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2010年04月19日

下山眞司先生の「知っておきたい日本の木造工法の展開」@芸大

[建築--architecture ]

昨日は「伝統木構造の会」が主催の
下山眞司先生の連続講義の初回でした。
タイトルは「伝統を語る前に・・・知っておきたい日本の木造工法の展開」。
毎月開講の全6回です。

私は武蔵野美術大学を卒業したあとに筑波大学の大学院修士課程に進学しました。今から20年以上も前の話です。
大学院に行くということは、研究課題をもってその研究を進めるために指導教官につき研究室に所蔵することと、一般的には思われています。しかし、今だから言えるのですが、私にそのような研究課題はなく、実は動機が曖昧なまま進学してしまったのでした。そのために、書いたことのない「論文」というものに、大きく頭を悩ませることになるわけです。

私が筑波に入った年、筑波大学の建築コースでは、下山眞司先生が「筑波第一小学校の体育館」をすすめておられました。ちょうど、設計が終り、現場がはじまるところでした。木造のはね出し構造による大空間は、日本に昔からある考え方による大空間の実現という画期的な試みでした。構造設計は増田一眞氏。木工事をまとめたのは田中文男氏。

今から考えるととてもディープな世界に、いきなり飛び込んでしまったわけです。

そして、何もわからず、体育館建設の記録をビデオに収める任務をいただき、現場が始まってからは、毎日通う事になりました。田中文男さんの眞木建設の作業場にもなんども行きましたし、この時に、見聞きしたことは今でも私の大きな財産になっています。

また、指導教官によるゼミ制を、当時の筑波大学はとっていなかったのを良い事に、コウモリのように安藤邦廣先生について民家の調査に出かけたりもしていました。

今につながっていると思うのは、当時は積極的に取り組んでいる人も少なかった国産材のことや、その背景としての日本の山が荒廃しているということを教えていただいたこと。一般的に、大学の建築教育では木造というのは殆ど学ぶことなく卒業になります。武蔵野美術大学も同様。私には木造の知識はほとんどありませんでした。問題意識もほとんどありませんでした。それが、筑波での経験が大きく私の人生の方向を決めたと言ってもいいでしょう。千葉県の林業家との「千葉の森をいかす会」の運営につながっています。

そうした経験をさせていただきながら、筑波在学時、下山先生の講義を受講し、先生のいっておられることに生意気な発言を繰り返していたわけです。

さて、前置きが長くなりましたが、第一回目の昨日は「はじめに」と題して、日本の環境から日本の建築をとらえるという内容になりました。

0、日本は地震国ですが、巨大地震が発生した地域は限られている。それなのに、日本全国画一化した地震に対する基準をもうけることの矛盾。

1、人はどこにでも住んできたわけではない。東京などの都市部では空いている土地があればどこにでも建物を建てていることへの問題提起。必要条件としての飲用水の確保。それだけではなく、十分条件を考えてゆくこと。

2、住まいの基本形をみる。nLDKという見方ではなく、作業スペース、家事的な作業スペース、寝室・神事、という三つのスペースとしてとらえること。

3、街並みは時間軸で形成されてきたということ。住む人のマナーとルール。お互いを尊重する。

4、木造軸組工法は手入れをされて長く使い続けられてきた。その4つのポイント。
a-地業に留意
b-簡潔な架構
c-主要な架構と空間の使い分けが対応している
d-改造・修繕が可能

5、木材の性質について

途中休憩を挟んで3時間の講義ですが、脱線につぐ脱線、それは下山先生の講義の面白いところなんですが、時間切れで5番目は省略となりましたが、いただいたテキストがわかりやすいので問題なし。

お話を聴いていて、20年前の講義の様子がフラッシュバックしてきます。3番は20年前に聞いたことがあるなあ、など。建築という行為はたかが20年で語れるものではないという下山先生の変わらぬ姿勢のあらわれでもあります。

それにしても、木造軸組工法は手入れをすることで長く使い続けることが出来るというのは、私が昨年書かせていただいた「やっぱり、木の家がほしい!」で言いたかったことですし、長く使い続けるための4つのポイントは、「ハーフビルド」という考え方を支えてくれていることでもあります。
私が今やっていることは、20年前から始まっていたのだと思いました。

自分の原点を再発見することになった講義でした。

全6回の内容は次の通り

時間はいずれも15:00〜18:00

第一回 平成22年4月18日(日) はじめに 日本の環境の特徴

第二回 5月16日(日) 日本の木造軸組工法の典型-1、古代の典型:その考え方、
中世の典型1:その考え方

第三回 6月20日(日) 日本の木造軸組工法の典型-2、中世の典型2:その考え方

第四回 7月18日(日) 日本の木造軸組工法の典型-3、近世の典型1:書院造・その考え方、近世の典型2:武士の住居・その考え方

第五回 8月29日(日) 日本の木造軸組工法の典型-4、近世の典型3:農民、商人の住居・その考え方 まとめ:日本の建物づくりの考え方・・・・それは現場で培われた 

第六回 9月19日(日)(仮) 近代化と現在:建築基準法の規定する木造工法(在来工法)の生まれた経緯

まだ、席に余裕があるようですので、二回目以降からの参加も可能ではないかと思います。

ちなみに、私は「伝統木構造の会」の会員ではありませんが、会員でなくても受講できます。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年04月19日 11:00

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