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2016年06月 アーカイブ

2016年06月01日

空き家対策はイニシャルコストをかけない

空き家対策を取材していると、イニシャルコストをいかにかけず直せるかということと、空き家の運営活用をどうやって持続的にできるかが成功の秘訣と思える。ここで、必要なのはコストを掛けたフルリノベーションサポートというよりもフットワーク軽いセルフリノベーション。設計者のスキルとしては、耐震診断と耐震改修、断熱改修といった技術的なフォローとセルフリノベーションサポート。そして、運営活用に関するアドバイス。すでに、この世界に特化した設計者が活躍し始めている。
ただ、考えてみれば、このスキルは技術力と提案力ということであって、以前から新築の仕事においても設計者に求められていたスキルであり、つまりは、形を変えたにすぎないということにも気がつく。

(初出 Facebook 2016年5月2日)

シェアする家、開かれた住宅

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住宅という枠組み。物理的には屋根や壁に囲まれた空間。その中の人。人と人のつながり。家型に囲まれた人と人の集まりは家族。家族はある一方で、構成員それぞれが家という枠組みを超えて人と人のつながりをもつ。それはコミュニティ。

マイホーム主義が席巻し、自らの土地の囲い込みが加速して、場所を共有している感覚が薄れたここ数十年。同時に、住宅の乱立と都市部への集中で、地縁コミュニティが解体されてきた。住民がある程度若いうちは成立していたマイホーム主義も、高齢化が進むと成立するのは難しい。自らの土地の囲い込みによるマイホーム主義の価値観から、地域で共有してゆくシェアの価値観への転換が迫られている。若者たちはその変化に気づいている。

とすると、住宅とは何か?

新たなコミュニティを育む場所として、住宅は機能し始める。

私が設計した家の中でも、住まい手は自らの住まいを外に対して開いてゆこうと家づくりをされた方が少なくない。

友人が多く、20人以上呼んでパーティが出来るような広いリビング。主婦仲間とお互いの持っているスキルを教えあう場所。子供会の世話役としてみんなを呼ぶ場所。ご近所の奥様方と一緒にパンを作ったりクッキーを焼いたりする場所。仲間とショップが出来る場所。アートギャラリーとして時々開放されるリビング。時にはミニコンサートも出来る音楽スタジオのある場所。合唱団のパート練習が出来る場所。

どれも、今までの住宅の概念を超えて、しかし、地域のつながりを、人と人のつながりを育む場所を、住宅の中に作っている。それはすべて、囲い込みではなく、シェア。自らの場所をシェアしながらコミュニティに開放してゆく。

住宅が家族を超えたコミュニティを受け入れる場所になってゆく。

住宅とは住まい手の生活の場所である。住まい手の生活は家の中だけにとどまらない。家の中にそれを取り込む事で、もっともっと楽しい生き方が待っている。

(初出 Facebook 2016年5月9日)

空き家対策を成功させるために

各地の空き家対策を取材したり、空き家対策の相談を受けたりしていると、空き家対策というのは、コミュニティデザインなんだとつくづく思います。
そこに必要なのは、各方面のプロフェッショナルな人材と、その人材をつないで活力に変えてゆく、技術力と提案力、そしてコミュニケーション力を兼ね備えたマネージャーです。
ですから、マネージャーには、参加者の意見や考えを引き出してまとめ上げるファシリテーターの力量も求められます。
それぞれのプロフェッショナルな人材が一人でも欠けていると動きませんし、人材が揃っていてもマネージャーがいなくては動きませんね。
ただ、このマネージャーというのが、今までの職種のどれに当たるのか難しい新しい仕事。そのなかで、建築士がマネージャーをやるというのは、かなりリアルな展開だと思います。もちろん、すべての建築士にマネージャーが出来るというわけではないですし、残念ながらそれが出来るのはかなり限られた方なのだと思います。

(初出 Facebook 2016年5月10日)

保存するということ

Facebookでシェアした記事があります。

「実家が町の重要文化財に指定されそうになったけど全てぶっ壊して新築した「そりゃ建て替えるわ」」

http://togetter.com/li/979810

その記事に対する僕の感じたことです

僕は学生時代に民家の調査に同行させていただいたことが何度かあるのですが、調査にあたり、なんでそんなことするのか?、と疑問に思われる住まい手さんも少なくなくて、そうした方に、その建物がいかに価値があるのかをご説明して説得する事がありました。

確かに価値がある、もう今となっては作ることのできないものですから、記録として残しておくことはとても大切だと思うのですが、そのために人の生活の中にドカドカと入っていく事になって、それって本当にどうなのかなと、その時、そういう疑問も抱えていました。

古いものを残してゆくことの大切さを住まい手さんにも十分に理解してもらってから調査が行われる場合は良いのでしょうが、どうしても全ての人の理解を得られているわけではなかった、ということですね。

その時に考えたのは、古いものを残して行くことは完全にいつの時にでも正しいのか?ということなんです。

調査にうかがったお宅では、屋根が杉皮葺きで、大学の先生が珍しいから残しなさいと言われて残していましたが、それが本当に良いことなのか?という事なんです。

残すか残さないか、それは誰の判断によるのか?学術的な価値も大切だが、それだけで残すという判断をしても良いのか?特に住まい手のいる建物を残す場合にはどうなのか?住まい手との歩み寄りが必要なのではないのか?

そんなことを、以前に考えていた事と、この記事が重なりました。

この記事の場合には、住まい手との歩み寄りがうまく行かず、最悪の結果を生んでしまったわけです。最悪の結果にしない、歩み寄りが出来たのではないか?歩み寄ることができなかったというのは、一方の持っている価値を押し付けてしまったのではないか?そこに大きな問題があるのではないか?

この記事をシェアして言いたかったのはそういうことなのです。

(初出 Facebook 2016年5月29日の投稿に対する自らのコメント)

2016年06月02日

アトリエフルカワの家づくり18年展@家具蔵

港区青山にあるオーダー家具ショップの家具蔵にて
「アトリエフルカワの家づくり18年展」と称して個展を行います。

日時 6月11日(土曜日) 12日(日曜日)−2016年
両日とも 11時から18時まで
会場 ハウススタジオKAGURA
港区青山5-9-5(添付の案内ハガキ参照)

また、12日の日曜日の午後2時半から
声楽家である「MUSES_House」の奥さまとのトークイベントとミニコンサートを行います。
武満徹の曲を何曲か歌ってくださるそうで、私もとても楽しみにしております。
みなさまも是非お出かけください。

<以下、案内文>

家づくり、ってなんでしょう?
事務所をはじめた時に家づくりとは
建主さんと一緒に畑を耕すことなんだと書いたことがあります。
アトリエフルカワがいままでお手伝いさせていただいた家は
すべてが建主さんと一緒になって土を作り、
種をまき、芽が出るように水を上げて、
育て上げてきた思い出の仕事ばかりです。
そして、一つとして同じものがない家ができあがり、
建主さんの生活を今も育んでくれています。
ある家では、建主さんはご自分でドライバーを持ち
コテを握り刷毛を握って作り上げた家もあり
一緒に伴走させていただきました。
アトリエフルカワはさまざまな家づくりをサポートしてきました。
そして18年。家づくりは建主さんの人生そのものではないかと思います。
今回の展示では、
そんなさまざまな家をみなさんにご紹介してゆきたいと思っています。
12日の日曜日の14時半からは
声楽家である住まい手さんをお招きしての
トークイベントとミニライブも行いますのでおたのしみに

2016年06月15日

家具蔵での個展、終了いたしました

6月11日と12日(2016年)の2日間にわたり行われた家具蔵さんでの個展、無事に終了いたしました。
会期中にお忙しい中、お出かけくださいましたみなさま、ありがとうございます。
また、ご都合がどうしても合わず残念だとメッセージをくださったみなさまにも、そのお気持ちに深く感謝です。

ご来場者は、両日合わせて94組134名でした。実はお名前をいただけなかった方も数名おられましたので、それ以上の方に観ていただいたと言う大変嬉しい結果となりました。

私も、自分の18年の歩みを振り返る良い機会をいただいたと思います。会場で時間の合間に自分の展示を眺めていて、うーん、18年、同じことをやり続けていたなと感じました。これからの自分も、多分変わらないでしょう。自分の進む道を改めて確かめさせていただきました。

マンネリ、かもしれませんが、ブレていない自分に自信を持つ事も出来た展覧会だったと思います。

というわけで、アトリエフルカワ、今後とも、よろしくお願いいたします。

それにしても、MUSE_Houseの奥様が歌われた武満徹、心に沁みました。ありがとうございます!


2016年06月20日

「火事に負けない木造の福祉施設・幼児施設をつくる」

昨日(2016年6月19日)は、木の建築フォラムの公開フォラム「火事に負けない木造の福祉施設・幼児施設をつくる」に事例紹介で登壇。わらしべの里共同保育所のお話をさせていただきました。
ホールの定員は300で250人以上のご参加をいただけたということで熱気ムンムンの会場。さらには、山長の榎本さん、速水林業の速水さん、有馬先生など、会場にお姿を発見、聞きに来られていまして、私もキュッと緊張。
内容を盛り込みすぎで、早口になってしまったのは大いに反省をするべきところですが、フォラムの後の懇親会で、良かったと声をかけてくださる方が少なからずいてなんとも嬉しい時間となりました。
ご参加くださった皆様、懇親会でお話しさせていただいた皆さま、お疲れ様でした。
今回の企画をしてくださり事例紹介でご指名くださった安井昇さん、スタッフの皆さん、お世話になりました。
最後の締めの安藤先生は筑波時代に大変お世話になった恩師であり、恩師からの言葉はとても嬉しかったです。
良い木の建築が、これからも増えてゆくことを願うばかりです。

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