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2012年06月17日

小椋佳のこと

[音楽--music ]

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2012年6月9日放送のNHK BSプレミアムの「武田鉄矢のショータイム」に小椋佳が出演していました。もうすっかりおじいちゃんの様相で、声も衰えが隠せませんでしたが、大変興味深く番組を見ていました。

実は私は小椋佳の大フアンでした。でした、と書くのは、それが中学時代をピークとした私の個人的なブームだったからです。それでも、今でも時折その時に熱心に聞いていたアルバムを懐かしく聴いてみたりすることもあります。

さて、中学時代に話を戻しますと、その頃、小椋佳は、一切コンサート活動をしないという稀有な存在でした。それが、布施明が歌った「シクラメンのかほり」が日本レコード大賞を受賞し、一躍時の人となった次の年、1976年10月NHKホールで初のリサイタルコンサートが行われました。リサイタルのしばらくあとで、NHK特集で「小椋佳の世界」が放映され、その前にNHK FMでリサイタルの様子が放送されていました。

私は、兄がエアチェックしていたFM放送のテープを何度も繰り返し聴き、歌詞を紙に書き留め、私はそこにある言葉の数々に強く心動かされました。そして、その時のリサイタルの模様を収めたライブ盤がこの「遠ざかる風景」なのです。
レコードではほとんど割愛されてしまったMCもFMで放送されていて、その話しぶりにも心惹かれたのを覚えています。

今回の武田鉄矢の番組でも小椋佳の語りの面白さに心惹かれました。
小椋佳誕生秘話なんていうのも、プロデューサー多賀英典さんが登場して語られていて、容姿を隠してデビューさせたという逸話には思わず笑みを浮かべてしまいました。
それにしても、アイドル全盛時代に売れる売れないを一旦棚上げして、シングルではなくアルバムで売ってゆこうという判断は、今聞くと、すごいことだったんだなあと思います。もちろん、その判断がなければ今の小椋佳は存在していなかったわけです。でも、良いと思ってデビューしてそのまま消えていった人のほうが多いのも事実。小椋佳が多くの人の心を掴むだけの魅力を持っていたということを忘れてはいけません。

その小椋佳の魅力の秘密を解き明かすようなエピソードが番組のなかで紹介されました。それは、「シクラメンのかほり」の歌詞が北原白秋の詩の引用で構成されていて、言い回しはエルビス・プレスリーの歌詞を参考にしたということです。
このエピソードについては既に文化放送の番組で紹介されているものだったようでしたが、初めて聞く私はびっくり。そして、文学的な香を北原白秋の言葉からチョイスして再構成した小椋佳の方法に、構造主義的と言ってもいいような、今までの作詞作曲の方法論にはないものがあったということに、目からうろこ・ダンボの耳で番組に見入ってしまっていたのでした。面白いですね。

さて、私が一番好きな小椋佳の詩は「思い込み」という曲です。その曲が収録されている「夢追い人」というレコードは、私が初めて買った小椋佳のレコード。とても思い出深いものがあります。基本的には古い曲、たとえば「春の雨はやさしいはずなのに」みたいなもののほうが好きなのですが、「5・4・3・2・1・0」というレコードも大好きです。レコードとしては、「風の鏡」まで買ったでしょうか。それ以降は、彼の詩の世界の技巧的なところが、どうしても鼻についてしまうようになって、彼の世界から離れていったのでした。

今回の番組で、久しぶりに小椋佳の姿を見て、その言葉を聞き、その世界にはまっていた時の自分を思い出すことが出来ました。また、昔の古い曲を聞いてみたいと思いました。そして、ギターを抱えて歌っていた中学時代に戻って、古い曲の楽譜も手に入れてみようと思いました。

「小椋佳の世界」-NHKアーカイブス(2004年10月25日)
「思い込み」--小椋佳(2005年08月09日)


  


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2012年06月17日 23:00

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