« good vibrations | メイン | ヒメツルソバ »

2012年06月25日

「週末、森で」---益田ミリ

[books ,c-森林をいかす家づくり--moriiki ]

「週末、森で」
著者:益田ミリ 幻冬舎文庫

家内が好きな作家に私自身もはまってしまうことが時々あります。
宮部みゆき、斎藤隆介、町田康、ジョン・アービングもそうです。
そして、つい最近、家内がはまって、私も一気に読んでしまった作家が益田ミリさんです。
代表作の「すーちゃん」も良かったですが、なかでも、この「週末、森で」という本がよかったです。

主人公の早川さんは懸賞で自動車が当たったことがきっかけで、都会を離れ田舎に引越します。
田舎とは言っても駅の前ですし、畑を耕したりと自給自足のエコライフ、ナチュラルライフを実践するわけではありません。
田舎暮らし、というと、どうしてもそうしたエコライフやナチュラルライフの実践のために、というイメージがついてきてしまいますが、早川さんはそういうこととはまったく縁がありません。
自然のなかで、自然体で暮らす一人の女性として描かれています。

早川さんには仲の良い友人が二人います。マユミちゃんと、せっちゃん。どちらも都心でOLをやっていて、その二人が週末になると早川さんの家に遊びに来るようになります。手土産は都会のお店でしか手に入らない限定スウィーツだったりします。その二人は早川さんと森を歩きいろいろな気づきをします。その気づきが彼女たちを森へと誘うのです。

私も学生時代にワンダーフォーゲル部にいて日本の山を歩きまわりました。今でもキャンプをしたりとアウトドアでのナチュラルな生活が好きですし、そういう生活を日常にしてもいいなとも思っています。でも、ナチュラルライフが良いということと都会生活がダメだということはつながりません。だから、ナチュラルライフを実践している人のなかで、時に、都会での生活を批判する人がいますが、それはどうもピンと来ません。

私は自分のことをエコロジストであると思います。森林生態学をもとに森を生かした家づくりができることを願っていますし、そこに近づくためにはどうしたら良いかを日頃の実践目標にしてもいます。しかし、現実は、そうした森をいかす家づくりから随分と離れてしまっています。その現状を真っ向から全否定してしまうことも、言論としてはありえるのでしょうが、そのようなヒステリックな否定だけはしたくないと思っています。まずは現実を受け止めること。そうすると、人間の欲望というものが社会を動かしているということに 気が付きますし、自分もその欲望を持って生きていることを否定できないことにも気づきます。

ヒステリックな否定の行き着く先は、欲望の全否定になるでしょう。欲望を失った人間なんてありうるのでしょうか?逆を言えば、よりよい社会にしたいというのも人間の欲望です。要は欲望をひとまとめにして否定することは出来ないと思うのです。人間の持つ欲望の肯定から始めないといけないと思うのです。

森とともに生きることこそが、森をいかす家づくりにつながります。森にゆきたい、森の中で過ごしたい、という欲望。その欲望を感じてもらうことが大切です。その気づきが大切です。
私がこの本が素敵だなと思うったのは、この本では、日常的な表現として、森にゆきたいという欲望を、優しく表現していると思うからなのです。

 


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2012年06月25日 13:21

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://af-site.sub.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/2535