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2009年03月03日

BRAD MEHLDAU TRIO @ SuntoryHall

[ジャズ--jazz ]

090303-brad-mehldau.jpg

~音楽の大きさと建築の大きさ~
予定の開演時間を7分過ぎて彼らの演奏は始まりました。
久しぶりのサントリーホールです。
前回は、マーラーの6番。
数え切れないほどの楽団員が奏でる音の渦。
マーラーを生で聴くという体験は他に代えがたい力を持ってると感じました。
そして、今日の演奏。
ジャズの編成では「最小限で最大の効果」といわれるピアノトリオ。
ステージには三人だけです。
ところが、彼らの演奏は
以前にマーラーを聞いた時のように大きく私の前に存在していたのです。
巨大な、巨人のような音楽。音の渦。
演奏から現れたその大きさに私はひたすら感動していました。
数え切れない楽団員で奏でる巨大さと、たった三人で奏でる巨大さは、そしてまったく同じものなのです。

私は建築の設計をやっておりますので
いつも大きさについて考えています。
人が暮らす大きさと、その生活に必要なモノを置いたり仕舞ったりする大きさ。
この大きさは、物理的な大きさとして最終的に実現するのが我々の仕事です。
このときに大きさを考えるとは
アイデアを生かして限られたスペースに効率よくモノを収納することもそうですし
生活の動きに無駄がないようにさまざまな機能を配置することもそうです。
こうしたことは大変機能的なことで、とても大切なことですが、機能的な大きさに加えて感覚的な大きさも考えることが重要です。
物理的に同じ広さの部屋でも、窓の配置ひとつで広くも狭くも感じるように作ることができます。同じ広さの部屋でも、天井の高さを一部高くしたりとアレンジすることで広くも狭くも感じさせることができます。
これが実は設計の妙です。設計の味わいです。感覚的な大きさを自在に操っている場合には、設計が上手だなと思います。
吉田五十八さんの猪俣邸は世田谷区が管理していてほぼいつでも見ることができますが、猪俣邸は感覚的な大きさを自在に操っており、さすがだなと深く感動します。

さて、建築の話になってしまいましたが、今日聞いてきたメルドーのピアノトリオは、まさしく音楽の大きさを自在に操った演奏でした。恐ろしいほどの技術が必要とされるのは、素人の私が聞いていても明らかですが、技術を技術として見せびらかすのではなくて、聴く人に広がりとか悲しみとか楽しさとか果敢なさとか、そういうことを強く弱く強く弱く表現するための技術であり、その表現したいものがまったくぶれていないことが、三人の演奏をさらに大きなものにしていると感じました。

音楽の大きさとは音の大きさではありません。
決められた時間にたくさんの音を美しくちりばめる。強くたたく、弱くたたく。転調につぐ転調。その変化の早さ。聞いたことのないメロディ。ありふれたメロディ。変化、均一。それらを自在に操る恐ろしい技術的成熟。技術的成熟のみが可能な自在な大きさ。すばらしいです。

現在、最も注目されるジャズピアニスト、というよりも純粋にピアニストとして注目を浴びるメルドーを中心とした演奏に触れることができたとてもすばらしい夜でした。

<蛇足>
アンコール4曲を含めて、2時間強の演奏はエネルギッシュでした。脂が乗り切っているとしかいえません。圧倒されました。アンコールでRadioheadのKivesOutを演奏してくれたのは良かったです。

1F 6列 12番

Set List
1. Dream Sketch (B.Mehldau) 11:40
2. Twiggy (B.Mehldau) 8:40
3. Aquaman (B.Mehldau) 11:15
4. Wyatt's Eulogy for George Hanson (B.Mehldau) 12:20
5. My Ship (Weill/Gershwin) 16:50
6. Holland (Sufjan Stevens) 12:10

Encore
1. Airegin (S.Rollins) 13:40
2. Knives Out (Radiohead) 12:15
3. Still Crazy After All These Years (P.Simon) 7:15
4. No Moon At All (D.A.Mann/R.Evans) 10:20

Piano: Steinway & Sons D-274 ED POL (Made in 2002) A=440

今回の演奏に近いのはこのCD


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2009年03月03日 23:30

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