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2005年10月26日

「告白」---町田康

[books ]

「告白」
著:町田康 出版:中央公論新社
amazon

或る夜、仕事を終えて家にたどり着くと
寝かしつけた子供たちから解き放たれた家人が、熱心に本を読んでいた。
聞けば、一度読み終え、もう一度読んでいるという、それは、
町田康の新作とのこと。
その夜以来、家に帰り我が顔を見るたびに、読め読めとの家人の進言。
うーん、町田康、そうそう、猫の話、よかったよね。
なんて、思っているし、「夫婦茶碗」はすごいと思ったよ、と
僕も結構なフアンなんだけれども、目の前に差し出された本は
総ページ数で670ページ以上にも及ぶ、著者、類にみない超大作なのであった。

とりあえずは、自分のなかでリストアップされている読んでみたい本が何冊かあって、「アースダイバー」もその一冊なんだけれども、そうした様々なる本を読了した暁には、手を出してみようかなー、なんて思っていた。

そしたら、朝日新聞に「大江賞」なるものができて、町田康もノミネートされるようなことが書かれていた。
そういえば、家人の「この本、ほんとにすごいよ」という言葉が脳裏をよぎる。

というわけで、一気に(とは言っても4日かかった)読了してしまった。

さて、中身はというと
取り柄のないヤクザものが世をすねて、悪い奴らにだまされて、
その仕返しに、10人もの人を惨殺したという実話をもとにした
河内音頭の古典でもある「河内十人斬り」を題材にした小説である。
しかし、そんな話の骨格なんてぶっ飛ぶような中身がこの中には詰め込まれている。

熊太郎の最後の言葉「あかんかった」。
この言葉がすべてだ。
その言葉の刹那さを
この本を読んだものなら誰もが感じると思う。

そこには、人間の存在の核心、梅干しの種がある。
生きているという人間の業の刹那さがそこにはある。

大げさに聞こえるかもしれないが
本を閉じた二日経った今でも、僕は、高校のときに読んだドストエフスキー以来ともいえる「がつん!」を食らったような、めまいのような、幻惑のような、そんな、ちょっと不気味な余韻を持て余しているのだ。

町田康は、小説という枠にとどまることなく、自由に言葉を使って、こうした世界を描き上げた。
感嘆!

<蛇足>
群像11月号」は大江健三郎の特集だが、この中で大江は自ら指名して町田康との対談を実現している。
大江は町田のパンク魂に感嘆している。そこに、大きな可能性を認めている。安っぽい言葉になるが、大江は「告白」を絶賛しているのだ。

町田康はこの「告白」で第41回 谷崎潤一郎賞を受賞している。

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年10月26日 09:30

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トラックバック時刻: 2005年10月26日 10:37

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トラックバック時刻: 2006年05月20日 16:04

コメント

今日渋谷で遅まきながら中沢新一の「アースダイバー」を購入した。皆様をあのような行動にかきたてる本である。紀伊国屋書店の「かの本」のそばに町田康「告白」がおいてあり奇妙に気になった。少し立ち読みしてどうしようか迷ったが、中沢氏2冊を購入した。それがまたまた今日でした。そして帰ってからこの記事を読んだわけです。

投稿者 shin : 2005年10月29日 00:32

shinさん
「告白」は、絶対にお勧めです。
「アースダイバー」よりも、僕は「告白」をすすめます。
近年まれに見る小説だと思います。
読まれましたら、是非感想をお聞かせください。

投稿者 fuRu : 2005年10月29日 21:17

たしか、河内が題材になったお話ですね。
うちの村の水分神社にも町田さんが取材に来たと言っていたので、
読もうかと思っているのですが、まだ読んでません(^-^;)

読み終わりましたらご感想お聞かせくださいね。

投稿者 エツロ~ : 2005年10月31日 21:04

エツロ~さん
「水分神社」 うおーっと、まさにこの小説の舞台。
それは、是非読まなくてはなりません。
すごい小説です。

投稿者 fuRu : 2005年10月31日 21:39

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