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2007年03月12日

「サイダーハウス・ルール」---ジョン・アーヴィング

[books ]

「サイダーハウス・ルール」
著:ジョン・アーヴィング 訳:真野 明裕 文春文庫
amazon(上下巻あり)

アーヴィングの小説の中では、一番長いかもしれませんね。
文庫本、上下巻であわせて1000頁強。
冒頭からしばらく続く医学的な描写には読書を続行する気力をそぐものがありますが、それを乗り越えれば、その医学的な描写が最後の最後までちゃんと響いてくれていることが、ほっかりと暖かい毛布にくるまるように受け入れられるように、心の中のちょっとした隙間におさまってくれる、というわけです。
<以下、小説の内容にふれます>

小説のテーマの核は人工中絶です。
望まれないで受精したものたちの運命です。
主人公のホーマーも、望まれないで生を受けた者。
孤児院で暮らす。

孤児院はひとつの大きな運命共同体。

国、町・・・・コミュニティ。

コミュニティにはルールが必要です。

りんご園と、そこにやってくる季節労働者の集団。
彼らにもルールがあります。

運命共同体の最小単位は家族。
家族を成り立たせるセックスと受精。
家族を成り立たせない人工中絶。

その家族は、かつての強い結びつきをもったものとしては機能しなくなり
結びつき方は、ゆったりと、やわらかくなったのだと思います。
そして、これを家族の崩壊という人もいます。

家族崩壊後の人と人のつながり。
これこそ、アーヴィングの小説に共通しているテーマではないでしょうか。

その問いかけに、著者の想像力は創造力となって我々に希有な世界を提示してくれます。

私が、アーヴィングの小説を読み、大きく心動かされるのは
そして、アーヴィングの小説の魅力とは
そこに家族崩壊後の人と人とのつながりを前向きに描いているからに他ならないのですね。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年03月12日 18:20

コメント

映画もなかなか秀作でしたよ。本も長いけど一気に読めますね、
でもこの文庫版の帯のキャッチはおかしいですね。

投稿者 カーク : 2007年03月17日 13:04

カークさま
読んでおられましたか。
私は、映画は本を読んでから、と思って、まだ見ていません。
評判の映画だから、結構楽しみにしているんですよ。
ところで、私は、この本、一気には読めませんでした。
通勤電車の行き帰り、片道20-30頁ずつ、ゆっくりと読みました。

>帯のキャッチはおかしいですね
この小説を読んだ人が書いたとは思えませんね。
はずれまくりも良いところ、ですね。(^^;)

投稿者 fuRu : 2007年03月17日 15:13