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2004年06月24日

「原発はなぜ危険か」-田中三彦

[books ]

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「原発はなぜ危険か」
田中三彦 著 岩波新書新赤版 660円+税
ISBN4-00-430102-5

1974年6月。
広島県呉市にあるバブコック日立で製造中の
「東京電力・福島第一原発四号機用原子炉圧力容器」が
関係法規の許す範囲を超えて歪んでいた事が発覚した。

この本の第1部-第1章は、このゆがみを矯正する作業について
その作業に関わった著者自らが書いている。

そして第2章。
1988年6月。六・二八シンポジウム。

著者である田中三彦氏はこのシンポジウムで14年前の矯正作業について口を開いた。
朝日新聞を始めとするマスコミは事実関係を調査。
東京電力の原子力発電部長はその事実を知っていたと発言。
一方、科学技術庁原子力安全局は「全く知らなかった」と語った。
さらに、日立製作所本社の原子力事業部長は
「原子炉圧力容器が歪んだ事実はない」と問題を根底から否定。
ところが、わずか半日後に記者会見を設定し
矯正作業の事実を認めながらも「作業は合法的であり、安全上も問題ない」と主張した。

ことの是非を問う論争が活発になればいいのだが
国は論争よりも鎮静化を選択した。
鎮静化とはあいまいなままことを済ませてしまうことだ。
それは、この国を支配する「企業の論理」に
国が対抗出来るだけの力を持っていないことのあらわれでもあるのだ。
国民にとって頼れるのは国しかないのに、である。

特に、三菱自動車の問題が浮上している今、
問題の根底にあるこの国の矛盾についてもっと論議されるべきなのではないだろうか?
日本人が持っている隠蔽体質がこの本を読んでいるとくっきりと浮かび上がってくるようだ。
国と企業が結託して重大な問題を隠して国民に知られないようにすること。
国民は知らなくて良いんだよ・・・・。

本は第2部で原発という技術の危険性についてふれ

そして、この本の締めくくりである第三部にて、
原発というものの根本的な危険性は
人間の過剰なエネルギー依存がこうした問題を生んでいるとして
我々のライフスタイルへの反省を促し
パッシブソーラーなどの技術に光を当てている。

ゆっくりと生きる事、自然と共生する事。

僕が目指している家づくりへもつながっている。

1990年にこの世に出たこの本は、新書という形態をとっているが
いつまでも読まれなくてはならない本だと思う。
(出版関係の方から聞いた話では新書というのは雑誌などと同じ扱いなのだそうだ)


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年06月24日 11:05

コメント

現在絶版のようです。
みなさん、ぜひ 復刊ドットコムに投票して
復刊させましょう。
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=8338

投稿者 古川泰司 : 2004年06月24日 17:07

ただ反対するのでは能がないということで、私はウラン燃料を作っている横須賀の工場、中部電力の浜岡原発、問題になった東京電力の福島第一原発を見学したことがあります。「二酸化炭素を出さない」「容積の少ない燃料で多くの電力を生む」という素晴らしさを説明の方が語る一方で、始末できない廃棄物はとにかく埋めるしかない。世界的にも高速増殖炉による燃料の再利用は行われていません。少ないエネルギーでゆっくり暮らす。私もそうありたいと思います。

投稿者 H.Suzuki. : 2004年06月25日 21:30

貴重な情報、ありがとうございます。電力会社ひとりを責めれば良いとも思いませんが、「民間」とは名ばかりで、官僚組織以上に官僚的、お役所以上にお役所的な雰囲気になっていて、よどんでいるかもしれません。本来であれば、政治が正すべきなのですが……。

投稿者 yodaway2 : 2004年08月11日 17:46

TBありがとうございます。
体に悪い、環境に悪いとあれだけ叫ばれながらも、JTのCMがTVからなくならないことと類似しておりますな。
わかっていても、切り捨てることが出来ないものは、ほかにもいくらでもありますね。

投稿者 TakeBow/~ : 2004年08月11日 20:01

TBありがとうございました。(^-^)/~

>ゆっくりと生きる事、自然と共生する事。
その通りだと思います。^^V

投稿者 soro^^ ~ : 2004年08月11日 20:56

TBありがとうございました。
マニュアル/点検箇所自体の見直しをはかり、安全性の徹底を見える形にしてフィードバックしてもらわなければ安心なんかできません。
飛行機ではYS−11が、新幹線も0系は既に引退しはじめています。同世代の原発も寿命が2030年などと机上の計算を信じていいものなのか非常に疑問ですよね。今回の事故にしても設計自体にミスがあるように思えるのですが、調査点検をしっかりしてほしいものです。

高レベルの廃棄物の保管(六ヶ所村)なんかも、本当に"安全"なのか疑問が拭えません。

投稿者 にしかは@京都 : 2004年08月12日 00:15

はじめまして。No blog, No life!さんのところで拝見して参りました。大変面白そうな本のご紹介ありがとうございます。今度帰国の際(イタリア在住です)、探してみようと思います。復刊に一票投じてきます。

投稿者 ねる : 2004年08月13日 08:54

TBさせていただきました。
是非この本読んで見たいです。

投稿者 ゴリ蔵 : 2004年08月14日 17:30