄文期まですすんで、まさに「アースダイバー」の世界になるのですが、そこまで行かずとも、そうした地形から歴史をさかのぼり、そこでどのように人が営んできたのかを知るということは、その土地の状況を知る重要な手がかりになります。

ここでポイントは、明治と現代、そして川筋です。

アースダイバーの端くれとして、そんなことを日ごろ考えていたら、masaさんのブログ「kai-wai散策」にて、とても興味深い本が紹介されているではありませんか。
この本は、多くの方の琴線に触れたようでコメント欄も大変な盛り上がりを見せておりますが、私も遅ればせながら、この本のご紹介をさせていただきたいと思いました。

まさに、これは、明治と現代、そして川筋をつなぐ本なのです。

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2008年01月18日

「第三の脳」---傳田三洋

「第三の脳」
著:傳田三洋 出版:朝日出版社
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自分の身体の皮膚から1mmくらい、全身を薄い膜が覆っていて、その膜がアンテナのように周囲の様子を感じているような、そういう身体のイメージが、私には昔からあったのです。
言い方を変えると、ちょっとオカルトチックな感じにも受け取られかねないことなので、今まであんまり口にしたこともなかったのですが、この本を読んで、なるほどこういうことだったのだ、と納得してしまいました。

「第三の脳」とは「皮膚」のことなのです。

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2007年11月29日

「川合健二 マニュアル」---川合健二ほか

「川合健二マニュアル」
著:川合健二ほか 発行:acetate
acetate

予約注文していた「川合健二 マニュアル」が届きました。

「川合健二」という人については
建築を学んでいた学生時代に、建築家の石山修武さんを通して知ったわけですが、コルゲートパイプの家の創始者として、私たちと同世代の建築関係者にとって「川合健二」という名前を知らない人はいないでしょう。
ただ、それは石山修武の目を通してみた「川合健二」だったわけです。当時学生だった私たちが「川合健二」という人物についてもっと知りたいと思っても、石山さんの言葉以外に手がかりになる情報をほとんど得る事が出来ませんでした。ある種、闇の中の人、遠い世界の人、となっていたのです。

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2007年11月28日

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」---村上春樹

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」
著:村上春樹 発行:平凡社
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最近、ほぼ同年代の建築家の仲間と出会う機会が多くて
それらの方々の少なくない人たちが、こぞって「アイラ」と口にされます。
建築設計者にはシングルモルトのフアンが多いのでしょうか。
あるいは偶然か。
しかし、こうあちこちで「アイラ」「アイラ」と聞くと、とっても気になってきます。
そういえば、もう何年も前に村上春樹がウイスキーのことを書いていたエッセイを買って読んだことを思い出し、書棚から引っ張り出してきました。
奥付を見ると1999年。うわーっ、8年も前でした。
書店に並んですぐに買った本ですが、はずかしながら当時はウイスキーに興味もなく本の内容もまったくといって覚えていません。というわけで、再読。

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2007年11月21日

「割り箸はもったいない?」---田中淳夫

「割り箸はもったいない?」---食卓からみた森林問題
著:田中淳夫 ちくま新書658
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世界の森林破壊の元凶として割り箸をやり玉に挙げるのは
そう主張する側も、主張にうなずく側も
実は割り箸の現実を何も見ていないのだという事がこの本を読むとよくわかります。
本当のエコロジーとは何か?
割り箸を通して著者はそう問い掛けているのです。

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2007年11月16日

「村上春樹にご用心」---内田樹

「村上春樹にご用心」
著:内田樹 出版:アルテスパブリッシング
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こんにちは。
自称、村上ファンの古川です。
しかしですねえ、村上春樹についてかかれた文章で
今までしっくりときたものがひとつもなかったって、どういうことでしょうねえ。
それがですね、このウチダさんという方の書いたもの、
実にしっくりと来るんですね。
村上春樹の原稿流出事件をきっかけに
ウチダさんのブログの記事を
わきた・けんいちさんに教えてもらって読んだのが最初でしたね。
父の不在
いやあ、的確に村上春樹の世界を言っておられた。
そのウチダさんのブログで村上春樹についてかかれた文章を中心に編集されたのがこの本というわけです。
これが、面白くないはずがない、わけですね。

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2007年11月13日

「住宅論」---篠原一男

「住宅論」
著:篠原一男 SD選書
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「住宅は芸術である」という言葉の響きに
驚きながらページをめくっていた学生時代から四半世紀が経とうとしている今
何だか気になって、もう一度読み返してみました。
初出一覧をみて驚いたのが1958年から1970年にかけて書かれたものだということ。
篠原一男、33歳から45歳にかけての文章なんですね。
読み直してさらに驚いたのは、いまでも十分刺激的な内容だったということです。

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2007年10月27日

「走ることについて語るときに僕の語ること」---村上春樹

「走ることについて語るときに僕の語ること」
著:村上春樹 出版:文芸春秋
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村上春樹は長距離を走ることを趣味としています。新刊であるこのエッセイでは「走る」ことについて語っています。自分が「走る」と言うことについて語るとすれば、そこで「何を」語るのか、という自問自答が本書のタイトルです。ですから、ただ、走ったというような話ではなく、語りながら、自らの人生哲学にふれるといった、実に読みごたえのある一冊になっています。
私は、これらのエッセイを読んでいて、長距離を走ると言うこと、長編小説を書くと言うことを、私の仕事である建築設計に重ねて考えました。それは、設計も長編小説も長期的な集中力が必要とされる仕事ということで、やはり共通点も多いからなんだと思いました。

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2007年10月17日

「楽園」---宮部みゆき

「楽園」
著:宮部みゆき 出版:文藝春秋
上→amazon、下→amazon

「模倣犯」の続きではありませんが、前畑滋子が登場して事件の真相に迫ります。
ただ、続きではないと書きましたが9年前の事件(「模倣犯」のこと)は小説全体に暗い影を落としています。
この小説、コピーなどを読むと超能力を持つ少年の話かと思ってしまいますが、さにあらず。かつての「魔術はささやく」「龍は眠る」「クロスファイヤ」のような超能力が中心のストーリーではなく、あくまでも小説は「家族」の有り様を浮き彫りにしており、今時の「家族の肖像」になっているのは、さすが宮部みゆきというところでしょう。
<以下、小説の内容にふれます>

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2007年10月04日

City Of Glass----Paul Auster(by柴田元幸)

Coyote No.21」に柴田元幸訳の「City Of Glass」が全文掲載されています。
オースターといえば柴田訳と定着しているように思えますが、唯一この「City Of Glass」だけが他の方の訳になっていまして、その顛末については柴田氏自身がこの雑誌の記事でふれています。
それはともかく、柴田訳のオースターフアンとしては、嬉しい限りなのでありまして、大判の雑誌にも関わらず通勤電車の中で広げて読み始めました。
<以下、小説の内容にふれます>

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2007年10月01日

「俳句鑑賞450番勝負」---中村裕

「俳句鑑賞450番勝負」
著:中村裕 文春新書 581

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この本に収録されている17文字450編を読んでいると
鮮烈で鮮明なイメージが喚起される瞬間が多々あります。
それこそが俳句のスリリングなところ。
そうしたスリルを味わいながら
とかくあいまいだと言われる日本語で、これほどはっきりと物事を伝えられるということに驚くとともに、日本語に備わっている力について考えています。

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2007年09月18日

「セルフビルド---家を作る自由」

「セルフビルド---家を作る自由」
著:矢津田 義則、渡邊 義孝 編纂:蔵前 仁一 出版:旅行人
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那須にある「Bar+Gallery 殻々工房KARAKARA-KOBO」の野澤夫妻は、お店と自宅を作っています。
私も何度かお邪魔させていただきましたが、
生活しながら、お店もやりながら、少しずつ今もバージョンアップしているようで、最近は最新のウエブツールであるWikiでご自身の経験をまとめ始めています。
KARAKARA-FACTORY'S DIY DIARY

その野澤夫妻の家づくりがこの本に紹介されています。

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2007年09月01日

「ノルウェイの森」---村上春樹

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「ノルウェイの森」
著:村上春樹 発行:講談社
→amazon ()(

奥付けを見ると1987年9月の発行になっています。
初版で読んでいますから、20年ぶりでの再読です。

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2007年08月28日

「三春の小路」---安藤三春

「三春の小路 めじろ、わたしの猫たち」
著:安藤三春 出版:遊人工房
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「目白にはなぜか猫が多い」と言うと、気のせいだと言われます。
ただ単に、猫好きには猫がよく目に付く、ということでしょうか。

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2007年08月09日

「俵屋の不思議」---村松友視

「俵屋の不思議」
著:村松友視 出版:世界文化社
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「東京クリップ」のじんた堂さんがブログで書かれていたのを見て
さっそく、購入。
俵屋は、その玄関先まで行ったことがあるだけ。
でも、玄関先だけでも、心おどる空間がそこにはありました。

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2007年08月01日

「愉しい非電化」---藤村 靖之

「愉しい非電化」
著:藤村 靖之 出版:洋泉社
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あたりまえのように電気が供給されているこの社会で
ともすれば我々はその「あたりまえ」が
多くの犠牲のもとに実現している、まったく「あたりまえでない」という事を忘れがちです。

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2007年07月23日

「滝山コミューン一九七四」---原武史

「滝山コミューン一九七四」
著:原武史 出版:講談社
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このところ、私が住んでいる東久留米市(東京都)にまつわる話題が目に付きました。
ひとつは「河童のクウと夏休み」というもうすぐ公開の映画は東久留米市(黒目川)が舞台。
そして、この本も東久留米市立第七小学校が舞台になっているのですね。
ただ、この二つが大きく異なっているのは、「河童のクウ」が東久留米の自然を舞台にしているのに対して「滝山コミューン」は「団地」という人為的に出来た街を舞台にしているところでしょう。

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2007年07月21日

本日発売!

ハリー・ポッターの完結編 第七巻「Harry Potter and the Deathly Hallows 」が
いよいよ発売されました。
北欧のどこかの国では、一日間違えて早く店頭に並べてしまった書店もあるとか。
ミクシィではネタバレを恐れてポッターのコミュニティを退会する方もあらわれています。
さて、そのポッター、どうなっているんでしょうか。
ほとんど死んじゃうという噂もありますし気になるところではあります。
でも、原書が読めない私は日本語訳を気長に待つことにします。

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2007年07月18日

「ホワイト・アルバム ネイキッド」

「ホワイト・アルバムネイキッド」
著:デヴィッド カンティック 訳:安藤 由紀子 出版:扶桑社
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Blackbird, Martha My Dear, Dear Prudence, Mother Nature's Son.....
どれも名曲ばかりですが、共通点は二つ。
一つは、ビートルズの通称「ホワイトアルバム」に収録されている曲だということ。二つ目は、ジャズというジャンルを軽々と超えてしまう現在進行形のピアニスト、ブラッド・メルドーのレパートリーであるということ。
というわけで、この本は「ホワイトアルバム」の制作の過程、時代背景、全曲解説からなる<一冊丸ごと「ホワイトアルバム」>という本です。

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2007年07月14日

「オウエンのために祈りを」---ジョン・アーヴィング

「オウエンのために祈りを」
著:ジョン・アーヴィング 訳:中野圭二 出版:新潮社
(上)→amazon
(下)→amazon

またしても、とんでもない小説を読んでしまいました。
ここにあるのは、「ガープの世界」でも「ホテルニューハンプシャー」でも「サイダーハウスルール」でもありません。数々のイメージが精密な細工で組み合わされている世界。そのパズルを解くような楽しさもあるのでしょうけれども、底知れぬ耳打ちに似たささやき声に耳を澄ませば、自分をはるかに超えた空間が暗黒の底のようにそこにあることを感じます。それ故に、とんでもない小説であると。
(以下、内容に触れます)

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投稿者 furukawa_yasushi : 22:30

2007年07月03日

「地平線の階段」---細野晴臣

「地平線の階段」
著:細野晴臣 出版:八曜社
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ちょっと前、MacPowerのインタビューを読んでから
以前から好きだったはずの細野晴臣さんが、さらに大切な存在になっているわけですが、そういえば、細野さんの本を持っていたのを思い出し、読み返してみました。

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2007年05月26日

ジョン・アーヴィングと村上春樹

村上春樹とジョン・アーヴィングの著作を年代順に並べてみました。
デビューこそ村上春樹はアーヴィングに遅れていますが
その後は、お互いに刺激しあっているかのように作品群が続きますね。

投稿者 furukawa_yasushi : 09:00

2007年05月25日

「ホテル・ニューハンプシャー」---ジョン・アーヴィング

「ホテル・ニューハンプシャー」
著:ジョン・アーヴィング 訳:中野圭二 新潮文庫
(上)→amazon、(下)→amazon

いやいや、すごい小説でした。
それにしても、通勤電車で読み終えて、家に帰ってテレビを付ければ
世間で起こった、おびただし暴力の数々で画面は溢れかえっています。
我々は、かくも暴力のただ中に立たされているのでしょうか。
しばし言葉を失います。

アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」は
おぞましき暴力と、暴力にさらされた人々の心の話。

作者も「おとぎ話」というのだから、そう呼んでもかまわないのだろうけれども、
「おとぎ話」として語られるがゆえの、耐え難い悲しみが
この小説には、脈打つ血液のように流れています。

まさに、我々は「そこ」に生きているのだと、
脈打つ血潮は我々に訴えかけてきます。

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2007年04月26日

「住宅の射程」---藤森照信の「分離派問題」

「住宅の射程」
著:磯崎新、藤森照信、安藤忠雄、伊藤豊雄 発行:TOTO出版
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4人の講演を収録した本書の中から磯崎新の「住宅は建築か」と
藤森照信の「分離派問題」が興味深く刺激的でした。
今回は藤森照信の講演について論旨をクリップしておきます。

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2007年04月20日

「川は誰のものか」---菅 豊

「川は誰のものか」
著:菅 豊 出版:吉川弘文館
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新潟生まれの私にとって
おいしいシャケは「村上」という地名と分かちがたく結びついています。
この本は、新潟県村上市の北、岩船郡山北町の大川流域における鮭漁をめぐる話です。
大川は昔からシャケがのぼる川であり、
鮭漁による利益を流域の人々が共有してきました。
その歴史をたどり、それを「コモンズ」の一例として紹介することによって
「コモンズ」とは何かということにふれています。

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2007年03月18日

「住宅の射程」---磯崎新の「住宅は建築か」

「住宅の射程」
著:磯崎新、藤森照信、安藤忠雄、伊藤豊雄 発行:TOTO出版
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4人の講演を収録した本書の中から磯崎新の「住宅は建築か」と
藤森照信の「分離派問題」が興味深く刺激的でした。
今回は磯崎新の講演について論旨をクリップしておきます。

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2007年03月12日

「サイダーハウス・ルール」---ジョン・アーヴィング

「サイダーハウス・ルール」
著:ジョン・アーヴィング 訳:真野 明裕 文春文庫
amazon(上下巻あり)

アーヴィングの小説の中では、一番長いかもしれませんね。
文庫本、上下巻であわせて1000頁強。
冒頭からしばらく続く医学的な描写には読書を続行する気力をそぐものがありますが、それを乗り越えれば、その医学的な描写が最後の最後までちゃんと響いてくれていることが、ほっかりと暖かい毛布にくるまるように受け入れられるように、心の中のちょっとした隙間におさまってくれる、というわけです。
<以下、小説の内容にふれます>

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2007年02月05日

「恋寄席通い」---橋上寿子

「恋寄席通い」
著:橋上寿子
amazon

どうやら落語ブームで、若い女性が寄席に詰めかけているようで、
SWA(創作話芸協会)の公演などチケットは15分で完売しちゃうらしい。
こういうブームには、40過ぎのおじさんとしては、ちょっと斜に構えてしまうわけです。
そして、この本のタイトルと装丁。
いつもなら、距離を置く、手に取らない、のだけれども
この本の著者である、橋上寿子さん、ミクシィで、私が三遊亭白鳥(高校の同級生でSWAのメンバーでもある)のことを書いたら、足跡を残してくださった。どうやって私の書いたものが、見ず知らずのひとのアンテナにキャッチされたんだか、不思議で仕方がないのだけれども、この方、かなりの落語通とお見受けした。
というわけで、amazonで注文。

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2007年02月01日

「第四の手」---ジョン・アービング

「第四の手」
著:ジョン・アービング 訳:小川 高義
amazon

ライオンに食いちぎられた左手。
高度な外科手術で移植された左手。
中間部での日本を舞台としたどたばたと
移植された左手に絡むオカルティックな展開。
物語は展開し、展開し、展開し、湖面に着水する。
「小説は長ければ長い方が良い」という著者にしては短い話だが、短いだけに展開し続けてゆくテンポの面白さと、着水するときのゆったりとしたイメージが余韻として心に深く刻まれる。
ジャンルわけするとすれば、まさに純愛小説ということになるだろう。
確かなる愛の小説。
愛は湖面にゆったりと着水する。

<以下、小説の内容にふれます。>

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2007年01月31日

「環境問題のウソ」---池田清彦

「環境問題のウソ」
著:池田清彦 筑摩プリマー新書029
amazon

昨年出版された本のなかから、様々な人に3冊紹介してもらうという記事が年末の毎日新聞にありました。
そのなかで、藤森照信さんがこの本を紹介されていました。
語り口には癖があり、時には棘もありますが、環境問題に関して、いかに我々が正しい考え方が出来なくなっているのかを教えてくれる本だと思います。

ここで取り上げている環境問題は四つ。

1、二酸化炭素問題と地球温暖化は本当に関係あるか?
2、ダイオキシンの問題は本当に問題なのか?高度な焼却施設は本当に必要なのか?
3、外来種が増えることはいけないことなのか?外来種を駆逐することは正しいのか?
4、自然保護という名のもとで自然との接触を失ってしまうことは大いなる損失なのではないか?

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2007年01月24日

「楽語・すばる寄席」---夢枕獏+SWA

「楽語・すばる寄席」
著:夢枕獏+SWA 出版:集英社
amazon

夢枕獏といえば「陰陽師」なんだけれども、どうやら「格闘技」と「落語」にも深い愛情をもっておられる。
それで、落語家の林家彦いち師匠は極真の出身ということで夢枕さんとお知り合いだったわけで、その彦いち師匠と、春風亭昇太師匠(テレビで大活躍!)、柳家喬太郎師匠、三遊亭白鳥(私の高校の同級生です)、神田山陽師匠(NHK「日本語で遊ぼう」の講談の人です)と五人で、創作話芸のあつまりを作ったのが、創作話芸協会、略して「SWA(すわっ)」。
ということで、夢枕さん、この五人を強力に後押ししようってんで、まずは手始めにチャンピオンベルトを作った、というのが、どうもよくわからないことですが、それだけでなくて、五人それぞれのために書き下ろしのネタを書いたのですね。
その五つの話を集め、五人のオリジナルも収録して、最後には座談会までやっちゃっているのがこの本なのであります。

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2006年12月19日

「憲法九条を世界遺産に」---太田光、中沢新一

「憲法九条を世界遺産に」
著:太田光、中沢新一 集英社新書0353
amazon

憲法九条を含む日本国憲法は、たしかに尋常でないつくりをしている。

本書の後書きにあたるところで、中沢新一が切り出すこの言葉が本書の底辺である。
「尋常ではない」とは、たとえば、国家を生命体とすると、日本国憲法は免疫機構にたとえられる武力行使を放棄してしまっているからだ。しかし、だから、日本国憲法はダメであるというのではない。生命体においても母体は子を我が身に宿すときに一時的に免疫機構の一部を解除している。または神話世界では、異物である他の動物たちとのコミュニケーションを可能とする世界を、思考と想像力によってつくりだし、異物との境界を乗り越え、そして異物を取り込んできた。

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2006年12月13日

「労働ダンピング」---中野麻美

「労働ダンピング」
著:中野麻美 岩波新書1038
amazon

今年の7月にNHKで放送された「ワークングプア」は大変な反響だったそうだ。
私もブログでこの番組のことを取り上げたが、その記事には放送直後には多くのアクセスがあり、放送後も、毎月々々、まとまったアクセスを得ている。世間の関心は高い。
そして、NHKはその反響の大きさから、先日「ワーキングプア 2」という番組を放送した。
そうした「ワーキングプア」の問題とその背景は、この本の中で詳しく論じられている。
労働の流動化とそれを促した政府の政策。
そのなかで我々はどうしたらいいのか。
そして、私は、この本に出てくる「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉から、労働とは何かということに思いをめぐらせた。

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2006年11月21日

「グレート・ギャッツビー」---村上春樹訳

「グレート・ギャッツビー」
著:スコット・フィッツジェラルド 訳:村上春樹 中央公論新社
amazon

読後におそってくる荘厳な響き。
その余韻。
アフターダーク」でも余韻のことを考えていた。
余韻というのは音楽的な比喩というだけでなく
頭の中にあるこの響き。
そして、この響きこそがこの小説の核心ではないかと、そんな思い。
それは、ひとつの確かな幻影。
そして、僕らは、その幻影の中で生きている、ということ。
この小説が大切な小説であるということは
この響きに耳を澄ませることなんだと思う。

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2006年11月08日

「昭和住宅物語」---藤森照信

shouwajutaku.jpg

「昭和住宅物語」
著:藤森照信 発行:新建築社
amazon

敬愛する建築家である秋山東一さんのブログ紹介されていたのを見かけて
そういえば、読みたい本リストに並べたままほこりをかぶっていまだに未読であったことを思い出した。
これは良いきっかけと、さっそく読んだが、これは本当に面白かった。
語り口が軽妙でいい。
住宅設計に関わるものとしては、昭和という時代が生み出してきた傑作住宅とその設計者、時代背景が丁寧に描かれているのを興奮気味で読み終えた。

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2006年11月07日

「「間取り」の世界地図」---服部岑生

「「間取り」の世界地図」
著:服部岑生 青春出版社青春新書
amazon

タイトルが大げさで読んでがっかり、という新書が少なくない。
この本も、「世界地図」とうたっているものの、それはまあ大風呂敷。
期待してはいけない。
けれども、日本人の「南面信仰」についてふれている下りが面白かったので
書き留めておこうと思う。

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2006年10月19日

「ティンブクトゥ」---ポール・オースター

「ティンブクトゥ」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 出版:新潮社
amazon

きみは、ミスター・ボーンズに会ったかい?
きっと、ミスター・ボーンズは「ティンブクトゥ」に行ったに違いないのだ。
そう、ウイリアム・グレヴィッジ・クリスマスのもとへ。
そんなすてきな物語がここにある。

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2006年09月27日

「人間はこんなものを食べてきた」---小泉武夫

「人間はこんなものを食べてきた」
著:小泉武夫 日経ビジネス人文庫
amazon

マルコメみそのCMで菅原文太さんとみそ蔵で語り合っている
小泉武夫さんは発酵学者。
ご自身も福岡県の酒造家の生まれというから、発酵のまっただ中で育った方なのですね。

さて、「ああ、野麦峠で薫製」の記事にいただいた
わきた教授からのコメントに、この方の名前がありました。
その時は、まだマルコメみそのCMも知らず、不勉強でこの方の名前を知りませんでした。
というわけで、読んでみた一冊です。

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2006年09月22日

「VectorWorks12で はじめるCAD」---五十嵐進

「VectorWorks12で はじめるCAD」
著:五十嵐進 出版:ソーテック社
amazon

僕ら建築設計者、特にMacintoshユーザーが、
日頃からお世話になっている「VectorWorks」は
製図から、表計算、3DモデリングまでこなせるCADソフトだ。

CADとは、Computer Aided Design、つまりはコンピューターを使った設計ということ。
そして、コンピューターによる製図という意味で、
Computer Assisted Drawingの意味でも使われる言葉だ。
CAD(Wikipedia)

そして、拙ブログにも時々コメントを寄せてくださる
MADCONECTIONのiGaさんこと五十嵐進さんこそは
「VectorWorks」が「MiniCAD」と呼ばれていた頃から
我らユーザーにとって、知らぬものがない存在なのである。

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2006年09月21日

「名もなき毒」---宮部みゆき

「名もなき毒」
著:宮部みゆき 出版:幻冬舎
amazon

ポール・オースターの「最後の物たちの国で」や
カズオイシグロの「私を離さないで」をSF小説という人がいるだろうか?
ハリー・ポッターシリーズは単なる児童文学だろうか?
「カラマーゾフの兄弟」は推理小説だろうか?

宮部みゆきは自らを大衆小説家だと言うに違いない。
そして、推理小説家だと。

でも、登場人物の描写は、ますます冴え渡る。
「私を離さないで」も「最後の物たちの国で」も「ハリー・ポッター」も「カラマーゾフの兄弟」も
SFとかミステリーという枠を飛び越えて、そこに登場する人物たちが、
いかに深く、そして、精緻に描かれていることか。
小説の楽しみ、醍醐味は、そこに描かれる人物に出会えることだ。
そして、そのためには、「人」は深く精緻に描かれていなくてはならない。

今回、宮部は筆は
「原田いずみ」という人物を描く。

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2006年09月20日

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」---J. K. ローリング

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」
著:J. K. ローリング
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僕は何も知らなかった。
第一巻はファンタジーと冒険あふれるお話でした。
でも、この第五巻には、うーんと、うなってしまいました。

というわけで、ハリーポッターです。

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2006年09月11日

「仕組まれた9.11」---田中 宇

「仕組まれた9.11」
著:田中 宇 発行:PHP研究所
amazon

2002年4月9日発行のこの本を、僕は書店に並ぶと同時に買って読みました。

そして今日、すでに事件から5年、この本が世に問われて4年と4ヶ月が経ったわけです。

「アメリカは戦争を欲していた」という副題も過激です。
この本が出た2002年当時は、まだ、大量破壊兵器がイラクのどこかにあると、大勢の人が信じて疑わなかったからです。

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2006年09月06日

ハリー・ポッターを図書館で借りて読む

「ハリー・ポッターと賢者の石」を
図書館で借りて読みました。
何を今更、ハリー・ポッターなのか、と思われる方もおられるでしょう。

シリーズ第一作のこの本がイギリスで発売されたのが1997年。
日本語訳がでたのが1999年、映画化が2001年。

でも、恥ずかしながら、僕はハリー・ポッターの原作を、もちろん邦訳ですが、今まで読んだことがなかったのです。
映画だって、テレビで放映されたもので始めて見ました。
だから、決して、ハリー・ポッターフアンと言えるほどのものでもないのですが
その世界に、心惹かれるものがあるのですよね。

特に、映画は面白いですよね。

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2006年08月28日

「わたしを離さないで 」---カズオ イシグロ

「わたしを離さないで 」
著:カズオ イシグロ 翻訳:土屋政雄 出版:早川書房
amazon

「知らない」と言うことが、かくも切ないことであるのか。

日本生まれ、イギリス国籍のカズオ・イシグロの小説は
精緻な言葉の世界を通して、「知らない」「知らされない」をめぐり
切なく揺れ動く。

主人公、キャシー.Hは
幼少時代を語る。
彼女はもちろん知っている。
けれども、彼女はもちろん知りはしない。

「知らないでいる」ということは、かくも切ないことであるのか。

「知っている」とは何か?
「知らない」とは何か?

そして、僕らはいったい「何」を知っているというのだ。

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2006年08月26日

「「間取り」で楽しむ住宅読本 」---内田青蔵

「「間取り」で楽しむ住宅読本 」
著:内田青蔵 光文社新書189
amazon

戦前から戦後にかけての、貸家から持ち家への変遷をふまえ
住まいの中で間取りというものがどのように考えられてきたかを紹介している。
章立てで「玄関」「居間」「台所・食堂」「客室」「子供室」「寝室」「トイレ・浴室」と、それぞれの部屋について、歴史的な視点から、変わったもの変わらないものについてふれることによって、間取りっていったい何なんだろうという問題を、われわれに投げかけてくれる。

こうした歴史的な視点は、これから、家を作られる方には、常識にとらわれない自分にあった間取りを考えるきっかけを与えてくれるだろう。また、僕ら、間取りを考えることを仕事としている者にも興味深い内容になっている。

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2006年08月15日

「苔のむすまで」---杉本博司

「苔のむすまで」
著:杉本博司 出版:新潮社
amazon

杉本博司さんの名前を知ったのは
aki's STOCKTAKINGの「杉本博司展をまだ見ていないけど」でだった。
2005年11月の記事だから、ずいぶんと前になる。

結局、六本木ヒルズで行われていた展覧会には行けなかったけれど
この「苔のむすまで」はamazonから届いた。

それから毎日、この本の表紙を眺めていたのだけれども、
どうしても読む気が起きなかった。

本というのは、必ず、向こうからやってくる、そんな時間(タイミング)の中にある。

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2006年08月09日

「田舎で暮らす!」---田中淳夫

「田舎で暮らす!」
著:田中淳夫 平凡社新書
amazon

「だれが日本の『森』を殺すのか」なんていう、すごいタイトルの本も書いている著者の最新刊である。

この本は田舎暮らしの指南書であるとともに
田舎の暮らしと都会の暮らしを対比させることによって
暮らしとは何か?生きるとは何か?ということまで問うている本だ。

それは、冒頭にあるこんな言葉から始まる。

現代社会では村八分という言葉は死語になりつつあるが、地元の人々が行う村八分ではなく、移住者側が地域を無視する村八分は起きている。田舎に求めるのは自然環境だけで、人にも地域にもなんの世話も受けないと考える都会人がいるようだ。

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2006年07月19日

「一九七二」---坪内祐三

「一九七二---「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」」
著:坪内祐三 文春文庫
amazon

ひとつの時代の終わりとしての1972年。
ひとつの時代の始まりとしての1972年。
1972年を結節点として近・現代を読み解こうという試み。
雑誌「諸君!」の連載が2003年に単行本となり、最近文庫化された。

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2006年07月03日

「東京大学のアルバート・アイラー---東大ジャズ講義録・キーワード編」

「東京大学のアルバート・アイラー—東大ジャズ講義録・キーワード編 」
著:菊地 成孔 , 大谷 能生  出版:メディア総合研究所
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歴史編」に続く「キーワード編」。
2004年度の東京大学の一般教養の授業としておこなわれた講義をまとめたもの。「歴史編」が前期で「キーワード編」が後期の授業となり、2冊で通年の講義を収録。

UAとのJazzAlbum「cure jazz 」がもうすぐ発売の菊地孔成と、大谷 能生 の東大講義録。

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2006年06月16日

「杉のきた道」---遠山富太郎

「杉のきた道」-日本人の暮しを支えて
著:遠山富太郎 中公新書-419(現在絶版)
amazon(古本あり)

新書というのは雑誌扱いで、よほどのことがない限り増刷はしないと聞いたことがある。
そこが、ハードカバーの書籍と大きく違うところだけれど
なかには、しっかりした内容のものもあり、そういう新書が雑誌のように扱われるのはいささか問題があると感じる。
この本も現在絶版であるが、とてももったいないことだと思う。

「杉のきた道」というタイトルであるが
生物学的に、日本に杉という植物が帰化したという話ではなく、
日本人が杉という樹木といかに生活をともにしてきたかを紹介してくれる本。

森林をいかす家づくりの会」は、千葉県南部の主に斉藤造林さんの杉材を使うことを念頭に置いて活動しているが、なぜ「杉」なのか?という問いかけなしには、会の活動はなりたたない。
そのためには、日本人と杉の関係についてしっかりと考える必要がある。
この本は、まさにそのための、最良のガイドブックではあるまいか。

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2006年06月12日

「アホウドリの糞でできた国—ナウル共和国物語 」---古田 靖

「アホウドリの糞でできた国—ナウル共和国物語 」
著:古田 靖 出版:アスペクト
amazon

アホウドリから宝物をもらった
ひとつの島の物語。

アホウドリが珊瑚礁に落とし続けた糞が島になりました。
糞は燐鉱石という宝物になりました。
燐鉱石はお金に化けるのです。
海の向こうの大きな力が島を狙うようになります。
世界の戦争が終わり、宝物は自分のモノとなりました。
そうして、遊んで暮らせる、夢のような国が実現したのです。
でも、燐鉱石もいずれは枯渇するのです。

これまでナウル人は 自給自足の生活 労働を強いられる植民地生活 働かずに遊ぶ生活 しか経験していません。 信じられないことですが、 働いてお金をもらいながら生きていく という発想はなかったのです。

さて、どうなるのでしょうか、ナウル共和国。

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2006年05月30日

「ジム・ジャームッシュ インタビューズ」

「ジム・ジャームッシュ インタビューズ
  —映画監督ジム・ジャームッシュの歴史 」
出版:東邦出版
amazon

最新作「BROKEN FLOWERS」の公開にあわせて出版された
ジャームッシュの実質的なデビューである
1980年から2000年までのインタビューの邦訳。
ここで、僕に関心があるのは
彼の映画作りの方法論。

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2006年05月15日

父の不在

内田樹さんが
自らのブログで「村上文学の世界性について」と題して
村上春樹論を展開しておられるのを読んだ。

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2006年04月09日

「国境の南、太陽の西 」---村上春樹

「国境の南、太陽の西 」
著:村上春樹 出版:講談社
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僕は、村上春樹の小説が好きだ。
しかし、一時期、全然読めなかったときがある。
読んでも、その世界にうまく入ってゆけなかったのだ。
それは、小説でいうと
ちょうど「ダンス・ダンス・ダンス」と、この「国境の南、太陽の西 」の頃になる。
足かけ5年、ずいぶんと長いブランクだ。
2冊とも、読んだには読んだのだが、まったく頭に入らなかった。
というわけでこの本を、もう一度読み返してみようと思った。
それは、村上氏がカフカ賞を受賞したのを機に、一度村上春樹をおさらいしておきたかったということと、先日の「村上さんに聞いてみよう330の質問」の中で、この小説が多くの外国の人の記憶に残る小説だということを知ったからだ。

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2006年03月30日

My Favorite Things---John Coltraneと「海辺のカフカ」

My Favorite Things---John Coltrane
1960年10月録音
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エリック・ドルフィとのコラボレーション(1961年)を経て
黄金のカルテットへとすすむその直前。

このレコードが名盤といわれるのは
その後、ライブでの定番レパートリーとなる
「マイ・フェヴァリット・シングス」の初演ということと
ソプラノサックスによるコルトレーン独自のモードの世界へ、大きく踏み出した記念碑としてだろうか。
最晩年の、長大なアドリブの洪水を知っていると、ここで聞かれるソロはかなり物足りない。
おまけに、黄金のカルテットに入れなかったアート・デイビスのベースは
ふらふらしていて、ちゃんとそこに座っていない。
それでも、僕はこの演奏がわりと好きで、よく聞いている。

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2006年03月11日

「現代落語論」---立川談志

「現代落語論」
著:立川談志 講談社
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先日の「落語ブームなんてしらねエ」以来
気になっていたこの本を読んだ。

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2006年03月07日

「ふりかえったら 風-3」---北山修

「ふりかえったら風--3」
著:北山修 出版:みすず書房
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結局、三冊の対談集を全部読んでしまった。
心理学とか精神分析とかには
昔から興味があったんだけれども、
それだけじゃなくて
やはり、僕は北山修が書いていることに共感しているんだということが
三冊読んだらわかった。

この対談集は、精神分析医としての対談(専門書の企画)も含まれていて
一般的ではないかもしれないし、やはり興味があるとは言っても
こういう世界の門外漢としては、理解を超えている部分もある。
そのなかでも、九州大学の学生との対話には
「ビーイング」と「ドゥーイング」という話が出てきて興味深かった。

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2006年03月04日

「音楽」---小澤征爾、武満徹

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「音楽」
著:小澤征爾、武満徹 出版:新潮文庫
amazon

今年は武満徹没後10年ということで
初台のオペラシティなどで様々なイベントが企画されています。
武満徹に関する著作もいくつか出版されるようですね。
武満の書く文章は詩的で独特のトーンがあってとっても好きです。
しかし、詩的な言葉はとても幻惑的で、そこにいる武満徹という存在も
ここになき者として、そこにいたりします。
一方で素顔の武満、等身大の武満というものは、この本のような対談(なまの言葉)のなかにいるのだと思います。
学生時代に読んだ文庫本を掘り起こしてきて、もう一度読んでみました。

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2006年02月23日

「夢十夜」---夏目漱石

「夢十夜」
著:夏目漱石 岩波文庫、新潮文庫、角川文庫
amazon
青空文庫

ついに明治の木にはとうてい仁王は埋っていないものだと悟った。

と、終わる、第六夜が好きだ。
10話とも珠玉の逸品なんだけれども、
高校生の時に読んで、それ以来、この短編集に心惹かれているのは
この第六夜があったからだと思う。

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2006年01月31日

The World According To Garp----John Irving

「ガープの世界」(上・下)
著:ジョン・アーヴィング 訳:筒井正明 新潮文庫
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ガープにとって世界とはこういうもの。
1978年に出版された小説は
主人公ガープの目を通して世界が描かれる。
でも、その世界は個人の偏見に満ちた世界。
そして、そこには愛される偏見も憎むべき偏見も
分け隔てなく描かれている。決して網羅的にではなく。

そして、家族。

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2006年01月30日

「ふりかえったら 風-1」---きたやま おさむ

「ふりかえったら 風-1」
著:きたやま おさむ 出版:みすず書房
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北山修の1968年から2005年の対談を
三冊の本にまとめた第一冊目。
なかでも、寺山修司との対談は出色。

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2006年01月21日

「辺境を歩いた人々」---宮本常一

「辺境を歩いた人々」
著:宮本常一 出版:河出書房新社
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宮本常一の仕事はとてつもない大海原のようだ。
あるいは荒野、大平原、いやいや砂漠。
そこを宮本常一は歩く、歩く、歩く。
僕にとって宮本常一は歩く人だ。

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2005年12月09日

「きょうの猫村さん」---ほし よりこ

「きょうの猫村さん」
著:ほし よりこ 出版:マガジンハウス
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ねこ部に所属されておられるshijimiさんから、ある日手渡された一冊の本は
今話題の猫村さん。
超脱力系の漫画かと思ったら、熱血猫のお話でした。
こんなに仕事の好きな猫がいたらいいのになあ、とう思うのは
まったくもってとんちんかん、なん、でしょう。

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投稿者 furukawa_yasushi : 17:40 | コメント (6)

2005年12月03日

「意味がなければスイングはない」---村上春樹

「意味がなければスイングはない」
著:村上春樹 出版:文芸春秋社
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村上春樹の新刊エッセイ。
季刊「ステレオサウンド」に連載されていたものが一冊の本になって出版されました。
かねてから、音楽についてのまとまった文章を書いてみたかったと語る
皆さんご承知の音楽好きであるところの村上春樹さんの、音楽への思いの丈が語られています。
シューベルトのピアノソナタは「海辺のカフカ」でも出てきたなあとか、
ブルース・スプリングスティーンのこと、
ブライアン・ウイルソンとビーチ・ボーイズのこと、
へそ曲がりなウイントン・マルサリス論。
などなど、どれも、興味深い内容のものばかりですが、
スタン・ゲッツについて語る村上の言葉が特に僕の胸に響きました。

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2005年11月08日

「新シルクロード 第4巻 -青海・カラホト」

「NHKスペシャル 新シルクロード 第4巻 --青海・カラホト」
編:NHK「新シルクロード」プロジェクト
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今年の初めから始まった「新シルクロード」は様々な論議を呼んでいます。
そうした人たちの声を聴くこと(読むこと)が出来るのも
ブログが僕らの生活にいかに浸透してきたかということの証なんだけれども
第7集の「青海 天空を行く」には、厳しい声が多かったですね。
かくいう僕も、厳しい言葉を選んでしまった方です。

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2005年10月26日

「告白」---町田康

「告白」
著:町田康 出版:中央公論新社
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或る夜、仕事を終えて家にたどり着くと
寝かしつけた子供たちから解き放たれた家人が、熱心に本を読んでいた。
聞けば、一度読み終え、もう一度読んでいるという、それは、
町田康の新作とのこと。
その夜以来、家に帰り我が顔を見るたびに、読め読めとの家人の進言。
うーん、町田康、そうそう、猫の話、よかったよね。
なんて、思っているし、「夫婦茶碗」はすごいと思ったよ、と
僕も結構なフアンなんだけれども、目の前に差し出された本は
総ページ数で670ページ以上にも及ぶ、著者、類にみない超大作なのであった。

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2005年10月20日

「アースダイバー」---中沢新一

「アースダイバー」
著:中沢新一 出版:講談社
amazon

頭の中にあったプログラムを実行して世界を創造するのではなく、水中深くにダイビングしてつかんできたちっぽけな泥を材料にして、からだをつかって世界は創造されなければならない。こういう考え方からは、あまりスマートではないけれども、とても心優しい世界がつくられてくる。泥はぐにゅぐにゅしていて、ちっとも形が定まらない。その泥から世界はつくられたのだとすると、人間の心も同じようなつくりをしているはずである。

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2005年09月28日

「段ボールハウスで見る夢」---中村智志


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「段ボールハウスで見る夢」
著:中村智志 出版:草思社
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吾妻ひでおの「失踪日記」のエントリーにTBをくださった
村上知奈美さんのブログ、☆ブログ版☆ 「東京ホームレス」にうかがった時に
この本のことが話題になっていた。
あー、そういえば、ずいぶん前だけれども
この本の存在を知って、読んでみたい本のリストとしてどこかにメモ書きしたままだったことを思い出す。

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投稿者 furukawa_yasushi : 09:20

2005年09月16日

「東京奇譚集」---村上春樹

「東京奇譚集」
著:村上春樹 出版:新潮社
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アフターダーク」からちょうど一年。
雑誌「新潮」に連載された4つの短編に一遍の書き下ろしを加えた本書が刊行された。
15日発売だけれども14日の夕方には書店に積まれていたのをさっそく購入。
その日のうちに読了。
読了後、「アフターダーク」でかわされた、マリと高橋のこの会話をすぐに思い出した。

「何かを本当にクリエイトするって、具体的にいうとどういうことなの?」 「そうだな・・・音楽を深く心に届かせることによって、こちらの身体も物理的にいくらかすっと移動し、それと同時に、聴いている方の身体も物理的にいくらかすっと移動する。そういう共有的な状態を生み出すことだ。たぶん。」

村上ワールドは、さらに一歩も二歩も深遠な場所に、僕らを連れて行ってくれる。
読んだあとに「物理的にいくらかすっと移動」した感覚になる小説集。とっても、不思議な余韻をもった小説集。

収録されているのは
「偶然の旅人」
「ハナレイ・ベイ」
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
日々移動する腎臓のかたちをした石
「品川猿」

東京奇譚集 公式HP

<以下、内容にふれます>

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2005年09月07日

「ECMの真実」---稲岡 邦彌

「ECMの真実」
著:稲岡 邦彌 出版:河出書房新社
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ECMはレコード会社の名前だ。
大変個性的な音づくりで知られる。
「あれ、これECM風だねえ」なんて思っていると
それは本当にECMのレコードだったりする。
たぶん、ECMのレコードは、誰が聴いてもその特徴的な響きを聞き取ることが出来るのではないだろうか。
この本は、そんなECMの生い立ちから現在の地位を築くところまでを
日本人である著者が、ECMのレコードを日本で売り出す経験を通して描かれている。
加えてECMをつくってきたミュージシャンや関係者へのインタビューも収録されており、ジャズのレーベルのひとつとして発足したECMが、いかにして独自の世界を持ちながら商業的に成功したのか、その裏側を覗くようで読んでいてとても楽しかった。

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2005年08月08日

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」---ポール・オースター編

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」
編:ポール・オースター 訳:柴田元幸他 出版:新潮社
amazon

ポール・オースターの呼びかけで
集まった数々のストーリー。
「私たちの物語を送ってほしい」
「ただし、条件がある。短い、本当に起きた話でなくてはならない。」

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2005年07月30日

「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」---中山康樹

「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」
著:中山康樹 出版:河出書房新社
amazon

今年はビル・エヴァンス没後25年ということで
ビル・エヴァンスの本がまた出ていた。
書いているのは、マイルス本をやたら連発している中山康樹。
マイルス本同様のあの口調で書いているに違いないと、最初は敬遠していたが
実は違った。

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2005年07月02日

おとぎ話を語ることと設計について--「空腹の技法」から

オースターの「空腹の技法」のなかにおさめられている
インタビューで、
オースターが興味深いことを言っているので、引用してみよう。

私の作品に一番影響を与えているのは、おとぎ話、つまり物語を声に出して語りつたえる伝統だと思う。グリム兄弟、千夜一夜物語、子供に読んで聞かせる類いの物語だ。いわば語りの骨子だけで出来ていて、細部はろくにないのに、膨大な情報がわずかな時間にわずかな言葉で伝達される。おとぎ話が証明しているのはおそらく、読み手にーーあるいは聴き手にーー物語を語っているのは読み手や聴き手自身だということだろう。テクストは想像力のスプリングボードにすぎない。「昔むかし、ある女の子が、大きな森のはじっこでお母さんとくらしていました。」少女の顔立ちも、家の色もわからないし、お母さんは背が高いか低いか、太っているかやせているかもわからない。わからないことだらけだ。だが、そうしたことを我々の頭は空白のままにしておかない。自分で細かい点を埋め、みずからの記憶や体験に基づいてイメージを創る。だからこそ、この手の物語は、我々のなかでこれほど深く反響する。聴き手が物語に積極的に参加するんだ。

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2005年07月01日

ヴェンダースとオースター

空腹の技法」の最後の最後に
オースターがヴェンダースから手紙をもった話が出てくる。
手紙の内容は、ヴェンダースからの熱烈なるオースター小説へのラブコールだ。
そして、二人は出会い友達となる。
当時、ヴェンダースは「夢の果てまでも」の撮影でオーストラリアにいた。
そして、まったく別のつながりで(雑誌エルの企画で)、オースターは「夢の果てまでも」に出演していたジャンヌ・モローとの対談をおこなうことになる。
オースターはわれわれの日常にいつでも起こっている、こうした偶然に注目する。
そこにあるのは、偶然に振り回されるのではなく、偶然の喜びを享受するという生き方だ。

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投稿者 furukawa_yasushi : 16:50 | コメント (7)

2005年06月30日

「空腹の技法 The Art of Hunger」--ポールオースター

「空腹の技法 The Art of Hunger」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸、畔柳和代
新潮文庫 →amazon

オースターのエッセイ集。
The Art of Hungerというのは、The Art of Fuga(バッハ)のパロディに違いない。
しかし、読んでみるとそんなに軽いものではない。
第一部は現代フランスの詩を中心とした硬質な文芸論集。
第二部はオースターが翻訳したり関わった書物の序文集。(これも硬質な文芸論)
そして第三部がインタビューとなっている。
オースター好きならば第三部のインタビューは興味深く読めると思うが
その他はかなりきつい。
きついといいながら読んでみるとかなり面白い。

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2005年06月15日

「鍵のかかった部屋」---ポール・オースター

「鍵のかかった部屋」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 白水Uブックス--海外小説の誘惑
amazon

主人公の元に幼なじみファンショーの妻から手紙が届く。
ファンショーの失踪。そして、彼は自らが残した膨大な未発表の著作を主人公に託すように妻に言っていた。
発表する価値があるかないか。もし、なければすべての原稿は破棄する事。
しかし、原稿は発表され、世間の反響をよぶ。

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投稿者 furukawa_yasushi : 14:29 | コメント (8)

2005年06月10日

「バカなおとなにならない脳」---養老孟司

「バカなおとなにならない脳」
著:養老孟司 出版:理論社(よりみちパン!セ)
amazon

僕らの養老先生が子どもたちの質問に答えます。
長くなりますが、ちょっと引用。

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2005年06月07日

「日々移動する腎臓のかたちをした石」---村上春樹

「日々移動する腎臓のかたちをした石」---村上春樹

東京奇談集4として、「新潮 6月号」に発表された
村上春樹の最新短編。
リアルタイムで(単行本になる前の雑誌の段階で)小説を読むなんて、
「へるめす」で連載していた大江健三郎の「治療塔」以来。
タイトルに引きつけられ、冒頭を読んでさらに引きつけられる。

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2005年05月31日

「東京大学のアルバートアイラー」---菊地成孔+大谷能生

「東京大学のアルバートアイラー」
著:菊地成孔+大谷能生 出版:メディア総合研究所
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UAの「SUN」で、サウンドに広がりと奥行きを与えている
マルチ(!)サックス奏者の菊地成孔は
昨年(2004年)の(UAのツアーの真っ最中)に東京大学の一般教養の講義を行いました。
その前期分の講義録をまとめたのがこの本。

内容は「ジャズ」を歴史的に読み解くというもの。
中心は「モダンジャズ」。そして、後半はマイルスの話に終始しています。
具体的には、コード体系を築いたバークリー・メソッドを中心に、その前史であるバッハの12平均律と、その後の展開のMIDIで挟み込んで、音の記号化という側面で、「モダンジャズ」の「モダン」たるところを解きほぐして語ってくれています。

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2005年05月12日

「「秋葉原」感覚で住宅を考える」---石山修武

「「秋葉原」感覚で住宅を考える」
著:石山修武 発行:晶文社
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この本が出版されたのは1984年。
僕は21歳、学生として建築を学び始めた頃。
今考えると、学生時代にもっとも影響を受けたのは実はこの本かもしれない。
というわけで、20年の時を隔てて再読してみた。

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2005年05月03日

「失踪日記」---吾妻ひでお

「失踪日記」
著:吾妻ひでお 発行:イースト・プレス
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吾妻ひでおは、好きな漫画家の一人です。
彼のナンセンスさは、シュールだけれども過剰に世間離れしていないペーソスがあって好きです。
笑いの質としてはずいぶんと健全ですよね。
少年チャンピオンとか読まなくなって マンガもリアルタイムで追っかけなくなって、吾妻ひでおはいったいどうしているだろうかと、時々思い出してはいたんだけれども、本当に失踪していたんですね。

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2005年04月16日

「最後の物たちの国で」--ポール・オースター

「最後の物たちの国で」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸 白水Uブックス
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行方不明の兄を探しに行った国は
打ちひしがれた世界。
何に?
人々から少しずつうばわれてゆくもの。それは何?

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2005年04月10日

「沖縄の神さまから贈られた言葉」--照屋林助

「沖縄の神さまから贈られた言葉」
著:照屋林助 (構成:藤田正)
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Lucha Libre ShowのLucha?さんから教えていただいた本を読んだ。

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2005年03月24日

「ブログを続ける力」--GEODESIC編著

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「ブログを続ける力」--GEODESIC編著
出版:九天社
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ブログの力」に続く「ブログを続ける力」がでた。
ブログを続けることによって何が起こるのか?
僕ももうすぐ一年。でも、まだまだ一年。
その他のメディア。ホームページだって一般のひとが作り始めて10年近い歳月が経っている。僕のホームページはちょうど9年ですね。
それに比べたらブログはまだまだ赤ちゃん。でも、この赤ちゃんは成長が極めて早いようである。
最近ではブログから「電車男」のようなコンテンツが生まれるのではと期待している人も多いようだ。たしかに、そうかもしれない。物を書くという才能を認めてもらうには。ブログというのは実に面白いメディアだと思う。まあ、どうなるか、ですが、そうしたことも含めてこの「ブログを続ける力」は前回の「ブログの力」以上に示唆に富んだ内容になっている。
いわばこれはブログの文化論でしょうか。

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2005年03月20日

「アンダーグラウンド」--村上 春樹

「アンダーグラウンド」
著:村上 春樹 出版:講談社
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10年という歳月。

ここには、地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューがつづられている。
「災難」というには、あまりにも「理解」できない「被害」。
そんな「被害」に遭った人々の事を我々は「理解」する事が出来るのか?
誰も体験した事のない「傷」をおった人々に対するインタビューアー村上の姿。

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2005年03月18日

「カインド・オブ・ブルーの真実」--アシュリー・カーン

「カインド・オブ・ブルーの真実」
著:アシュリー・カーン 訳:中山浩子 監修:中山康樹
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マイルスの「カインド・オブ・ブルー」にまつわるドキュメント。
ポールチェンバースが出だしをなかなか合わせられずに何度も間違えたりして、スタジオで困っている様子など、そんな逸話も随所にちりばめられていて、読んでいてとても面白かった。
また、レコーディングの様子をとらえた写真や、当時のさまざまな資料も満載されている。資料的な価値の高い本だ。このレコーディングでマイルスのギャラがいくらだったのかまで書かれている。
カインド・オブ・ブルーを何度も聞いてきた方には、この本はとても興味深く読めるだろう。

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2005年03月16日

「大きな暮らしができる小さな家」--永田昌民、杉本薫

「大きな暮らしができる小さな家」
著:永田昌民、杉本薫 出版:オーエス出版
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家はそんなに大きくなくて良い。
狭小地住宅が雑誌の特集になるなど、小さい家への感心は高まっています。
小さな空間をより豊かにしてゆくことは、とても大切な事です。

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2005年03月15日

「オキナワの家」--伊礼智

「オキナワの家」
著:伊礼智 出版:インデックス・コミュニケーションズ
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くうねるところにすむところ-子どもたちに伝えたい家の本シリーズの第3巻。

子どもたちが家に出会うために、建築家、クリエーターが初めて子供の視線から家について語ります。

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2005年03月13日

「連戦連敗」--安藤忠雄

「連戦連敗」
著:安藤忠雄 東京大学出版会
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このブログで紹介する本は「クオリア」とかよく分からない本が多いので今回は建築家の書いた本。
ただ、茂木健一郎も読んでいたので気になったというのが正直なところ。
だいたい、日本人の建築家の書いた本で面白い本にめぐりあった事がない。これは、ちょっと不幸な事だと、自分でも思う。
しかし、この本は、面白かった。

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2005年03月07日

「木とつきあう智恵」--エルヴィン・トーマ

「木とつきあう智恵」
著:エルヴィン・トーマ 訳:宮下智恵子
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オーストリアで営林署員を務められ、現在、製材業(トーマ社)を営んでおられる、エルヴィン・トーマさんが1996年に書かれた本。
トーマさんは、冬期の新月の直前に伐採された木を使うということで有名だが、本書では、もっと基本的な、森と木材と人間の関係についてわかりやすく書かれている。

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2005年03月06日

「シュタイナー入門」---小杉英了

「シュタイナー入門」
著:小杉英了 ちくま新書
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茂木健一郎養老孟司の本を続けて読んでいます。
彼らは自らのことを唯物主義者だと言っています。
こういう時に僕は自分の中のバランスをとりたくなるのです。
つまり、唯物主義と反対のものを探します。
というわけで、シュタイナーについて書いてある入門書をみつけたのでした。

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2005年02月16日

「意識とは何か-(私)を生成する脳」---茂木健一郎

「意識とは何か---(私)を生成する脳」
著:茂木健一郎 ちくま新書
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僕らは意識しないで普段の生活をおくっている。
目の前の緑色の葉っぱがどうして緑色に見えるのかとか、そもそも僕らの眼がどうやってそれを知覚して、それが葉っぱであると断定できるのかとか、そんなことはまったく意識もしないで「目の前のもの」が「葉っぱ」であるといっている。
茂木健一郎はこれを「やさしい問題」と「むずかしい問題」というふうに分けて考える。

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2005年02月13日

「ふしぎな図書館」---村上春樹・佐々木マキ

「ふしぎな図書館」
著:村上春樹・絵:佐々木マキ 講談社
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1982年初出の「図書館奇譚」の改稿に佐々木マキが絵を添える。
とってもちっちゃい本。手のひらにのります。
ふにゃふにゃしているソフトなハードカバー。鮮やかなオレンジ色。
羊男も登場。1982年初出だから不思議ではない。
お話はともかく、大きさとか柔らかさとか、触覚にうったえる本ですね。
プレゼントなんかにもちょうどいいかも。
そう言えば、季節柄、チョコレートといっしょに包んで
大切な人に送るというのも良いかもしれませんね。

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2005年02月08日

「いちばん大事なこと」---養老孟司

「いちばん大事なこと—養老教授の環境論」
著:養老孟司 集英社新書
amazon

スルメを見て・・・」を読んで、<覚悟の人>養老孟司に興味を持った。
たくさんでている養老さんの本からこの本を選ぶ。
環境問題を正面から論じているのだ。経済と環境のことをちゃんと並べて論じてくれているのだ。そんな本は本当に少ないから、新書でそこのところをちゃんと論じてくれるこの本は貴重だ。
僕らが実践している「国産の杉材を使う」ということが直面している、経済と環境の問題もお日さまの元にさらしてくれる、そんな好書。

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「いちばん大事なこと」---養老孟司

「いちばん大事なこと—養老教授の環境論」
著:養老孟司 集英社新書
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スルメを見て・・・」を読んで、<覚悟の人>養老孟司に興味を持った。
たくさんでている養老さんの本からこの本を選ぶ。
環境問題を正面から論じているのだ。経済と環境のことをちゃんと並べて論じてくれているのだ。そんな本は本当に少ないから、新書でそこのところをちゃんと論じてくれるこの本は貴重だ。
僕らが実践している「国産の杉材を使う」ということが直面している、経済と環境の問題もお日さまの元にさらしてくれる、そんな好書。

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2005年01月30日

「スルメを見てイカがわかるか!」--養老孟司、茂木健一郎

「スルメを見てイカがわかるか!」
著:養老孟司、茂木健一郎 角川oneテーマ21
amazon

「スルメをみてイカがわかるか」とは、
死体を見て生きている人間のことがわかるか、ということで
死体=スルメ、生きた人間=イカとたとえて言ったこと。

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投稿者 furukawa_yasushi : 12:02 | コメント (2)

2005年01月29日

「サイバラ式」--西原理恵子

「サイバラ式」
著:西原理恵子 角川文庫
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af_blogの検索語句ランキングで「毎日かあさん」がトップの方に食い込んできています。
マティス展の時のマティス騒動とはわけがちがう。検索語句「マティス」は展覧会が終わったら、ランキングからはさっと消えてしまいました。
それにしても、ちょっと、意外な展開だが、西原理恵子-多くのファンを勝ち取った結果でしょう。
この「サイバラ式」は1992年初出の単行本だから、こんなにブレイクする前の西原理恵子の素顔がかいま見れるのが面白い。

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投稿者 furukawa_yasushi : 11:34

2005年01月27日

「心を生みだす脳のシステム」--茂木健一郎

「心を生みだす脳のシステム」
著:茂木健一郎 出版:NHKブックス
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「クオリア」の人、茂木健一郎の本を読んだ。
あまりにもたくさんの本がでているので、迷ってしまったが手ごろな価格で、それなりに詳しく書いてありそうなものということでこれを選んでみた。

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2005年01月24日

「ジャズの前衛と黒人たち」---植草甚一

「ジャズの前衛と黒人たち」
著:植草甚一 出版:昌文社 初版:1967年(現在絶版)
---ちなみに、僕の持ってるのは1974年の第19刷です。

この本を偶然に古本屋で見つけた大学生の頃、僕は植草甚一について、何も知りませんでした。
この本は「ジャズ」「前衛」「黒人」という言葉に魅かれて買った本です。
それを、引っ張り出してきて去年の暮から年を越して読み直してみました。
あたりまえなんだけれども、時間と空間を通り越して読み返すことの出来る「本」というのは、ほんとうに面白いですね。

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2004年12月26日

「炭焼紀行」--三宅岳

「炭焼紀行」
著:三宅岳 発行:創林社
定価:2800円+税 →amazon

三宅岳さんは山岳カメラマンです。
山登りのガイドブックなどもたくさん書いておられますから
「山岳カメラマン」と言うのが良いかと思うのですが、実は山岳写真にとどまらず
「山」を生活の糧にしている人々の姿をとらえた素晴らしい写真を撮られる方なのです。
だから、「山岳カメラマン」というよりも「山カメラマン」と言った方が良いかもしれませんね。
そして、この本は、三宅さんのライフワークとも言える
炭焼き職人さんの世界を10年にわたり追いかけてきた記録です。

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投稿者 furukawa_yasushi : 18:20 | コメント (2)

2004年12月22日

「猫にかまけて」--町田康

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「猫にかまけて」
著:町田康 出版:講談社
定価:1680円(税込み) → amazon

自分は猫が好きである。 どのくらい好きかというと、例えば往来をしていて、駐車中の車の下に猫がいるのを見つけたとする。と、もういけない。

本屋でタイトルにつられて手にしてみたらこんな言葉が1ページ目から出てきました。

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2004年12月20日

「僕の叔父さん網野善彦」--中沢新一

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「僕の叔父さん網野善彦」
著:中沢新一  集英社新書 (0269)
定価:698円  →amazon

1968年1月。佐世保港にアメリカの原子力空母エンタープライズが給油のために入港。
それを阻止せんと立ち上がる学生と労働者。機動隊との衝突。
機動隊に投げられる石、石、石。
テレビが報道するそんな映像から、「飛礫(つぶて)」についての中沢新一の父である中沢厚と網野善彦のやりとりが始まります。
彼らは何に向かって石を投げていたのでしょうか?

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投稿者 furukawa_yasushi : 19:39

2004年12月17日

「地球のはぐれ方」---東京するめクラブ

「地球のはぐれ方」
著:東京するめクラブ(村上春樹、都築響一、吉本由美)
出版:文藝春秋社 定価:2100円(税込み)
amazon

村上春樹と都築響一ということで購入。
こういう肩の力の抜けた本もたまには良いでしょう。

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2004年12月13日

「美術史とその言説」--宮川淳

「美術史とその言説」
著:宮川淳  出版:水声社  定価:3800円+税
amazon

宮川淳の最後の著書。
「絵画にとって近代とは何か」や「アンフォルメル以降」など、
重要な論文が納められています。

今回は、そのなかで「マティスと世紀末芸術」という論文についての覚え書き。

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2004年12月08日

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」--J.D.サリンジャー(村上春樹:訳)

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」
著:J.D.サリンジャー  訳:村上春樹
出版:白水社  定価:1680円(税込み)
→amazoneで詳しくみる

この本を読み終えたあとの言い様のない不安感。
あれはいったいなんだったんだろうか?
ジョン・レノンの命日(日付で)に覚え書き。

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2004年11月25日

「翻訳夜話」--村上春樹・柴田元幸

「翻訳夜話」
著:村上春樹・柴田元幸
文春新書  定価:740円+税
→amazonで詳しく見る

翻訳という作業について村上春樹と柴田元幸が行った、
三つのワークショップの記録に
レイモンド・カヴァーとポール・オースターの短編小説を
両者が訳したテキスト(+原文)を加えて一緒にした本です。
以前のエントリー三浦雅士の「村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ」で、
「翻訳」という作業に強い関心をもち、「住宅設計」との類似性について考えたことを書きました。
そこで、「翻訳」というキーワードを、「住宅設計」に関連させて
もっと掘り下げてみようと思いこの本を読んでみました。

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2004年11月15日

「ミスター・ヴァーティゴ」--ポール・オースター

「ミスター・ヴァーティゴ」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸
出版社:新潮社 ISBN:4105217070 定価:2520円(税込み)

この本を読み終えて
僕はとても嬉しくなった。
「物語の力」がこれほどまでにパワフル全開で僕を満たしてくれたなんて
いままでなかったからだ。

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2004年11月12日

「風の帰る場所」--宮崎駿

風の帰る場所—ナウシカから千尋までの軌跡
著:宮崎駿  聞き手:渋谷陽一
出版:ロッキング・オン  定価:1600円(税別)

「風の谷のナウシカ」は映画で観て、好きだけれども
ちょっと気恥ずかしい感じがしていた。
コミック版を読んで、こりゃあえらいマンガ読んじゃったなあ、と正直に思った。
「魔女の宅急便」も「紅の豚」も映画館に行った。
でも、今のように「宮崎駿を絶対に支持します!」とは言えなかった。
すべて、この本を読んでからです。

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2004年11月11日

「泥まみれの虎—宮崎駿の妄想ノート」--宮崎駿

「泥まみれの虎—宮崎駿の妄想ノート」
著:宮崎駿 
出版:大日本絵画   ISBN: 4499227909  定価:2625円(税込み)

「ハウルの動く城」の公開がせまった宮崎駿が描く戦争。

「泥まみれの虎」とはオットー・カリウス指揮するタイガー1型戦車
第二次大戦、エストニア、ナルヴァ戦線。1944年3月。

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2004年11月08日

「村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ」--三浦雅士

「村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ」
著:三浦雅士
ISBN:4-403-21080-5  出版:株式会社新書館  定価:1800円(税別)

「もうひとつのアメリカ」とは
アメリカ現代文学が描いている「もうひとつのアメリカ」のこと。
でも、この本はそれだけじゃあない。
村上春樹論であり、翻訳論、現代アメリカ論でもあるのです。

そして、僕の中では「住宅設計論」ともかさなってくるのです。
(なんだ、それは?)

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2004年11月05日

「ポートレイト・イン・ジャズ」--和田誠、村上春樹

「ポートレイト・イン・ジャズ」
著:和田誠、村上春樹
ISBN:4-10-353407-9  出版:新潮社 定価:2500円(税抜き)

僕はジャズが好きだ。結構聴いている。
でも、まんべんなく聴いているわけではない。とても、かたよりがある。
この本には、26人のジャズミュージシャンが登場する。
知っている名前もあるし、相当に聴き込んだ人もいる。
一方、全然縁のなかった人の名前もいる。
なかでもビリー・ホリデイ。
僕はこれまでほとんど聴いていなかった。

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2004年11月01日

「ブログの力」--GEODESIC 編著

「ブログの力」--Blogの可能性に気づいたユーザーたち
編著: GEODESIC
ISBN:4861670217   出版: 九天社    定価:1,600-円(+税)

あたらしいブログの本が出ました。
僕がブログを始める直接のきっかけになった
秋山さんのブログ「aki's STOCKTAKING」
GEODESICの栗田さん「CHRONOFILE」をふたつの中心とする不思議な本です。
不思議な本だけれども、いまのブログを取り巻く状況を
とてもわかりやすく網羅し描ききっている、と思います。
ブログとは何か?という先の見えない答えへの
この本はもっとも良き近道だと思います。

僕のこのブログも末席で紹介していただいています。(感謝!)

専用ブログもできています。
ブログの力

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2004年10月05日

「住み家殺人事件」--松山巌

「住み家殺人事件」 松山巌著
みすす書房 ISBN4-622-07089-8 定価 2100円(税込み)

古今東西、老若男女、縦横無尽・・・・・
殺人事件とはいってもミステリーではないのであります。
現代社会に ま正面から取り組んだ建築論なのであります。

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2004年09月16日

「アフターダーク」--村上春樹

「アフターダーク」 村上春樹 著
講談社 ISBN 4-06-212536-6 定価 1400円(税別)

そして、ぼくは本を閉じ、その余韻に身を預ける。
こんなに美しいラストシーンは見たことがない。
さまざまなイメージが重なり合い
僕らは最後に美しいラストシーンと出会う。
(注意--本文引用多数あり)

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2004年09月04日

「「自分の木」の下で」--大江健三郎

「「自分の木」の下で」  大江健三郎 著
朝日新聞社  ISBN4-02-257639-1  定価 1200円+税

大江健三郎が初めて子供たちの為に書いたエッセイ。
ただし、この本がもっているメッセージは
子供だけに向けられてはいません。
本書のなかで大江さんが言っているように
「大人の自分の中に子供の時の自分がずっとつながっている」ということが
この本を通しての通奏低音になっています。

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2004年08月30日

「治療塔」--大江健三郎

「治療塔」 大江健三郎 著
岩波書店 ISBN4-00-001360-2 定価 1300円(税抜)

「へるめす」という雑誌があった。
僕が大学生の時だから、いまから20年ほど前になる。

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投稿者 furukawa_yasushi : 12:05

2004年08月05日

「Be-h@usの本」--秋山東一

「Be-h@usの本」 秋山東一 著  ジオデシック 監修
株式会社 九天社 発行  ISBN4-86167-008-X
定価(本体3000円+税)

Be-h@usとはなにか?。
それは建築家秋山東一氏が多くの仲間とつくりあげたシステム住宅のことであるとともに、
インターネットを介して発展し続ける
本来の意味で、住まい手のための家づくりのシステムであるのだ。

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2004年07月07日

「少年カフカ」-村上春樹

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「少年カフカ」 村上春樹編集長
新潮社 定価:950円(税別) ISBN4-10-353415-X
amazon

とにかく、「海辺のカフカ」をめぐる、ぼうだいな文字がここにはある。

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2004年06月24日

「原発はなぜ危険か」-田中三彦

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「原発はなぜ危険か」
田中三彦 著 岩波新書新赤版 660円+税
ISBN4-00-430102-5

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2004年06月20日

「建築はほほえむ」-松山巌

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松山巌 著
西田書店 ISBN4-88866-385-9
定価:1300円+税

書かれている言葉の一つ一つが
スポンジが水を吸い込むみたいに吸い込まれる。
どこに?
そんな本はずいぶんと久しぶり。
言葉たちはどこに吸い込まれたのか・・・・。

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2004年06月10日

「樹海--夢、森に降りつむ」-高橋延清

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高橋延清 著 世界文化社-ISBN4-418-99529

「どろ亀さん」こと高橋延清さんの本を初めて読んだ。

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2004年04月09日

「毎日かあさん」-西原理恵子

「毎日かあさん」
著:西原理恵子 発行:毎日新聞社
amazon

「毎日かあさん」というのは毎日新聞に毎週火曜日連載の漫画だ。
西原理恵子の独特な視点が、家族というものを描き出す。

とても人気があるようで、単行本になった知らせを聞いて家内もさっそく買ってきていた。何気なくテーブルにおいてあったので、読んでみる。

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2004年04月06日

「沈黙の春」-レイチェル・カーソン

「沈黙の春」
著:レイチェル・カーソン 発行:新潮社
amazon

レイチェル・カーソンの有名なこの本は、とても恐ろしい。農薬が恐ろしいと言うのはもちろんだが、この本が書かれた1962年から40年以上経った今でも、その恐ろしさがそのまま残っていると言う、そういう恐ろしさ。
ホームページの書評から転載する。

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「我輩は施主である」-赤瀬川原平

「我輩は施主である」
著:赤瀬川原平 発行:読売新聞社
amazon

赤瀬川原平。僕の大学の先輩、といっても面識があるわけではない。
その人の自邸は、屋根の上にニラが生えている。
そんな自邸づくり奮闘記がこの本だ。
ホームページに載せていた書評から転載する。

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「火車」-宮部みゆき

「火車」
著:宮部みゆき 新潮文庫
amazon

宮部みゆき。面白い小説を書く人。だいたいこういうのは、家内からの受け売りに始まって、僕の方がのめり込んでしまうケースが多いのだが、この宮部みゆきも例外ではない。
現代物のサスペンスは、ほとんどすべて読んでしまった。
これは、彼女の代表作「火車」を読んでの感想。ホームページに載せていたものを転載する。

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投稿者 furukawa_yasushi : 19:30

「新築物語」-清水義範

「新築物語」
著:清水義範 発行:角川書店
amazon

清水義範。軽快で、ちょっとしゃれていて、なかなか巧みな文章で、時々日本語を考えさせられる。そんな文章を書く。うちの家内が好きなのだが、僕も負けずに好きだ(!)、といっておきたい。
その清水さんが家をつくる話を書いたのがこの本だ。ホームページに載せていた書評から転載する。

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「建てどき」-藤原和博

「建てどき」
著:藤原和博 発行:情報センター出版局
amazon

著者である藤原和博さんは「よのなか」とか面白い本を書かれている。
このエッセイの原文はホームページにずいぶん前に載せたのだけれども、
ある日、藤原さんから直接メールをいただいた。私のような個人が勝手に書いた書評に本人からメッセージが届くとは!これぞ、インターネットである。
というわけで、ホームページの書評をblogに転載する。

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