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2010年02月09日

「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか 」--- 水野 和夫

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「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか 」
著:水野 和夫 発行:日本経済新聞出版社
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2007年3月に出版されたベストセラービジネス書。
ベストセラーと言っても読みやすいわけではなく、経済に疎い私などはどこまで理解できたものやらというところ。それでも、ブログで紹介しようと思ったのは、分からないながらも強烈なイメージが伝わってくるところが多々あり、それがとても刺激的だったからです。それがなかったら本文で300頁はある本書を読了することはできなかったでしょう。

本書の論点を、分からないながらも書き出すとこのようになるかと思います。

1995年以降、経済が大きく変わった。
グローバルマネーの動きが活発化し、ドメスティックマネーの動きが鈍くなった。
資本主義はマネーが数量ともに大きく動くほど大きな利益が生じる仕組みであるため、グローバルマネーの動きに乗ったビジネスが急成長し、逆にドメスティックマネーに乗っているビジネスは低迷している。マネーの動きの差は歴然としている。
よって、グローバルマネーに人々は翻弄される。すでに経済は、ひとつの国という範疇では景気回復の手立ては難しくなっている。
グローバルマネーの覇者が世界を支配する。これを田中明彦氏の「新しい中世」という言葉を引用して指摘している。
近代の消滅と「新しい中世」の誕生。

なるほど、私たちの住んでいる世界はグローバルマネーに翻弄されているというわけです。しかし、一方、私がたずさわる住宅産業の世界はあくまでもドメスティックな経済で動いている。もちろん、建材、特に資材はすでに国際商品として流通しているものが多いので、間接的にはグローバルマネーの影響下から逃れることはできないのです。

実際に、数年前にロシアが木材の輸出税を段階的に200%にすると発表した時があって、日本国内でも、これからは国産材の時代だと設備投資した人達がいました。ところが、ロシアが突然税率引き上げを中止、今に至っています。設備投資した人達は大きな打撃を受けました。

木材はすでに国際商品として流通しています。グローバルマネーの波に乗っているのです。
でも、しかし、ちょっと待ってください。日本にはたくさんの木が育っています。日本に育っている木を使えば、グローバルマネーに翻弄されることなんてないはずです。
あるいは、豊富にある国産材をグローバルマネーに乗せることができれば、ビジネスとして大きな富を生むのではないか、そう考え実行する人が現れてもおかしくありません。でも、実際にはそういうビジネスをやっているという話は聞いたことがありません。

なぜ、国産材は国際商品になりにくいのか。
それは、一言で言ってしまえば、国際商品としての品質表示をしてゆく仕組みが整理されていないからなのです。逆に言うと、国産材は国際商品になり得ないからグローバルマネーに食いつぶされずに済んでいるとも言えるのです。

森をいかす家づくりもグローバルマネーの動きを無視できない時代になっています。設計者も建築資材の価格について注意を払っていかないといけない時代になっています。

この本は、そういう今の時代を理解するためになんども読み返す必要のある本だと思います。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年02月09日 10:40

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