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2010年08月26日

「エビスくん」---重松清

[books ]

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「エビスくん」
著:重松清 新潮文庫
amazon(新潮文庫「ナイフ」)

重松清さんの本を初めて読みました。
短編集「ナイフ」です。表題にもなった「ナイフ」は賞ももらったようで有名らしいのですが、私としては「エビスくん」が一番、というのが正直な感想です。

とてもとても、不思議な余韻を残すお話です。
「いじめ」の陰惨さ。たしかにそういう描写はありますが、「いじめ」=「犯罪まがいのやってはいけないこと」という道徳的な断定とか、「いじめ」=「いじめられる方にも問題がある」という心理分析、とも関係ない「関係」が描かれています。

短編集「ナイフ」は「いじめ」がテーマです。どのお話を読んでいても、胸が締め付けられる思いがします。(私はいじめられっ子ではありませんでしたけれど)頭の中に、忘れていた記憶が蘇ります。子供の頃は様々な理不尽さの中に投げ込まれて必死で息継ぎをして生きてきた、その息苦しさが身体に蘇ります。

そのなかでも「エビスくん」で描かれている、イジメられてもイジメられても少年とのつながりを離さない主人公の姿は、無視しちゃえばいいじゃない、と簡単に片付けてしまっている大人の私たちが、手放してしまったものをがむしゃらに大切にしている姿です。

その少年たちの姿。そこには、忘れてはいけない大切な物が、大切に過ごした時間があります。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年08月26日 09:55

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