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2006年02月27日

伝統的なもの

[いろいろ--misc. ]

治らない鼻風邪を抱えて
江古田のギャラリー陶花で行われている
呉服島内 東京春展」の最終日に行ってきた。
芹沢けい介とその一門の仕事がそこにはあった。
芹沢けい介の名を知ったのは
静岡にある彼の美術館を学生の時に訪れた時。
もちろん、目当ては白井晟一設計の美術館だったのだが
そこに展示されている芹沢の仕事に、やはり心動かされるものがあった。

ところで、静岡の美術館の方は、太い丸太の柱や梁が印象的な鉄筋コンクリート造の建物だが、
丸太の柱や梁は建物を支える構造的な意味を持っていない。つまりは、フェイクだ。
使われている丸太の太さは、経験的に言えば
この建物の屋根くらいは十分に支えられそうなくらいに太い。
では、コンクリートなんか頼らないで木造でつくれば良かったのではないかとも思う。
現実問題としては、収蔵品を災害から守るためにはコンクリートがよいという判断がされたのだろうけれども、
白井晟一は、フェイクであることを強く意識しているように感じる。

日本には数寄屋建築という伝統と文化がある。
茶室などが代表的な世界だが
実はフェイクのデザインの系譜がその流れのなかにある。
たとえば、軒を支える垂木とよばれる材を、そのまま見せるという化粧野地のデザインも
軒を深くすればするほど、垂木の大きさは大きくなってしまう。
大きくなってしまうのはいけない。デザインが台無しになる。
そこで、本来軒先を支える構造用の垂木を隠して
表面に細いサイズの見せかけだけの、屋根を支えることのない垂木を張りぼて式に付けるようになる。
これが、日本の伝統建築の表現の一面として形成される。

こういうフェイクの流れに対して
民家の流れがあって、こちらは「そのままの美しさ」とでも言おうか
構造用の材料はちゃんと構造用として使われている。
そこに美しさを発見した人々は
機能性が、その美しさを支えていると考えた。
しかし、僕は、「それはちょっと違う」と考える。

僕は、白井晟一のフェイクを見たときに
芹沢の仕事を展示する場所はこうありたいと、白井はそんな思いでいたのではないかと感じた。
こうありたい。
こうありたいからの技術。
それが伝わってくる。
技術が先にあるんじゃあない。
フェイクであるとかフェイクでないとかそういうことではなくて
その思いの結果としてのフェイク。その思いのための技術。

民家だって同じ。
大工さんが、こうありたいと思ったから、民家の美しさが出来たのであって
機能性とか合理性とか、そんなことを考えてつくっていたわけじゃあない。
必要以上に高くする棟、必要以上に太い大黒柱。
それらは、機能性を求めて生まれたわけじゃあない。

さて、話は「民藝」である。

用と美が結ばれるものが工芸である。 工芸の美は伝統の美である。

柳宗悦の言葉は大切だ。
人は「用」と「美」を追い求める。
そのように使えるようであって欲しい
そのように美しいものであって欲しい
その思いが、人を「かたち」に向かわせる。
その時、「用」と「美」は結ばれるのだ。
柳はその理想的な姿を工芸に見たのではないか。

陶花に展示されている島内さんのコレクションを拝見しながら
芹沢の思い、そのようにあってほしいという思いが
どんどんこちらに伝わってくるようだった。

ものづくりはすべては同じだろう。
僕のやっている建築の設計も、やはり同じだ。
そのようになりたい、と強く思う。

江古田で物作りと伝統について考えた昼前だった。

○呉服島内 店主さんのブログ「和風寅
芹沢一門についての島内さんの記事もブログにあります。

投稿者 yasushi_furukawa : 2006年02月27日 13:05

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コメント

>こうありたいからの技術。
>ものづくりはすべては同じだろう。

同感です。そうであるべきだと思います。

今日はお会いできてうれしかったです。ありがとうございました。
花粉症じゃないといいですね。

投稿者 some ori : 2006年02月28日 01:18

some oriさんとの
何度かの対話でいろいろなことを発見させてもらっています。
昨日も島内さんと、会場でたっぷりお話しさせていただいて
いろいろな刺激を受けて帰ってきました。
考えてみれば着物文化に全く縁のなかった僕が
こんな風に展示会に足しげく通うというのは
some oriさんの影響ですね。
こうありたいという思い
some oriさんの織物からも伝わってきます。

投稿者 fuRu : 2006年02月28日 08:46

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