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2007年10月25日

「良い町」の条件

[いろいろ--misc. ]

昨夜は武蔵野美術大学の公開講座
「<時代>わが町の風景」に行ってきました。
嵐山光三郎さんが、同じく国立に住むムサ美の教授でもある小泉誠さんと
国立の町について語り合います。

講座は面白かった話ばかりですが
まずは嵐山さんが言っていた「良い町」の条件です。

1、川が流れている
2、街並みが美しい 町のバランス(トタン屋根のバランス)
3、木と花 緑がある
4、役人 市長が良い 行政が良い
5、学校が多い
6、まつりがある
7、若者の力 長老の存在 おばさんの存在

なるほどと思いました。

さらに、豆腐屋がつぶれないのが良い町だ、と言う話も面白かったですね。
つまりは、個人営業の豆腐屋さんというのは、朝早くから仕事をして大変な労働なのに商売の単価は安くて、これでは絶対にもうからないわけです。それでも、もうけはなくても仕事を続けているのは、町の人に感謝されるからだというんですね。感謝の気持ちで人と人をつなげている仕事。その町に住む人たちの連帯感がなくては、成り立たない仕事が豆腐屋さんなんです。
実は銀座にも豆腐屋さんがあって、銀座で働くOLさんたちが帰りがけに買ってゆく。銀座はちゃんと生きている町だと言っていました。

一方で、嵐山さんはこんなことも言っていました。
東京の良さは、薄情なところ。でも、人情がないわけではない。
たとえば、神楽坂で、ちょっと店先に置いてあった自転車を貸して欲しいと言うと、気前よく貸してくれる。それで、返しに行っても、どこに行ったのだとか、何に使ったのだとか詮索されない。程よい距離を持った関係がある。大阪や地方ではこうは行かない、と言うのですね。
面白かったです。

また、町づくりにはスターが必要だということを小泉さんが言うと
この講座の後で座談会をする椎名誠の例を取り上げて、椎名誠が売れるとその周辺も全部売れる。赤瀬川源平さんの例も出して、赤瀬川さんが売れるとそのまわりもみんな売れる。スターは、出るところから出るが出ないところからは出ない。スターを生む状況や気運と言うものがあって、それは万人に公平に与えられているわけではない、という事を言っていました。
これもまた面白いですね。
逆に、運動のないところからは何もうまれないとも言っていました。嵐山さんは65歳。少し若い、58歳から62歳くらいの団塊の世代が運動を起こせないのだと、ちょと否定的に言っていました。

最後に、嵐山さんが国立で考えている「朝顔の小道」の話が面白かったです。
朝顔市というのが国立で有名になっていますが、朝顔は鉢植えではあまり大きくならないのに地面に植えると屋根まで届くように大きくなります。
一軒の家の前に朝顔を植えてどんどん大きくすると、終いには屋根まで達して次には隣の家に伸びてゆきます。そこで、隣同士の関係がよければ、隣から伸びてきた朝顔を切ったりはしないでそのまま受け入れてくれるはずです。そういう町が出来て、一本の道が朝顔の花で覆われたらなんて素敵なんでしょう。
良いですね。国立に限らず、そんな町が日本のあちこちでうまれてくれる事を願うばかりです。

<蛇足>
武蔵野美術大学の公開講座は毎年行われていて
今年も4回行われます。会場は新宿センタービルの9階にある武蔵野美術大学の「新宿サテライト」。
昨夜のは第2回目。
第3回目は 11月14日 テーマは<建築>で中村好文さん、松家仁之さん、松家克さんがゲストです。
第4回目は 11月21日 テーマは<アート>で赤瀬川原平さんと内田あぐりさんがゲストです。

第3回はまだ余裕があるかもしれませんが、第4回は満員御礼で余った席が出たときに抽選というような感じだそうです。
ちなみに、各回すべて無料です。

武蔵野美術大学公開講座


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年10月25日 11:45

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コメント

FuRuさん、こんにちは
嵐山さんの講演には興味がありました。それに吉祥寺に次いで縁も深く好きな国立でしたから。
僕が高校に通っていた頃、大学通りでは馬に乗って散歩する人もいたし、芝生の上に出たばかりのコルトの新車を展示していた平屋の素敵な三菱自動車もありました。ハッピーエンドや頭脳警察が一橋の前の歩道で演奏していて、講堂では山下洋輔が鍵盤を血だらけにしてデビューでした。朝顔の小道は知らないけど、文化のにおいはひどく濃い街でした。良い街の条件No.8は文化、あるいはいい喫茶店がある....

投稿者 shin : 2007年10月25日 14:24

shin さま
嵐山さんは吉祥寺も良い町だといっていました。
確かに、緑は多いし川というか池があって学校も多い。
嵐山さんは国立も死に始めていると言っていました。
それは、戸建て住宅が相続の関係でワンルームアパートにどんどん変貌しているためです。数年ごとに人の入れ替わりのある住まいでは人と人のつながりも生まれないし、つまりは町は出来ませんよね。
そう考えたら、東京ほど一人暮らしが多い町って、世界にあるんだろうかと思い至りました。

投稿者 fuRu : 2007年10月25日 15:43

furuさん、こんばんは、
私もかつて国立に住んでいましたが、数年前に国立を再び訪れて一番ショックだったのは、富士見通りにあった名曲喫茶ジュピターが消えていたことでした。喫茶店に限りませんが、たまたまお店で一緒になった人同士が自然に会話できる、こういう人と人のつながりも少なくなったような・・・。

投稿者 じんた堂 : 2007年10月25日 23:22

じんた堂 さま
国立つながりですね。
私も北口とはいえ、最寄り駅が国立だった時期が3年ほどありましたから、南口の邪宗門とか、喫茶店には時々行っていました。国立は良い喫茶店があるなあと、それは神田神保町と規模の上では違いますが質としては同じかそれ以上の濃密な喫茶店空間があったかと思います。
それも、やはり良い町の条件なんだなあと、失い始めて思うわけですね。それでは遅いのですが。

投稿者 fuRu : 2007年10月26日 01:37

国立というと、私などはマンション訴訟を思い出します。
景観を大切にしてきた町というイメージですね。
ところで、この「良い町」の条件とは、すべての町にあてはまるような一
般性をもった条件のことですね。人が暮らすにあたって、この点がちゃんと
していると暮らしが豊かになる、という条件かな。なにげなく暮らしている
と自覚しませんが、そのことに多くの人びとが自覚的になっていくと、ある
種の社会的な力になるように思います。それに加えて、個々の町にとって
も「良い条件」っていうのがあると思います。背景や歴史がそれぞれ違いま
すからね。大津の町でも、「大津の幸せの物差し」というのを考えていきた
いと思っています。

投稿者 わきた・けんいち : 2007年10月29日 09:53

わきた・けんいち さま
「大津の幸せの物差し」・・・・
ロマンティックですね。私はそういうロマン、大好きです。
この記事で箇条書きにした「良い町の条件」というのは
嵐山さんの言葉では、もっと奥深い味わい深いものでした。
これは、私の力では記事にすることは難しいと、箇条書きにしてしまったわけです。
自分の力の無さを恥じるばかりですが
わきたさんの「大津の幸せの物差しカフェ(勝手に名前を付けている)」にお邪魔して良い町について語り合いたいですね。
ちなみに、良い町の条件で「まつりがある」というのがありますが、これは神様と人々が一体になる、人と人をつなげる「まつり」です。人と人が集まって住むということに「信仰」があるということなんでしょうね。
昨日まで静岡に行っていたのですが、そこで見せていただいたお宅にはちゃんと神様が居心地良い感じでおられましたよ。そういうのって、やっぱり良いですね。

投稿者 fuRu : 2007年10月29日 11:36

建築的に「よい町」、、、というのは
生活感が表出していて、それでいてきれい、、、ではないかと思っています。
単に美しい、カッコイイ建物が並んでいてもいい町並みだとは思えません。
感じよい生活感の連鎖がいい町並みなんでしょうね。

連鎖を生むためにどうしたらいいか?、、、
活動、運動、コンセンサス、、、とにかく、その町でエゴを超えた自分の価値を具現化してみる事なんでしょうか?
自然とリーダーが出てくるように思います。

投稿者 伊礼智 : 2007年10月29日 18:35

伊礼智さま
嵐山さんは六本木ヒルズを完全否定していました。
あの建物は人と人をつながないどころか、そこにあった人と人のつながりを完全に壊してしまった、というようなことなんですが、建築を考え作る側に大きな問題提起をしていると思います。経済性優先でのモノづくりは人間性を破壊してしまうということへの危機感です。人間あってのモノだったはずが、人間がモノに支配されるようになったことへの断固たる拒否です。我々町場の設計者も、一軒の家を造るところから町に参加し、人と人をつなぐようなヴィジョンをもつ事の大切さ、そして、それをやわらかく形にしてゆくだけの力を持つ事が必要なんですね。

>とにかく、その町でエゴを超えた自分の価値を具現化してみる事
まさに一人一人の気持ちがそこで重なれば町はおのずと出来てゆくのだと思いますし、その後押しの、ちょっとしたお手伝いが我々設計者には出来るのではと思っています。

投稿者 fuRu : 2007年10月29日 18:47