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2004年07月29日

「施主直営」と「family」

[00-家づくりについて---house_making ]

家をつくる方法としては、
まずは、すべてを自分でやってしまう方法がある(=セルフビルド)。
しかし、それではあまりにも大変だ。
だから現実的な選択としては、お金を払って専門家に依頼することになる。

一般的には「工務店」「ハウスビルダー」に窓口となってもらって
家づくりに関わる数多くの職人さんを手配・管理してもらうことになる。
これが「請け負い」方式。一般的な方式だ。
この場合、「工務店」「ハウスビルダー」を「元請け」という。
これに対して、「施主直営」とは、各職人さんの手配やとりまとめを建て主(施主)自らが行う。
あるいは、誰かにコーディネートしてもらう場合には単に「直営」方法と呼ぶ場合もある。

さて、「施主直営」の利点はなにか?

「元請け」は職人さんを管理するための手数料を依頼者(家を建てる人)に請求する。
しかし、「施主直営」でも、家づくりに関わる職人さんを取りまとめることは必要だ。
そして、それは誰かがやらないといけない仕事だ。
その仕事抜きには家づくりは始まらない。
そして、その仕事をする人への適切な対価としての手数料が発生するのは当然のことなのだ。
だから、この手数料はなくならない。

「施主直営」は「元請け」のとる手数料が発生しないからコストダウンにつながる、という説明をする人がいるが、その言い方は正しくないのである。

その点をもう少し明らかにしてみよう。
そのためには、「元請け」のつくる見積書について知っておく必要がある。

「元請け」は依頼された工事に関わる職人さんにそれぞれの分担についての仕事内容を説明して
見積もりを出してもらう。「元請け」は職人さんから出てきた見積もりに対して、1割から2割の金額を上乗せして、建て主用の見積書に記載する。さらに、その工事金額の総額の1割から2割の金額を会社の諸経費として見積書に加える。その合計が建て主に提示される見積書である。

先にふれた、職人さんを取りまとめて管理する手数料とは、最後に加えられる会社の諸経費に含まれている。では、各職人さんから出てきた見積もりに上乗せされる1割から2割の金額とは何か?

ひとつには、これは、僕も知らなかったのだが、会社というものは利益をどんどん上げて、国に税金を納める使命と義務があるとのこと。よって、(税金を納めるということで国から保証された)会社組織としての利益がこの上乗せ分に相当するということになる。

もう一つの意味合いとしては、「元請け」が背負ってしまう責任というものを理解しないといけない。
「元請け」は、工事中に雨風などで作業が予定通りにうまく進まず、職人さんに時間外の労働をお願いしなくてはならなかったり、さまざまな問題に対して、当初(見積もりの時)は考えていなかったような現場での対応を迫られることがある。そういう場合に、そこでかかった費用については「元請け」が負担するのが通例になっている。これが「請負工事」の特徴でもある。
さらに、見積もりという作業はどうしても人がやるものなので、時には大きな間違いもある。設計図に書いてあったのに見積もり書から漏れ落ちていたという場合。そういうことがないように細心の注意を払って見積書を作成し検討するのだが、それでも漏れ落ちがあった場合。その責任は誰にあるか?それは「元請け」にあるのだ。
こういうリスクに対して責任をとらざろう得ない、これが「元請け」の責任である。

よって、「元請け」は、そうしたリスクを含めて工事金額を考えないといけない。
そのリスクが、職人さんからの見積もりに上乗せされた金額でカバーされている。

優秀な「元請け」はリスク回避が上手である。あるいは危険予測がうまい。よって、利益を最大限に上げることが出来る。

さて、ここで問題なのは、「元請け」方式の場合、会社が取っている利益がどのくらいなのか、それが建て主から見てまったくのブラックボックスになているということだ。

「直営式」は建設費のブラックボックス化を最小限に押さえクリアーな工事費を算出するために大変有効な方法なのである。

「工務店」「ハウスビルダー」が儲けすぎることがこの方法で回避できるといえるだろう。
そこ結果として、工事費はいったって明瞭になり、何に対してお金を支払っているのかがはっきりしてくる。

それにしても、これは、作り手と依頼者の信頼関係の基本ではないだろうか。
「直営」方式などを採用しなくとも
信頼関係のおける作り手を捜し出すことが、本当は理想である。
その理想が難しくなってしまっている、今という時代が
「直営式」を呼んでいるのかもしれない。

投稿者 yasushi_furukawa : 2004年07月29日 20:02