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2007年08月20日

二間続きの和室

[a-家づくりについて---house_making ]

実家が上越市から長岡市に移って
夏の帰省は長岡の花火大会(8月2日、3日)に合わせていたために
今年のようにお盆の頃に帰省したのは久しぶりでした。

お盆といえばお墓参り。
この冬に亡くなられたおじさんのお墓に
そして、母方の祖父母のお墓にと お参りをしてきました。

お盆に帰省するのも久しぶりなら新潟のお墓参りも久しぶりです。

母方の祖父母のお墓は実家の敷地の中にあります。
お墓の前には池があり、錦鯉が泳いでいます。
最初にお墓参りをした記憶、確か小学生の頃でしょうか。
それからもう何十年もその風景は変わっていません。

母方の実家は叔父が継ぎ、新しい家に建て替えました。
もう十年以上も前の事です。
気に入った大工を見付けてきて伯父の普請でつくられた家には
二間続きの和室があります。
八帖二間に広縁がついて、その向こうには小川が流れて杉木立が見える。
叔父には子供がいませんから奥さんと二人暮らしです。
二人暮らしに八帖二間続きの和室なんていらないのではないかと
ずいぶんと話し合われたようですが、どうしてもという叔父の気持ちが強く実現したようです。

田舎の家というと変ですが、家には二間続きの部屋がおおよそ必ずあった様に思います。
特に、母方の実家ですから本家であり
本家には二間続きの和室(お座敷)は無くてはならないもの。
それは、ひとえに親戚縁者が集まって行われる法事のための場所。
もちろん、お葬式もお通夜もここで行われます。

私が生まれ育った家も、町家で一階がお店でしたが
二階に上がると二間続きの和室がありました。

父母の考えでは、二間続きの和室がなくては
息子たちの結婚式も挙げられないではないかという事だったようで
実際に兄の結婚式ではこのお座敷に花嫁さんをお迎えしました。

さて、実家でのお墓参りの後には恒例のバーベキュー大会があります。

ビールも冷たく冷えています。
ここは、わーい、と大はしゃぎのところですが
夜には長岡に戻らねばならないということで、
せっかく用意してくださったよく冷えたビールなのに
少々セーブしていただくことになりました。
でも、炎天下で飲むビールは美味しいですねえ。

そして、美味しい焼き肉でおなかも膨れたころ、ビールの酔いを覚まそうと
一人家の中に入って、昼寝をさせてもらいました。

実は、二間続きの和室で昼寝をしてみたいという思いが最近ずっとあったんですね。
ひょっとして、母方の実家に遊びに来たのは
お座敷で昼寝をするためだったのかもしれません。

二間続きのお座敷にはよく風が通り、とても涼しい。
快適なお昼寝。

不思議なものです、なんだか身体がのびてゆく感じ。
それとともに、身体のなかの何かが目を覚ましたようです。

学生時代の設計の課題で
壁がまったくなくて、部屋と部屋を仕切るのはすべて建具という家を設計した事があります。
同級生には、昔の木造の学校のようだと言われましたが
私の中にはきっと、二間続きのお座敷があって、それが自然に出てきてしまったのではないかと思っています。

壁は壊さないと開けられません。
でも建具ならば、開けたいと思った時にいつでも開ける事が出来ます。
建具を外せば、一つの部屋にもなります。
建具は、その向こう側を隠しているようで隠していない不思議な装置ですね。
建具でしきられた空間は、「建具の向こうには何がある?」と、
意識が少しだけそちらに向かっているという不思議な空間です。

二間続きの和室が持っている空間の不思議な力は、そういうところに所以しているのではないかと思います。

生まれ故郷を離れて兄が長岡に建てた家には
二間続きのお座敷はありません。
冷暖房に効率的なようにすべての部屋は個室になっています。
襖の向こうにはなにがある?という、そんな気持ちをはどこにもありません。

家が出来た時、父と母は、最近の家はそういうものかと
少しだけ感じた違和感を隠しきれないようでした。

二間続きのお座敷なんて
無駄な空間かもしれません。
家の中から冠婚葬祭がはぎ取られてしまった結果
家は家族だけのものになって閉じてゆきます。
家族だけが使う機能だけ残ってしまったのが今の家かもしれません。

そういえば、母の実家の二間続きの座敷にはお仏壇があり
祖父母の遺影がありました。
私は、祖父母の遺影に見守られながら夏の午後の一睡を楽しんでいたのですね。
昼寝をしていて私の身体がのびたように感じたのは
祖父母が見守ってくれていた安心感によるのかもしれません。

亡くなった人と出会う場所が家には必要なのかもしれないと思いました。
二間続きの和室が無い家に感じる違和感は
そういうところから沸き起こっているのかもしれません。
昔の人は家に必要なものをいろいろ考えていたのだと思います。


さて、最初の写真は
昨年完成したaiko_Houseです。
平屋の家ですが、部屋と部屋を建具で仕切り
開けたり閉めたりで、ゆるくやわらかくつながっているように考えました。

今思えば、こうしたアイデアも二間続きの和室から湧いて出てきたのではないかと思います。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年08月20日 10:30

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コメント

何とまあ気持ちと風通しのよさそうなお部屋ですこと
ここでお昼寝したい!

投稿者 iwaki : 2007年08月20日 20:43

iwaki さま
コメントありがとうございます。
そうですねえ、昼寝をしたら気持ちの良い家というのは一つの究極の目標ですね。
アコーディオンがよく響く家というのも良いですけれどもね。σ(^_^;)

投稿者 fuRu : 2007年08月21日 10:33