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2010年01月18日

瓦礫から

[a-家づくりについて---house_making ]

15年前の1月17日の早朝。阪神・淡路地区を襲った大地震。その被害の大きさは激しく、三週間後にボランティアで行った私の目の前にあった光景は今でも忘れられません。
瓦礫の街。
昨日は震災の日を記念してテレビで特番が放映され、すっかりと復興した街並みが映し出されます。
人の力のすばらしさを感じながら、人の力のすごさを思い出しながら、画面に見入っていました。

15年前にボランティアで被災地を訪れた時に目にしたのは人の力です。エネルギーはストップし、交通は遮断され、人の力しか頼りにできなかったのです。
倒壊した家の中から生存者を助け出すのも、めちゃくちゃになった室内を片付けてもう一度住めるようにしたのも人の力です。

住む家をなくした人々が公園や川沿いに緊急につくった仮の住まい。仮の住まいを作った人の力。特別な道具も何もなく。電気などのエネルギーもなく。人の手だけで家を作ること。
必要に迫られてのことです。確かにそうですが、人の手だけで家を作り上げる知恵を、私たちは持っていた。知恵の記憶を蘇らせていたのだと思います。

家を作る歴史。竪穴式の住居から人は家を作ってきました。家を造る技術の歴史もそこから始まります。しかし、現代ほど家づくりがエネルギーと道具に頼ってしまっている時代はないと思います。そもそも家を作る技術はシンプルなもの。特別なことなど何もいらなかった。戦前にさかのぼれば、この日本でも人の手だけで、特別な道具もなく家は作られてきました。その技術の厚みと、知恵の豊かさ。

15年前の光景を思い出す時、いつも私の心の中には、瓦礫から家を作り上げる人々の知恵と精神力のことが思い浮かびます。

家は人が住むもの使うもの。家ほど人に密着した建築はありません。その家を作り上げる原点・知恵とそれを支える精神のたくましさを、今こそわれわれは思い起こさないといけないのではないかという思い。
瓦礫から家を作り上げる知恵とたくましさ。これこそが、家づくりに一番大切なものなのではと。

瓦礫の中には、ある程度の長さを持った木があります。それは、柱だったり梁だったりしますが、まずはそれらを組み合わせて骨組みを作り上げる知恵。材料と材料を丈夫につなげる知恵。それは、特別な技術や道具を使わないでできなくてはいけません。
骨組みができたら雨から身を守る。屋根を作る。トタン板を集めてくる。それらをつなげる。曲げてとめて。一番簡単なのは瓦棒葺きのアイデアだと思います。きれいに作るよりも、材料を無駄なく確実に雨が漏らないように作ること。
次は外壁です。隙間風をいかに止めるか。
出入り口と窓はどうするか。瓦礫の中から使えそうなものを見つけてくる。使えそうな木材から作る。兆番や取っ手を見つけることは簡単でしょう。
断熱材はビニールシートのはぎれを集めて壁の中に詰め込んでも良いでしょう。その場で集めやすい材料から適切な判断をすること。
このような知恵を私たちは持つ必要がある。私たちは、建築家であるならなおのこと、こうした知恵を持つべきだと思います。いや、建築家とはこうした知恵を持つもののことではないかと。

私がセルフビルドサポートやハーフビルドでの家づくりにかかわるのは、家づくりのプリミティブな姿をそこに見るからです。瓦礫から家を作り上げること。家づくりの原点。それは私たちが忘れてはいけないものだと私は思っています。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年01月18日 02:10

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コメント

道具や技術がなくても、家はなんとかできるんですね。
なるほど〜。おっしゃるとおりです。
なんだか、忘れていたものを思い出したような感じです。
ありがとうございます。

投稿者 tak : 2010年01月18日 10:28

自宅をハーフビルドで作られた
tak さまにはこの話はわかってもらえると思っていました。
いつもではなくて良いと思うのですが、何かあったときに思い出せる野生の知恵を持ち合わせていたいですよね。

投稿者 fuRu : 2010年01月18日 10:37

土曜日はありがとうございました。私も、震災後2ヶ月の春休みを利用して後片付けのボランティアに行った時の衝撃を今でも覚えています。これほどまでに1回の地震が人々の生活を破壊するのだということと、とにかく何でもないものは何とかするという人々のバイタリティー、そして結束していくと人の力だけでも何とかなるものだという感動。自分が教えてもらった、貴重な経験でした。
その力が今の我が家に生きているのかどうかはわかりませんが、「ない物は作ればいい」という我が家の考え方の根底にその経験があるのかもしれません。

投稿者 H.Suzuki. : 2010年01月18日 23:10

H.Suzuki.さま
こちらこそ、土曜日はお邪魔いたしました。
いい特集記事になるようにがんばります。
H.Suzuki.さんの家づくりへのプリミティブなまなざしの源泉はそういうところにあったのですね。
意を同じくしうれしく思います。
1999年にお会いしたのも何かの縁だったのでしょうね。

投稿者 fuRu : 2010年01月19日 00:24

あの時、行ってらしたんですね?
ありがとうございました。
私は行く事ができませんでした。

投稿者 iw-jun : 2010年01月20日 13:56

iw-junさま
長谷川アトリエの当時のメンバーで行きました。

投稿者 fuRu : 2010年01月20日 20:02