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2008年08月09日

「崖の上のポニョ」

[映画・ドラマ・舞台--movie/play ]

今日は、家族で「崖の上のポニョ」観に行ってきました。
主題歌のメロディが耳に残るなあとか
手書きアニメの復権とか
そういうことを言われていますが
もっと、もっと、大きなものをこの映画に感じたわけで
その大きさに深く深く感動しています。
<以下、映画の内容にふれます-080810加筆修正>

映画を見る前にサントラを聴いていたのですが
ドビュッシーの海との深いつながりを感じてしまいました。
もちろん、今回の舞台は海ですから、それはそのまんまなのですが
「海」は生命の根源、源泉です。
ポニョが人間の姿と半人魚の中間の姿で
水かきがあったりするのは、まさに生命の進化、分化をイメージさせます。
それこそ生命です。
そして、ポニョの母、グランマンマーレは海そのもの。

フジモトはすべての生命の母なるグランマンマーレへの永遠の愛を持ち続け
自分が数多くの父的なるもののひとつに過ぎないことを自覚しています。
大いなる母の海に比べて、その父的なるものの小さいこと小さいこと。

生命を生み出す母体にとって、父的なるものはきっかけにしか過ぎないわけです。

映画で印象的な母なる海は
豊富な生命のそれぞれの姿がどこまでも細かく生き生きと描かれ
その画面に潜む底知れぬイメージの力に私は圧倒されます。

今までの宮崎駿の映画にはどこか理屈っぽいところがありました。
言い換えれば言語的だった、父性原理で描いていたと思います。

映画を観た直後に頭の中に言葉が溢れかえり、思考は思考を呼び、あたまはぐるぐる。
それが、私にとっての宮崎駿の映画です。

しかし、今回は、見終わったあとに、言葉が脳内を駆けめぐることはありませんでした。

その代わりに、時間がたつにつれて
大きな大きなイメージが身体の中心から
どんどんふくらんでゆく感じを強く持っています。

言葉以前のイメージの力。

言葉で代用できるイメージならばイメージなんていらないのかもしれません。
言葉で言えないからイメージで伝える。イメージの力。

今回は、イメージをつくりあげることに力を注ぎ込み
そのイメージが言葉を越えてふくらんできます。
でも、イメージってそういうもの、ですよね。

フジモトはポニョの父でありながら
父としての確実な存在価値は実はどこにも存在しない。
だから、ポニョを閉じこめておこうとする。

宗佑の父は、船の上から家族を見守るだけ。

そして、私は気がつきました。

この映画は父性原理(男性原理)で描くことを
一切、拒否していると。
表現とは、描く視点が表現されてしまうという二重性を抱えている。
分析的になればなるほど、父性原理(男性原理)で映画を、そしてイメージを描くことになる。
宮崎駿は分析的に描かれた映画やイメージの底の浅さに気づいていたと思います。

しかし、そうではない世界観。
あくまでも分析的ではなく描かれる母性原理に基づく世界観。
それを描こうとすれば、どうすればいいか。
父性原理的な視点、つまり分析的な視点で母性原理の世界観を描いてきた人は今までもいます。
宮崎駿も今までの描き方は、どちらかといえば分析的だったと思います。
しかし、表現の根拠としている世界が、あるいは描写の方法が父性原理(男性原理)であるかぎり
永遠に母性原理の世界観を描くことができないというジレンマにも宮崎駿は気づいていたのだと思います。

そして「崖の上のポニョ」。
分析的であろうとする態度をはるかに超えるイメージの力を持っている。

私はこの映画から
大きな大きな母性の世界観を
強く受け止めています。

すごいです。この映画。

何度も繰り返し観てみたいと強く思っています。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2008年08月09日 22:00

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コメント

こんにちは。
私も一昨日、観てきました!
で、日記にも書いたんですが、いまひとつピンと来ませんでした。
なんでだろう~? 前日に宮崎駿出演のNHK「プロフェッショナル」を見ちゃったからかな~とか考えたりしてモヤモヤモヤモヤしてたんですが…
fuRuさんの「母性原理の世界観」説を読んで、ああそうか~これかも!
と思いました。
私は母親になったことはないですが、いちおう女性なので、なんというか…あまりにも当たり前すぎて、「共感」以前に当たり前のこと、だったので正直、今更なにを? という感覚はありました。
宮崎映画の女性は強い人が多いですが、今回はとくに女性陣が強いですね。
ポニョはもちろん、リサ、デイサービスのスタッフ、トキさん、おばあちゃんたちもなんだかんだ言ってお年寄り独特のたくましさがあったし、そしてグランマンマーレ。それにボートの女性も。

といいながら、女性客の感想が気になるところではありますが…。

でもそうすると、これまでの宮崎映画で感動した男性というのはどう解釈したらよいのかしらん。
ああでも、たぶん男性と女性とではものごとの受け止め方が、普段は気付かない根本的なところで決定的に違っているから、女性はすでに自分が持っているものを差し出されても、は? で終わってしまうのが、男性の場合はそうではないのかも知れませんね。

でもあの映像美は快感です。
だからまた観に行くかもです。

あ!もうこんな時間!ちりとて まいご3兄弟がはじまってしまうので取り急ぎでこれにて~

投稿者 くろべえ : 2008年08月10日 10:06

娘があの歌がながれると、TVの前に
そっこうで走ってゆきます。(笑)
ポニョ私も見たいなと思っていましたが、
古川さんのブログを見てさらに映画館に行きたくなりました。

ポニョもすごいのでしょうが、
古川さんの感性に驚きます。

古川さん なにものなのでしょうか?

凄いひとですね。

投稿者 すぎの : 2008年08月10日 10:10

くろべえsama
くろべえさんの日記も読ませていただいています。
私も映画を観た直後は、なんだかなあ、というのが正直なところでした。
でも、その日の夕方にかけて、胸の奥からもやもやしたものがこみ上げてくる。
これは、なんだろうかと、考える。
考えると、この映画の男性の役割というのはまったくないことに気がつく。
宗佑は父性原理でも男性原理でも動いていない。
宗佑の幼稚園の女の子との友達の方が男性原理で動いている。
そして
この映画が徹底して、男性原理で描かれていないことに気がついたのです。

こんな映画観たことない。

くろべえさんの言うとおり女性の感想も聞いてみたいですね。

投稿者 fuRu : 2008年08月10日 21:33

すぎのさま
ポニョ、良いですよ。
ぜひご家族で行かれてください。

ちなみに、誰が観ても凄い映画です。

投稿者 fuRu : 2008年08月10日 21:40

息子が「腹の上のぷにょ」とか言って私の贅肉に戯れてます。

投稿者 りぼん : 2008年08月10日 22:09

りぼん さま
ところで、ポニョの本名、知っていますか?
「ブリュンヒルデ」なんですが
これは「ジークフリード」の登場人物なんだそうです。
実は私はワーグナーなどは良く知らないのですが
ポニョは女神なんだという点で納得していました。

投稿者 fuRu : 2008年08月11日 09:58

ワーグナーですか。ポニョにそんな本名があったとは。
NHKの特番で登場人物は把握できましたが、結末が気になるところです。
今は映画館は無理なので、DVDが出たら見てみたいです。

投稿者 りぼん : 2008年08月11日 10:36

りぼんさま
映像の細部までの徹底した描き込みは映画館ならではと思いますので
とても残念ですね。
私は、北欧神話を調べてみようかな。

投稿者 fuRu : 2008年08月11日 10:59

はじめて観てみようかなあと思いました。
ありがとうございます。

投稿者 raku : 2008年08月12日 07:34

rakuさま
ぜひ!

投稿者 fuRu : 2008年08月12日 10:00