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2004年07月14日

「武満徹のエラボレーション」

[音楽--music ]

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先日、新聞の朝刊を何気なく見ていたら
大江健三郎の文章を見つけた。
そこに書かれていた「エラボレーション」という言葉。
「elaboration」。直訳では「推敲」。
大江健三郎は、武満徹が自らの作品を磨き上げるように作曲していった
そのつくり方に対して
「エラボレーション」という言葉を使った。

調べてみると、東京オペラシティでの武満の没後5年の記念演奏会で
大江健三郎が講演をしていてそのタイトルが「武満徹のエラボレーション」だった。
その講演の全文が東京オペラシティのホームページに紹介されていた。
「武満徹のエラボレーション」

ところで、大江健三郎が先日の新聞に書いていた話で気になったことがあった。
それは、大江が小説の推敲に行き詰まっていた時に
武満からバッハのパルティータ(ゼルキン)を聞いたらどうだと勧められ
パルティータを聴いて行き詰まりが氷解したというくだりだ。

このエピソードから、「エラボレーション」というのは、個人の行いに限らず
相互の刺激による、お互いの向上というニュアンスまでもっていると感じた。

そして、調べる。講演の記録を読む。
そして、考える。

音楽と小説。
関係を見つけるのが難しいがどこかでつながっている。
音楽のエラボレーションと小説のエラボレーション。

そして、僕は建築設計のエラボレーション。

自分の設計手法、工法や材料、プランニングの考え方。
それらすべてを常に振り返り吟味してゆくこと。
そのための、信頼出来る他者の眼。

7.dd._Houseの見学会で、多くの友人が見にきてくれた。
彼らの視線は僕を刺激する。
そして、次のステップへ。自分は何をするべきか。

今、1000円の廉価版で「夢窓 Dream/Window」(「ジェモー」に収録)を聞きながら
武満の音楽について、
そして、ものをつくるということについて考える。
takemitsu.jpg

投稿者 yasushi_furukawa : 2004年07月14日 15:46

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コメント

はじめまして
<建築設計のエラボレーション
武満徹の著作からは限りなく影響を受けましたが、残念ながら自分の作品に反映するまでに至っていません。「鳥は星形の・・・」のテキスト「数と夢」のようにいつか創造したいものです。

投稿者 masa : 2004年07月22日 23:30

masaさん
コメントありがとうございます。
武満のように創造すること。
僕もそのようになりたいと願っています。
ただ、武満の著作については
音楽を理解するための手がかりだと受け止めていますが・・・。

投稿者 古川泰司 : 2004年07月23日 08:24

大変興味深く読ませて頂きました。
武満徹はギターという楽器が好きだったようで、 小生も荘村 清志さんの「森の中で~武満徹へのオマージュ」というCDを持っています。 この作曲家と演奏家の関係も作品を介して正にELABORATEしあう仲だったようですね。 「相互の刺激による、お互いの向上」、この相互作用が、blogを通じて異業種間、異世代間、ジェンダーを超えてできないかと今思っています。 また、どうもお近くなようので、ちょっと下って、カフェ杏奴にていつかお会いしたいなどと勝手に思ってもおります。

投稿者 いのうえ : 2004年09月06日 18:40

いのうえさん、こんにちは。
武満にはビートルズの曲をギターで演奏するようにアレンジした作品がありますね。僕がもっているのは、ジョン・ウイリアムスが演奏しているCDです。
「Here There and Everywhere」なんて武満的世界がさらに広がったようで
とても好きです。
僕も玉井さんのblogで知った
カフェ杏奴にいつかは行ってみたいと思っています。
偶然お会い出来ると嬉しいなあ。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月06日 19:11

もう御存知とはおもいますが・・・

” 「話して考える」と「書いて考える」 ”
     大江健三郎 著
  10月10日 集英社より 発行

本日 偶然銀座の本屋で見つけました。 いきなり前口上から elaboration の語源の説明がはじまります。(小生の解釈がはずれていなかったので ホット一息。)

投稿者 いのうえ : 2004年11月09日 00:19

先日、本屋さんでチェックしました。
現在読んでいる
「ミスター・ヴァーティゴ」-ポール・オースター
次には
茂木健一郎さんの本を読んでおきたいし
なぜか、石田衣由の本が家に積んであるのも読みたいし・・・・。
うーん、読書の秋ですね。
でも、きっと読みますよ。

ああそうか。いのうえさんがブログ始めた時の
最初のエントリーということではどうでしょうか。

投稿者 古川泰司 : 2004年11月09日 12:18

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