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2005年09月09日

設計者は芸者稼業か?

[a-家づくりについて---house_making ]

ある人、大先輩の建築家ですが、ちょっと前にこんなことを言っていました。

「建築家(設計者)は芸者稼業だ」

ようするに、お金を払ってくれる旦那さん(建て主さん)のご機嫌取りも大切だ、ということなんです。
ただ、設計者は「大きな期待」を込めて設計を依頼されるわけで
それに答えられるだけの技(芸)を持っていなくてはしかたがない。
そして、出来上がったものが、社会に対してメッセージを持っていいてほしい。
そのメッセージが、次なる「大いなる期待」を生むのですからね。

つまりは、もみ手でゴマ擂っていてもだめなんです。
「建築家は芸者稼業だ」という言葉には
あくまでも、太鼓持ちになってしまってはダメだという意味も込められているのであります。

いかに旦那さんに気に入ってもらえるか、
あるいは、いかに多くの人の心をとらえる魅力的なメッセージを送ることが出来るか。
そのために、僕らは芸を磨くことになります。
そういう意味では設計者は芸者さんや芸人と一緒だと思うんです。
素晴らしい芸者さん、芸人さんは、お客のご機嫌取りだけをやっていてはなれないということでもあります。

先日、
「ポリシーがはっきりされているので、意見が食い違った時の不安感が少しありました。」
というお言葉をある方からいただきました。
一方、設計者仲間からは
「古川は、(建て主さんの言うことを)聴きすぎだよ。」などと言われていたりします。

設計者、さまざま。
ただし、住宅に関して言えば、住まい手の満足をいかに得られるかという課題を、つねに突き付けられているという点では、どの設計者も一緒だと思います。

住まい手の満足を得るために、少なくとも僕などは
すまい手のリクエストを徹底的に聞くことをポリシーにしています。

しかし、何から何まですべて聴きながらというわけにもいかないのも現実。
それは、ひとつの建築物をつくるために決めないといけない事柄が
あまりにも多すぎるからです。
で、基本的には、技術的なことを中心にある程度お任せさせていただいて
設計を進めて行くことになります。

この「ある程度」というのの線引きが実に難しい。
この線引きが、設計者をただの太鼓持ちにするのか、すてきな芸人にするのかを決めているようにも思えます。

「設計者は芸者稼業か?」という問いを胸に
すてきな芸人になれるように、古川の試行錯誤はつづきます。
とう、ご期待!


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年09月09日 10:40

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コメント

芸人は上手も下手もなかりけり
行き先先の水に合わねば

三代目金馬

投稿者 iGa : 2005年09月09日 11:26

行く先々の水を知る
これも芸なり
というところでしょうか。

投稿者 fuRu : 2005年09月09日 13:21

私はある程度、水を選んでやってます。万能魚じゃないもので、、、でも蛙にならないようにしなっきゃ。

投稿者 some ori : 2005年09月09日 13:57

魚、自ら行くべきところの水を知るべきなり
蛙、自らいるべきところの水に合わねば陸に上がる、これも道なり
というところでしょうか。

投稿者 fuRu : 2005年09月09日 14:09

ひゃーー。前のコメントの数々が大人すぎて、書き込むのが恥ずかしいぞッ!!だけどちょっと挑戦しちゃうぞ!!えっと、以前御茶屋遊びなるものに、連れていってもらった時に、プロの芸者さんはすんげ〜〜!!!と舌を巻いた想いがあります。なんか客が結構我儘こいてたんですけど、やんわりと受けながら、通す所は・・・って自分の「お仕事」はしっかりで。客はある程度選んでるんだけど(御茶屋システムってそうですよね。)、それでも合う合わないってのがある。その時のさばき方ってのは、一朝一夕にはやっぱり出来ない。結局客は芸者さんの「さばき」「経験」に金を払うんだな〜って想ったんです。えっと、だから、何を言いたいかって言うと、fuRUさん頑張って下さい〜〜!!!・・・って小学生か。私は。

投稿者 kazoo : 2005年09月09日 19:34

kazooさん
年期のはいった芸者さんの「さばき」「経験」というものについては
たぶん、その通りだろうだと思います。
ただ、嫌な客をうまくあしらう、その様子がまた見ている人を感心させるなんていうのも
芸者さんの芸の巧みさのひとつなんですよね。
それが、劇画的に様式化されているのが芸子さんの世界なのかもしれません。
ただ、基本的に、お客さん相手の商売には必ず登場する場面ではあります。
そういう意味でも、僕らの仕事はお客さん商売なんだというところでしょうか。
うーん、ますます芸に磨きをかけなくては、と感じております。

投稿者 fuRu : 2005年09月10日 14:54

「新橋芸者と美校の奴は、色と調子で苦労する」という芸大に伝わる歌があるというのを
宮脇さんの本で読みました。
僕も時々、東京芸者大学の出身です・・・・と言う時があります(笑)。

投稿者 伊礼智 : 2005年09月11日 17:20

伊礼さん
お互いに芸道の道に精進する身ということですね。
ちなみに、「建築家は芸者稼業だ」と言われた方は
芸大出身の大先輩の方です。(僕は芸大出身ではありませんが・・・)

投稿者 fuRu : 2005年09月11日 20:35

先日大学の教授でもある建築家の方と交流会を持ちましたが工務店はピンはね業と言われていました。
そう言われても仕方が無い会社もあるかもしれませんが少なくとも私はそうではありません。
その方がやっている直営方式も決して悪く無いと思いますが客様よりお預かりするお金のマネージメントは難しいです、ある程度の資金力とこつがいります。
これも大事な工務店の仕事とだと思います。
私は彼に多様化する情報の整理などのコンサル業、コーディネート業も工務店の仕事であり家守として永続的にメンテナンスをしていく事も大事である事を伝えました。
だから適正な利益がいるんです。
と関係ありませんでしたが『設計者は芸者稼業か?』で『工務店はぴんはね業か?』とつい関連付けてしまいました。

投稿者 tanaka-kinoie : 2005年09月11日 22:14

田中さん
僕は消費者はとても賢いと思っています。だから、もし、工務店が単なるピンハネ業だったら、地下に潜って細々とやる分には成立するかもしれませんが、現状のように社会的に認知されることはないでしょう。
逆に、田中さんを始めとするきちんと仕事をやって信頼を得ている人たちがいるからこそ、工務店の存在は大切なものとして認知されているんですよね。
で、良いものをつくる、提供するということのためには、建て主さんのお金の使い方にまでアドバイスする必要も出てくるでしょう。その時に大切なのは言うまでもなく、信頼関係です。信頼関係なくしては、芸者稼業も成り立ちません。
と言う訳で、工務店さんも芸者稼業なのかな。
お互いに、芸道に精進しましょう。

投稿者 fuRu : 2005年09月12日 09:32