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2010年01月25日

「変わる家族 変わる食卓」---岩村暢子

[a-家づくりについて---house_making ,books ]

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「変わる家族 変わる食卓」
著:岩村暢子 中公文庫
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本を読み進めながら、これほどまでに複雑な思いが沸き起こってきた本も、今までなかったというのが正直な感想です。トラウマになりそうなくらいのショックです。
著者を中心におこなわれた「食DRIVE」調査の1998年から2002年までの5年間の結果について考察されています。
「食DRIVE」調査とは、首都圏に住む1960年以降に生まれた主婦を対象におこなわれた食卓の調査。調査は三段階で行われ、最初に食事に関するアンケートが行われ、次に三食一週間分の食卓にのったものをそのまま記録して写真撮影しコメントとともに提出。最後はこれらのアンケートと食卓レポートを元に面談によるヒアリングを行ったそうです。

この調査は首都圏の比較的若い世帯の食卓の現状を明らかにするために行われたのですが、その食卓の姿に私などはショックを受けるとともに、そうした食卓を出現させている意識に、自分でもどこかでつながっている、そういわれてみれば自分の家でも同じことが起こりつつある、と、自分の食卓の一面が照らし出されたのでした。

この本の内容を、こうしたブログで紹介するのは、かなりの誤解を与えてしまいそうなので、ご興味をもたれた方は、ぜひ一読していただきたいと思うのですが、家庭の食卓が、ここまで変質しているという現状は、住宅を設計している私にとって、大いに考えないといけないところです。
特に住宅の設計にかかわる人たち。工務店さんも含めて、この本が示してくれている現代社会の家族の食卓は知っているべきものではないかと思います。

知り合いの建築家の事務所は、打ち合わせスペースになぜか立派なオープンキッチンがあって、打ち合わせスペースもダイニングのような雰囲気になっています。どうして?と聞けば、「家族がばらばらになっているとは言うけれども、食事の時間は別だと思う」と、確かそういう言葉が返ってきました。
私もその言葉に大きくうなずいていたのですが、この本を読んで、それは大きな間違いだったかもしれないと考えるようになったのです。

もちろん、いろいろな家族がいます。食事はやはり大切なものとしておられる家族もいると思います。でも、この本で紹介されている調査では、食事を大切にしている家族は、圧倒的に少数なのです。

家族はどうなるか、家族が囲む食卓はどうなるか、そして住まいはどうなるか、大きな大きな問題をとく鍵がこの本の中にあると思います。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年01月25日 02:10

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コメント

「食DRIVE」調査は、以前なにかでその結果(写真)を見て、印象に残っています。けれど、主婦でお母さんなので、ある程度は想像がつく情景ではありました。
以前生協(生活クラブ生協)で班長を長いことやって、組合員の拡大(いわゆる勧誘のようなこと)も組合員がやっていました。そういうときに、食にさほど興味のない人たちから投げかけられた言葉、良く覚えています。
いわく「そんなことに気を使うなんて、暇な人。やってらんないよね〜」「所詮、食のおいしさや安全なんて、インテリで生活にゆとりのある人の趣味にすぎない。」「どうでもいい」「ダイエットが大事。食べるのは面倒くさい」などなど。
そして、家族はそれぞれの用事で忙しいので、個食になってしまう家は多いです。個食のほうが気が楽で良いという人も。それが高じて、食事なんてコンビニもあるし、それぞれがテキトーに勝手に済ませりゃいいじゃんという人もいます。
頑張って食事を作ったところで、ご主人は「今日は飲んで帰ることになったからいらない」「遅くなるからこっちで食べて帰る」。子供は「クラブで遅くなる!友達とちょっと食べて帰るから夕飯いいや」とか。塾とか。お母さんも仕事をしていて、無理して作っているのにそういうことが重なって、やる気がしない....などなどみんなどうしてもバラバラに。(そうじゃない家も、たくさんありますけど!)もう20年以上前から、急激に変化してきているな〜と感じていました。
ある程度豊かな人が住む街(中の上というかんじの暮らし?)のスーパーではなく、中の中、またはもうちょっとしみったれたかんじの街(うちの街だ!)のスーパーに行って、食料品を買う人のカゴの中身や会話を聞いていると、その家族が囲む食卓が透けて見えてきます。良い悪いということはさておき、今の現状がよくわかります。

...ま、現状はそうなのですけれど、だからこそ、食事に限らず、家族がついゴソゴソと出てきてしまう、居心地の良い部屋が欲しいんです。個人でも工夫はするけれど、限界がありますから経済的にゆとりがあれば建築家の人の知恵がほしいところです。

ところで、私の知る建築家の人たちって、『自分はお金持ちじゃないし、ごく普通の暮らしをしている』と言う人が多いのですが、それこそ、(わかってないなぁ...)と感じることが多いです。『大金持ちではなく、普通。でもちょっと心豊かな暮らしをしている』というのがほんとうのところだと思います。

ひゃ〜〜長くなってしまいました。すみません。

投稿者 kadoorie-ave : 2010年01月26日 23:33

kadoorie-aveさま
>だからこそ、食事に限らず、家族がついゴソゴソと出てきてしまう、居心地の良い部屋が欲しいんです。
!!!!
まったくそうなんですよね。
心豊かな暮らし。
でも、それを目指していなかったら建築の設計は出来ませんよね。
そういう暮らしが出来ているかどうかは別にして。

投稿者 fuRu : 2010年01月27日 00:18

この本の論調には賛否両論あるようですが、定性調査としては受け止めるべきリアルなのでしょうね。。。

ただし! この調査がおよそ10年前のものだ、ということを見落としてはいけないと思いました。
家族のあり方、食卓のあり方は絶対に変わっているはずです。
(調査当時に中高生だった人が既に自分の家庭を持っているとしたら・・・)
時代の流れは物凄く早いです。たぶん、この調査結果はもう古いと考えて、今を受け止めていく覚悟をしないといけないのかもしれません。

一方で、世の中の「ふつう」がそこにあるとも思えません。
多様性を受容する世の中ではありますが、昔ながらの「ふつう」も残っているはず。
職業柄もありますが、それをできる限り把握・理解していくことに、私は興味があります。

投稿者 Tomy : 2010年02月15日 14:22

本日メールマガジンを読ませていただきました。私の仕事仲間の研究会(小学校の家庭科教員の研究会)では、この本はとても有名です。また、私自身も家庭科専科をしていた時代(5年前ぐらいまで)にこの本に出会って、「その通りだな~。」と感じたことを思い出します。極端なことを言うと、家がまるでカプセルホテルのようになっていて、家族はその自分のカプセルで自分の都合のいい時間に寝たり出かけたりするので、食事は揃ってとることに意味を見出さない、のです。それが食事のマーケティング調査をすると端的に現れる。
小学校5年生の子どもたちに、食事についての授業をすると、今朝食べてきたものも思い出せないとか、昨夜は何食べたっけ? などということもよくあります。ぎゃくに、今朝は何を作ったとか食べたとか、今日の給食は何だろう! と、つねに食事に意識のいく子どももいます。今は両極端に分化しつつあるのかもしれませんね。
我が家でも厨房メーカーにオーダーしてキッチンを作ってもらいましたが、設計をお願いする家庭は、食事の空間や時間をある程度重視している家庭が多いと思うのです。だから、よけいにこの本の内容に驚く設計者の方も多いのだと思いますが、やはり私たち以下の世代では如実に現れている傾向であると言ってさしつかえないでしょう。

投稿者 H.Suzuki. : 2010年02月15日 23:06

Tomyさま
まったくおっしゃるとおりだと思います。
これをひとつの事実として受け止めることからしか始まりません。
たぶん、昔から食に興味のないひとはかなりいて、でもそういう人も強制的に家族という枠組みで食に関わらされていたのが、解き放たれただけなのではないかなとも思います。

投稿者 fuRu : 2010年02月16日 10:35

H.Suzuki. さま
教育の場で子どもたちとそのご家族に接しておられる方の言葉は重いですね。
子どもたちの同級生の家族の話など聞いていると、食に限らず、いろいろなことが大きく変わっていると思うことが多くなりました。食に続いて家庭に大きな影響を与えているのはゲームですね。先日、うちの息子がゲーム難民に。ようは、持っていないゲームでは一緒に遊べないで結果的に仲間はずれにされてしまうと言う事があるようです。これについては、また改めて会てみたいと思っています。

投稿者 fuRu : 2010年02月16日 10:40