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2010年08月30日

Jhumpa Lahiri

[books ]

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Jhumpa Lahiri、ジュンパ・ラヒリ。
NY在住、ロンドン生まれ。両親はインド人。

彼女の名前を何処で知ったのかは、今は記憶も定かでありません。
デビュー作である「停電の夜に」を何気なく読んで、軽い痺れと共にやってきたショックのうちに、私の中では彼女の名前は記憶されることになりました。

女性であることが、その研ぎ澄まされた鋭利な表現に結び付けられがちですが、どうもそこには大きなトラップが待ち構えているような気がします。

しかしながら、彼女の小説は彼女(!)でなければ書けなかったであろう世界であり、そのまなざしは決して男性のものではないことは確かだと感じます。

これは正確にいう必要がありますが、彼女の言葉に感じるのは「非男性」ではありません。男性でも女性でもないところ。そのような視点で淡々と即物的に語られる世界。男性の味方でも、女性の味方でもない言葉。ややもすると冷たすぎるとさえ感じる彼女の言葉の魅力とは「誰の味方でもない」という、そこに尽きるのかもしれません。

「誰の味方でもない」とき、というのは「押し付けがましい味方の素振り」ではないということ。冷たいまでも冷静に見つめてもらうこと。情念に絡め取られない心情の落ち着く先。人の思いとは裏腹に流れてゆく時間。人が生きている世界とは「誰の味方でもない」世界。ましてや、世界は人の味方ではない。

彼女がインド人であることが関係しているかどうかはわかりませんが、彼女の小説に流れている「誰の味方でもない」という世界観に、深く感じ入ってしまうのでした。


 


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投稿者 furukawa_yasushi : 2010年08月30日 09:30

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