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2011年09月01日

仮設住宅考

[a-家づくりについて---house_making ]

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今回、東北に行った目的の第一は仮設住宅の視察でした。
家づくりの会の先輩建築家藤原昭夫さんが提案し実現した宮古の仮設住宅を中心に、アトリエ天工人が中心となって提案されているトレーラー型の仮設住宅も石巻にあるというので見にゆき、メディアで話題になっている住田町の仮設住宅も見学してきました。
上の写真は藤原さんの仮設住宅です。

仮設住宅とは災害で家を失った人たちを一刻も早く避難所生活から開放することを目的に作られる住宅です。一刻も早くですから、いちいち設計している余裕はありません。プロトタイプ化されていて予算も決まっています。1〜2ヶ月程度のうちに入居というような厳しいスケジュールで建設されます。しかし、今回は建設地がなかなか見つからずに仮設住宅の提供が大幅に遅れました。

ちなみに、中越地震の時には私の実家がある長岡ニュータウンという高台の住宅地で、今まさに販売を開始しようという宅地、つまりインフラも全て整った更地が沢山にあったため、そこを使ってあっという間に仮設住宅は完成していたと思います。山古志村の人たちはほぼ全員がそこに建てられた仮設住宅にそれほど間をおかずやってきていました。

藤原さんは厳しいスケジュールという突き付けられた条件のなかで、用意されていたプロトタイププランを使うことから始められたそうですが、その9坪平屋のプロトタイプでは4畳半の個室が簡易な間仕切り壁を隔てて2つ並んでいました。たしかに個室が2つということにはなるでしょうが、これでは使い勝手があまりにも良くない。そこでこだわったのが間仕切り壁を建具にするという提案でした。予算が決まっているプロジェクトです。簡易な間仕切り壁の部分を建具にしただけで大幅なコストアップになるのはわかっています。それでも、その仮設住宅で繰り広げられる人々の生活を考える時に、安易な解決は絶対にやってはいけないことだと藤原さんは考えたに違いありません。

実は、先の中越地震のあと、実家がそばにあったということもあり、帰省するたびに仮設住宅の前を通ることになりました。仮設住宅は2年間で退居することが前提です。仮設住宅利用者はその2年間で新しい生活への地盤を固めなくてはならないのですが、長岡ニュータウンの仮設住宅は5年経っても、少なくない数がそこにあり続けたのでした。
中央に対して地方は高齢化が進んでいます。家を失ったとしても新しい家を建てるような余力を持った人はそれほど多くはないのです。仮設住宅に入ったはいいけれども、退居を約束した2年後に新天地のあてを思い描きながら入居される方はほとんどいないのだと思います。
仮設住宅は2年で退居が原則なのかもしれませんが、高齢化社会ではそれはとてもとても難しいことだと思います。とすれば、2年間我慢してもらえば良いというような家を作るのではなく、5年間ちゃんと住める家を提供しなくてはいけないでしょう。5年間ということになれば、家は自在に使えなくてはいけないでしょう。間仕切り壁ではなく建具で仕切るということはとても柔軟に人々の生活を受け止めてくれることでしょう。
そして、そこにはコミュニティがちゃんと設計されている必要があります。人と人がつながることもちゃんと考慮されていなくてはいけない。実は遠野にあった仮設住宅ではそうしたコミュニティ空間が仮設住宅の中に実現されていたのです。
遠野でそのようなことが実現できたのは、被災地から少し離れていたために、ちょっと冷静になれる時間があったからではないでしょうか。スケジュールをきっちりと守るのは緊急事態においては一番大切なことだと思いますが、いろいろ考えさせられもしました。

震災から5カ月半たった今。仮設住宅から復興住宅へと少しづつですが人々の関心も移っているのかもしれません。被災地にあったタマホームの営業所には沢山の赤い旗がたなびいていました。それは、私には悪いことには見えませんでした。新しい家を持つということは、次の世代の人々にとっては大きな心の拠り所となるに違いないのです。
そして、タマホームの旗を見た時に私も旗を挙げなくてはいけないと思ったのです。
そこにあるのはローコストの世界です。経済的な負担をできるだけなくしたところにある、自分のこだわりをあきらめないで実現する家。工業化によるスケールメリットを生かしながら、自由であること。そんな家が可能なのか?自問自答。そのひとつの答えをもうすぐ発表できると思います。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2011年09月01日 00:50

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