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1963年の「GETZ/GILBERTO」の大ヒットで、当時の世の中はボサノバであふれかえっていたと思う。
ただ、きっと、その時代には、ボサノバブームに便乗しただけの安易なレコードも大量に作られたに違いなく、そういう安易さは今のこの時代でもまったく変わらない世の中の常なのだけれども、それらの大量のレコードは、今では誰の目にもとまらずそのまま姿を消してゆくのだろう。
その中にあって、このレコードは今もなお光り輝いている一陣の風のごとく、我らの目の前を心地よく吹き抜けてゆく。
ただ、あまりにも語られることの少ない、この素晴らしいレコードについて思いをめぐらせると、語られると言うこと、つまりは歴史に名を留めるということの大きな偏りも感じてしまう。
なによりも、ジャズの歴史はColtraneに偏りすぎて語られているのではという、強い猜疑心。そこから振り返って、このような素晴らしい演奏を耳にしたときに、Coltraneの作り上げた世界の方が、ずーっと異端な世界だったのであろうことが容易に察しがつく。
Coltraneのことは今しばらく忘れよう。もうひとつのジャズの世界に耳を澄ませよう。そこには素晴らしい世界が待っている。

Paul Desmond と Jim Hallが1960年代前半に作り上げた世界は、もっともっと語られてしかるべき素晴らしい世界だ。
Jim Hallが大きくフィーチャーされている「Easy Living」も良いし
オーケストラをバックにした「Desmond Blue」も味がある。
どれもおすすめ。