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2009年01月21日

「人は意外に合理的」---ティム・ハーフォード

[books ]

「人は意外に合理的」
著:ティム・ハーフォード 訳:遠藤真美 出版:ランダムハウス講談社
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とても面白い本でした。
サブタイトルが「新しい経済学で日常生活を読み解く」。経済学の本です。
でも、こんなことが経済学?という内容なんですが、
貨幣価値だけでなく、日常にある様々なことをコストとリスクということで分析し、人はどういう判断をするか研究することも経済学ということのようです。
いろいろな事例が紹介されているのですが、一番ショックだったのが第5章の「居住区にて」。

ワシントンDCにて白人と黒人の居住区が明確に区分されており、貧富の差、犯罪発生率に顕著な差が生じている。黒人居住区は貧しく犯罪が多発する。

どうしてそういうことが起こっているのでしょうか。黒人に犯罪者が多いのだという妄想は問題外。実はそうしたことが、普段我々が普通に行っている合理的な何気ない判断によりおこるのだというのです。個人の合理的な行動が不合理な結果をもたらす。これが本書を一貫している問題意識なのです。

日常の些細な何気ない合理的な判断。これが実は大変厄介なものなのかもしれませんし、そうした日常の合理性を研究することで新しい世界が開け、いままで解決することが困難だった問題にも一条の光が射すのでは。

経済学の本、というよりも日常を読み解く新しい切り口を教えてくれる本としてとても面白くし劇的な内容をふんだんに含んだ本だと思います。多くの人にお勧めです。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2009年01月21日 09:35

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コメント

三年前の前川國男展の頃、ウェブ検索でこちらのブログを初めて拝見して以来、しばしばお邪魔させていただいています。私自身はブログをもっておりませんので、失礼とおもいこれまでコメントしませんでしたが、このエントリーはすこし気がかりなので、失礼を省みず、書かせていただきます。私はこの本は未読ですし、著者名も知りませんが、古川先生による紹介を読む限りでは、シカゴ学派の経済学者ゲーリー・ベッカーの系譜の著作のようにおもえます。殺人も麻薬常用も「合理的計算」にもとづく、というような主張をふくむもので、これはかなり極端で危ない考えだと思います。新古典派経済学は大恐慌時にいったん破綻し、そしてこんにち二度目の破綻を経験いたしました。月並みですがやはりケインズ『一般理論』に再び学ぶべきときだと思います。

投稿者 Le promeneur solitaire : 2009年01月23日 21:34

Le promeneur solitaireさま
コメントありがとうございます。

>殺人も麻薬常用も「合理的計算」にもとづく
というような論旨はこの本の中では出てきません。

日常の些細な合理的と思える判断が不合理な現実を生んでいる、ということが骨子です。

そして、著者の意図としては、合理的と思える判断が実は不合理(不幸・差別)を生んでいることを理解しない限り不合理の根っこは解消しないという問題提起だと思います。
ですから、合理的な判断から生まれた不合理は許されるというようなことは、この本の趣旨ではないと思います。

私が経済学の素人であるがゆえに表現に言葉足らずのところがあり、誤解されるようなところがあったのだと思います。すみませんでした。

投稿者 fuRu : 2009年01月23日 22:01