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2005年06月30日

「空腹の技法 The Art of Hunger」--ポールオースター

[books ]

「空腹の技法 The Art of Hunger」
著:ポール・オースター 訳:柴田元幸、畔柳和代
新潮文庫 →amazon

オースターのエッセイ集。
The Art of Hungerというのは、The Art of Fuga(バッハ)のパロディに違いない。
しかし、読んでみるとそんなに軽いものではない。
第一部は現代フランスの詩を中心とした硬質な文芸論集。
第二部はオースターが翻訳したり関わった書物の序文集。(これも硬質な文芸論)
そして第三部がインタビューとなっている。
オースター好きならば第三部のインタビューは興味深く読めると思うが
その他はかなりきつい。
きついといいながら読んでみるとかなり面白い。

韻文と散文。詩と小説。どちらも同じ言葉なのに、そこにある大きな溝。
そういうことに意識的になってみること。そういうことを考えさせられる。
そして、僕は、第一部と二部を読みながら、宮川淳
韻文とも散文とも着かない評論を思い出していた。

二人を関連づけるポイントはきっとこうだろう。
オースターが深く関わっているのがフランスの現代詩とその作家であること。
宮川淳がよりどころとしたのはフランスの現代思想であり、そこで語られる言葉だったこと。
フランスの現代詩については僕は全くの門外漢であるが、
オースターの書く文章にモーリスブランショの名前が出てきたりするわけで
この二人は深いところ、それはフランスの現代詩(現代文学)、でつながっているのではないかと思った。
とすれば、いままで宮川のあの独特な余韻を含んだ文体を、宮川独自のものだと思っていたことが間違いで、
その余韻というものはフランスの現代文学に通底している、個人の表現を超えたものであったのではないか、ということ。
これは、とても面白い。これからじっくりと考えてゆきたい課題でもある。

底でつながっているというもう一つの話。
ヴェンダースとオースター

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年06月30日 09:53

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空腹が作り出した闇を彼はのぞき込む。そこに見出されるのは、言語の虚無だ。現実はいまや彼にとって、物のない名たちと、名のない物たちから成る混沌と化している。... [続きを読む]

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