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2004年06月11日

「北の国から」--五郎さんの家

[00-家づくりについて---house_making ,ゆっくり--slow ,映画・ドラマ・舞台--movie/play ]

五郎さん、とは黒板五郎さん。北の国から、である。
実は、私はこのドラマに全く縁がなかった。
テレビで放映しているときも、その後定期的にスペシャル番組が放映されたときも
一度として観たことがなかった。

それが、年末だったか新年だったか、
宮沢りえが出ている「秘密」からを一挙に放映したのを
ビデオに撮って観てしまった。
その中で、五郎さんは石の家を完成していた。
何年もかかって一つ一つ石を積んで作った家だ。
そのあと、五郎さんはいくつかのごみの家をてがける。

ドラマの中で何度も振り返る、六郷に最初に来たときのあばら屋の映像。
純は こんなところにはとても住めないと言う、そういうぼろぼろの小屋。
私には、そのぼろぼろの小屋がどうして石の家になったのか、もちろんさっぱりわか
らない。最初は、ただなんとなく「わからないなあ」と、でもそれなりに それぞれ
のドラマは独立していて面白かったのでそれほど気にならなかったのだが、どうもい
けない。どんどんどんどん、気になり出した。気になり出したら止まらない。それで、
思い切って テレビ放映されたオリジナルの第1回からビデオを借りてくることになっ
た。

ほとんど廃屋の小屋を少しずつ手入れして、住めるようにしながら、沢から水を引き、
風力発電までやってしまう。
五郎さんは奥さんとの離婚を示談中。ぼろぼろの家に人が住み始め、そこには父と息
子、娘がいる。一つの家族。お母さんはいない。お母さんは弁護士を通して子供たち
に会おうとする。子供たちは、どうしてお母さんの代わりに見ず知らずのおばさんが
そこにいるのか、理解出来ない。みている私も理解出来ない。
でも、そこにしかない、一つの家族。そして、だれにでも心通じる一つの家族の姿が
ある。父と子、母と子。家族って何だろう?そして、最終回にやって来る母の死。

そんななか、五郎さんは家を建てる決心をする。丸太小屋だ。
「夢の丸太小屋」と純に語らせる。完成した丸太小屋はすてきだ。近くに生えていた
唐松の丸太を使っている。
この丸太小屋も 火の不始末で全焼してしまう。家が燃える。
アンドレイタルコフスキーというロシアの映画監督がいる。
彼の作品では家が燃えるシーンがとても印象的に使われている。
家が燃える。

家と言うのは、やはり心のよりどころだ。あたりまえ・・・・かあ、でもね。

五郎さんはこつこつと次の丸太小屋を建てるために働く。
その間、空き家を借りたり、材木屋さんの作業小屋を借りたりして生活する。
大工の見習いになったりもする。
子供たちは独立し家族はばらばらに生活をする。

しかし、丸太小屋のために買いためた丸太も売り払うことになる。これも、家族だ。
純のため?いや、家族のためだ。(ドラマを観ていないと分かりにくいところですね)

そして、丸太小屋を建てようと 作ってきた石を積み重ねた基礎の前で
五郎さんは石の家を造ろうと決心するのだ。

富良野の原野を畑に開墾しようとすると大きな石がごろごろ出てくる。
大きな石を取り除く作業に、役所は補助金を出した。
でも、そうやって掘り出した石の処理については誰も何もせず
開墾された畑の脇に高々と積まれて放置されている。
その石を使って家を建てるというのだ。

何年か経って 石の家は出来た。その作っている様子は一切映像では語られない。
そこがすごい。気の遠くなるような地道な作業。石を積む。
出来上がった家がすべてを語っている。

私は 北の国から のシリーズをすべて観てしまった。
その後で、石の家のもっている「背景」に思いを巡らせている。

(アトリエフルカワ通信 Vol.50 より転載)

倉本聰さんが、富良野を舞台にどうしてドラマを書こうと思ったのか。
昨日のエントリーで高橋延清さんの著書についてふれたが
倉本さんは富良野で高橋さんに出会い、そして慕うようになる。
「北の国から」の舞台も ほぼ東大北海道演習林の周辺だ。

「北の国から」と言うドラマは
テレビの画面に映し出されるその自然がそのまま倉本さんのメッセージである。
一方で、それは倉本さんにとっては
「どろ亀さん」のメッセージを我々にイントロデュース(導く)するという意味を持っていた。
「どろ亀さん」のメッセージを多くの人に伝えなくてはならない、
という倉本さんの強い意志が
富良野の自然を映し出す映像に込められている、
そんなことをドラマを繰り返し観ながら感じている。

投稿者 yasushi_furukawa : 2004年06月11日 10:34

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