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2006年01月31日

The World According To Garp----John Irving

[books ]

「ガープの世界」(上・下)
著:ジョン・アーヴィング 訳:筒井正明 新潮文庫
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ガープにとって世界とはこういうもの。
1978年に出版された小説は
主人公ガープの目を通して世界が描かれる。
でも、その世界は個人の偏見に満ちた世界。
そして、そこには愛される偏見も憎むべき偏見も
分け隔てなく描かれている。決して網羅的にではなく。

そして、家族。

家族というのは性的なものだ。
生殖的、と言い換えても良い。
醜悪ともいえる俗っぽい物語の向こう側。
ドーキンスの「利己的な遺伝子」的な世界観かもしれないが
そんなこと、飛び越えて、そこに存在する家族。
そして、その家族は血のつながりも飛び越えて
性の垣根も飛び越えて、やさしく、やわらかく、ゆるく、つながっている。

それに対峙する不寛容。

不寛容は許せない。

一人のクレタ島人は言った。「クレタ島人はみな嘘つきだ」

僕らの人生が、矛盾に満ちたものであったとしても
矛盾というのは机上の世界でしかない。
生きていること、生きてゆくこと、その力。
そこには矛盾なんてない。生きること、そのものがあるだけだ。

物語は語られ、人は生きる。
ガープにとって、世界とはそういうもの。

<蛇足>
2005年の暮れからやっと読み始めて
今年の初めに読了。
この小説は、若き日に読まなくてよかった、とそう思うとともに
今読むことが出来た偶然に感謝するばかり。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2006年01月31日 09:20

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コメント

僕は、途中でストップしています。
ストップすると、しばらく期間があくので、
もう一度最初から読み始めるでしょ。
すると、またストップするのですね、途中で。
読み終わる前に、文庫がカバンのなかなどで揉まれて
ボロボロになってきました。

投稿者 わきた・けんいち : 2006年01月31日 09:52

わきたさん
僕が読んだ文庫本はうちの奥さんのもので
すでにカバーもなくなって
ぼろぼろになっているやつ。
それを上着のポケットにつっこんで
通勤の電車の中で読みました。
「えらい」小説ですね、ほんと。
↑「えらいこっちゃ」の「えらい」です。

投稿者 fuRu : 2006年01月31日 11:36

この「えらいこっちゃ」の小説は、映画にもなっているようですね。
ロビン・ウィリアムスが主演しているようですね。
僕は、俳優としての彼が好きなのですが、『ガープの世界』
については、まず原作をきちんと読んでからと思っています。
というのも、『オウエンのために祈りを』(アーヴィング)のほ
うは、先に映画を見てしまいました。順番としてはよくないと
思っています。fuRuさんは、『オウエン〜』を読まれましたか?

投稿者 わきた・けんいち : 2006年01月31日 12:20

わきたさん
僕の場合は「ガープ」は映画の方が先でした。
ロビン・ウイリアムスは好きな俳優です。
「オウエン」は、家内に買ってあげたハードカバーが家にありますが
彼女もまだ読んでいないようです。
ちなみに、うちの奥さんは
アービングをほとんど読んでいます。
でも、アービングは、もうしばらく時間をおかないときついですね。
ほんと、えらいこっちゃ、です。

投稿者 fuRu : 2006年01月31日 12:42

fuRuさん こんにちは。 私は映画しか見ていませんが お母さん役のグレン・クローズと
大男が性転換したという役柄のジョン・リスゴーがとても存在感があり、記憶に強く
残っています。 でだしの歌と赤ちゃんの浮かぶ様もよかった。

投稿者 いのうえ : 2006年01月31日 21:24

furuさん、いのうえさん。
「ガープの世界」のDVD、見たくなってきました〜。
個人的なルールを破ってみてしまおうかな・・・と、
揺れ動いているところです。

投稿者 わきた・けんいち : 2006年01月31日 22:01

いのうえさん
本の中でもガープのお母さんと
元アメフトのタイトエンドだったロバータは
とても存在感があります。
この二人が主人公といっても良いくらいですね。

わきたさん
原作のある映画というのは、たいていは小説の方が印象深くて
映画は二束三文な印象になってしまうのですが
僕の個人的な意見では
「ガープの世界」の映画は小説に勝るとも劣らないできだと思います。
ただ、続けて読んだり見たりするのは疲れそうですね。

投稿者 fuRu : 2006年01月31日 22:32

ホテルニューハンプシャーとどちらがお好きですか?
次々と救いのない出来事が起きても、まぁ人生こんなもんだというような諦観がどちらにも感じられるような気がします。
ナターシャでしたっけ、ナスターシャでしたっけ、キンスキーよりガープの奥さん役の方が好きなのと、お母さん役の存在の分だけ、ガープの方が好きです。
テクニカルサージャントの話も好きです。
何代かさかのぼれば、殿様だなんて自慢をするより、ずっと素敵な話だと思います。

ロビン・ウィリアムスも上手いのは良く分るのですが、too muchな時もあるのですが、脇役達に囲まれてあまり悪目立ちしません。
あぁ本の話しでしたね。ごめんなさい。

投稿者 kawa : 2006年02月04日 01:00

kawaさん
だから、ぼくは、ああ、うう。
うちの奥さんは次に読むのは「サイダーハウスルール」が良いと言っていますが
まだまだ、おなかいっぱいでなかなかこなれません。
腹持ちの良い小説です。
「ねじまき鳥クロニクル」も未だにおなかの中で消化されずに残っています。
どちらにしても、アービングは
小説読むよりも映画を見た方が良いのかもしれません。

投稿者 fuRu : 2006年02月04日 21:16

サイダーハウスルールも評判がいいみたいですね。見たいな。
ガープは2回見ましたが、それも随分前のことで大分忘れました。
もう充分にこなれて、出て行ってしまいました。
新作を食べるだけの食欲も充分ですが、見る機会がありませんでした。
今月一杯の忙しさから開放されたら、カーンのレイトショウーとサイダーハウスのビデオだな。
カーンのレイトショーはもう御覧になりましたか?
あれはいつまでかなぁ?

投稿者 kawa : 2006年02月05日 03:39

kawaさん
小説と映画という話になっていますが
やはり、小説と映画は別物です。
アービングの小説は映画的な
あるいは映画独特の語り口、プロットを持っていると思います。
だから、この小説は映画にすると生きるのかなと。
とはいえ、映画もガープしか見ていませんので
もう少ししたら、次のに挑戦です。
長いつきあいになりそうな作家です。

投稿者 fuRu : 2006年02月05日 09:46