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2005年08月09日

「思い込み」--小椋佳

[音楽--music ]

小椋佳に夢中だった中学生の頃を思い出して
久しぶりに彼のレコードをたて続けに聴いていた。
なかでも、僕が生まれて初めて買ったLPレコード「夢追い人」に収録されている「思い込み」を繰り返し聴いています。

「思い込み」という歌はこんな歌詞です。

なによりまして自由なものは心の中の物思い
目をひらく以外に止めるものはない
道を横切り蝶々が飛んだ
白いテープの一筋に
なつかしく思う 遠い運動会

鏡をみれば なぜ僕だけが
風のない日の 鯉のぼり
まわりはこんなに跳ね回っていて
一日ずっと、いらついたのは
思いがけなくある人に 穏やかな人と言われたりして

サングラスして会いに来た君
少しも君に似合わない
君の場合それは照れ隠しでしょう
疲れたという気がしているのは
汚れたはずの手のひらに
おもちゃが残っているからなんでしょう

なによりまして自由なものは
心の中の物思い
目をひらく以外に止めるものはない
寒さが特にいやだと言って
雪の日はただ好きなのは
ものみなすべてが 無口になるからだ

朝はいつでも待ちもせぬのに
早く始まる三日月が
僕のなかでまだブランコしてるのに
変わってしまう君との会話
白い壁のと独り言
ガード下で遊ぶキャッチボールみたいに

レモン切る時 ふと辛いのは
大切なものが死ぬ時の
寂しい香りが広がるからでしょう
彩色されてゆくことだけで
それを成長と呼ぶのなら
僕は彩りを拒むことにしよう

海辺の街に去った友達
話し聞こうか 久しぶり
私はコーヒーにヨットを浮かべる
これが私の最後の歌と
愛せる人につげる日を
待ち潰すために 今日も歌づくり

小椋佳の歌の世界の魅力は
言葉の魅力です。
なにげない日常の中にある、些細だけれどもとっても大切な物語
彼の言葉は、何の飾りもなく歌ってくれています。

特に、聴き直して感じたのは
レモンを切ることが「辛い」ということを
「大切なものの死」とつなげること。
日常のありふれた情景のなかで、ありふれた生の営みと同居している死。
「死」を、日常のなかにあるものとして、これほどさりげなく語っている言葉は、
そうめったにあるものではないでしょう。

中学生の僕に届いたのは
確かに小椋佳のそうした等身大の視点で世界を見つめる言葉だったのだと
30年も経った今、あらためて思うのでした。

<蛇足>
この「夢追い人」というレコードは現在入手困難ですが
この「思い込み」と言う曲が収録された「遠ざかる風景」というNHKホールでのライブ盤は入手可能です。
ただし、そこで演奏されたのは、全部で7番もあるこの曲の一部(1、3、7番)です。


「遠ざかる風景」
amazon

<追記06.03.30.>
コメントにもあるように
AKさんのお知らせで歌詞の一部が間違っていたことが判明しましたので
訂正させていただきました。

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年08月09日 12:05

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コメント

中学生のとき友人に「太陽にほえろ」のサントラと一緒に「夢追い人」を借りました、もちろんカセットテープに録音したものです。
もう30年も前のことになってしまいました。
いいですよね最初の歌詞が・・・最高です。
同じように好きでいる人がいるのが嬉しいです、ただ私は今回こちらではじめて知りましたが、「街のセレモニー」なんですね、ずっと「待ち伏せるのに」だと思っていました。なぜ今まで・・・

投稿者 ともな : 2005年09月04日 21:53

ともなさん はじめまして
>同じように好きでいる人がいるのが嬉しいです
こちらこそ、たいへんうれしいです。
そうそう、旭川にお住まいとのこと。
僕は旭川には極寒の2月に、仕事でですが行った事があります。
こんな報告書を書いていました。
http://www.ne.jp/asahi/af/home/af/old_works/kamikawa.html

ちなみに、歌詞についてはあくまでも聞き取りなので(歌詞カードを紛失)
「待ち伏せるのに」なのかもしれません。
どなたか、確認出来る方がおられたら良いのですが。

それでは、これからもよろしくお願いします。

投稿者 fuRu : 2005年09月05日 09:10

「待ちもせぬのに」です。

投稿者 AK : 2006年03月30日 19:52

AKさん
ありがとうございます。
これで、長年の胸のつかえがとれました。
ほんと、感謝です。

さっそく「街のセレモニー」などという間違った言葉を訂正させていただきます。

投稿者 fuRu : 2006年03月30日 21:11

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