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2006年08月16日

「日本沈没」

[映画・ドラマ・舞台--movie/play ]

1973年、9歳の僕は、父に連れられ
いよいよ公開が始まった「日本沈没」を見に映画館に足を運んだ。
その時のことは、いまでも、脳裏に鮮明に焼き付いている。

当時の僕の頭の中は「日本沈没」一色だった。
何で、そんなに夢中になっていたのか、いま思うとよくわからないけれども
そのスペクタクルに魅了されていたことだけは確かだ。

そして、映画を見終わった僕の心の中には
ラストシーンの、総理を演じていた丹波哲郎が
日本と心中する決意を語るところが、あまりにも印象深く刻まれた。

「日本と心中する。」

あまりにも常軌を逸していて、滑稽とも受け取れるであろうその言葉は
小学生だった僕にとっては、笑うことも出来ない不思議な言葉として、いまでも宙に浮かんだように存在している。

そして、日本は沈み、日本人は故郷を失い世界に散って行く。

実は、小松左京の原作を読んではいない。
原作はどうなんだろう。
今回のリメイク版を見て、まずそのことを思った。

小松左京は、あるインタビューで
「日本沈没」は、本当はその先にある、故郷を失った日本人が世界でどのように生きてゆくかを描きたいがために書いたのだと語っていた。それは、「日本沈没 第二部」となるだろうと、その時すでに言っていた。
その第二部も、最近、共著という形で刊行された。
こうなると、この第二部も気になる。


それにしても、昨年の「宇宙戦争」といい、もうあきらかにB級映画だってわかっているのに
こういうの、観に行ってしまうんですよね。

やはり、僕の頭の中には
前作での総理の言葉が残っていたんだと思う。
それがリメイク版でどのように描かれているのか、とても気になっていたのだ。

<以下、映画の内容にふれます>

日本の沈没を最初に予言したのがアメリカの研究者だったということに
それはもう、映画が始まった直後からびっくりさせられるが
この映画には、びっくりが一杯ありすぎて、こまったものだ。
なんと言っても、一番びっくりなのは
日本が沈まなかった、ということ。
(正確に言うと半分くらいは沈みます)
それが、小野寺の死を伴った活躍によるということ。

日本を海の底に引きずり込もうとしているマントル対流を破壊するために
深海で爆薬を仕掛ける作戦を決行するが
その作業で小野寺は命を落とす。

これでは、アルマゲドンではないか。

というような、三回ひっくり返っても、戻ってきてしまうくらいの仰天映画なのであった。

が、

経済的な力を失った日本の国の人々を世界が受け入れてくれるかどうかと苦悶する政府。
日本の沈没が明らかになったとき、日本系企業の株価が暴落するという話。
沈没が進行して、アメリカが日本国債を売りに出すということ。
「アメリカは日本を見捨てたのよ」というセリフ。
そして、その直後のシーンで、六本木ヒルズが地震で崩壊してゆくのですね。

やはり、この映画、B級映画、仰天映画だとしても
日本人や日本という国のアイデンティティを、
根底から問うテーマがはっきりとあります。
(国がなくなっちゃうんですからあたりまえですが)
ですから、仰天されながらも、ご覧になられることをお勧めします。

さらに映画を見て気がついたことなど。

人々が避難するシーンは、リアカーに家財道具を載せて自衛隊員に誘導されていますが
これは、初代ゴジラの時から50年以上も変わっていないのだなということ。

特殊撮影がすごいなあと思いました。CGもすごいのですがCGに頼りきっていないのが良い。
最後のクレジットでマッドペインターの名前がたくさん出てきていたので
この辺、手間のかけるところが違うのだなと思いました。

「日本沈没」公式HP

   


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2006年08月16日 09:40

コメント

日本沈没はまだ見ていませんが、先日、レンタルDVDで「宇宙戦争」を見ました。
結末はわかっているのですが、なぜか夏になるとこういったB級映画が見たくなりますね。

投稿者 カーク : 2006年08月16日 10:42

カークさん
宇宙戦争みられましたか。いやああ、B級ですよね。
お金かけてやっているB級は、なんかこう、そそられるものがあります。
で、みちゃう。ははははは。

それにしても、カークさんが撮られているマリオンの広告ですが
http://dragon-tips.cocolog-nifty.com/kphoto2/2006/08/83_7416.html
すごいですねえ。実物を見てみたいのですが、なかなか有楽町まで足が伸びませんです。

投稿者 fuRu : 2006年08月16日 14:05

fuRuさん どうもです、そのマリオンの広告なのですが
先日、再び下を通ったので見上げて見ましたが、もうありませんでした。
どうやら沈没は免れた様ですね(汗)。

投稿者 カーク : 2006年08月16日 14:18

なんと!
すばやい撤収ですね。
ちょっと、残念、かな?

投稿者 fuRu : 2006年08月16日 14:34

僕も「日本沈没」を見ました。
感想を書こうと思っていたのですが、fuRuさんの記事を読み、
殆ど僕と同じなので!!、もうこれは書かずに読むだけでいいや(笑)と、
思い至りました。
原作の方は、初回映画が最も近かったように思います。

B級は夏の映画鑑賞に合っているように思えます。
(冬により寒くなりたくないですし)

投稿者 Amehare : 2006年08月16日 14:34

Amehare さん こんにちは。
メタセコイヤや朝顔の話など興味深く拝読させていただいております。
そうですか。観られましたか。
てへへ、ですよね。
僕なんかは、いつ沈没するんだ、もう上映時間はないぞ、などとあせってみていたら
なんと、沈没しないではないですか。
これには驚きました。
小松左京の第二部へのつなぎとしては
国民のほとんどが外国に避難したという前置きにはなっていたので
これはこれで成立していたのかなと思います。
でも、Amehare さんの記事も読んでみたので是非書いてください。

投稿者 fuRu : 2006年08月16日 14:39