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2006年10月30日

宮本英治という人の仕事と三春堂さん

[アート--art ]

ちょっと、気負った、良い仕立ての服を一枚くらいは欲しい。
半年ほど前に、目白の三春堂さんのオーナーであるmiharuさんにそんな話をしたら、思い出したように、奥から一枚のテーラードのジャケットを出してきてくれた。

三春堂さんといえば
現代工芸のセレクトショップというイメージがあるが
洋服もオリジナルで創られている。
オーナーのmiharuさんが生地を選びデザインする。
それだけでも一枚一枚が特別なのであるが、
選ばれた生地へのこだわりについては並大抵ではないと、以前から感じていた。
あんな服いいなあ、と思わせる何かがそこに、ちゃんとある。

恥ずかしながら、僕は宮本英治さんという方を存じていなかった。
「ファブリック・デザイナー」という肩書きを持つ人は
世の中に何人いるだろうか?
宮本英治さんは誰もが認める「ファブリック・デザイナー」の一人である。

そして、miharuさんが奥から出してきてくれたジャケットも
宮本英治さんの生地を使って仕立ててあった。

ここに、1991年10月24日から11月3日に三春堂ギャラリーで行われた
「宮本英治のファブリック展」の時に作られた二つ折りの印刷物がある。
この中で、植田実さんが宮本さんにインタビューしているのだが、これが大変面白い。

布地は手織りと機械織りがある。
われわれは、表情のある手織りと、無表情な機械織りと、考えがちであるが
それが全くの間違いなのだという。
現在の手織りの布の多くは機械でも織れるのに対して
機械で織れるが手では難しいという布の方が多いのだそうだ。

手作り、というだけで価値があるように錯覚してしまうことに対して宮本さんは厳しい。

もちろん大量生産となると話は別だが
大量生産が難しい特別な生地を必要なだけ注文に応じて機械で織るのが宮本さんのやりかた。
そこに自分のオリジナルな世界を求めた。

こうして書くのは簡単だが、実際は大変な作業が伴うわけで
インタビューでも、織りのパターンの組み合わせを一つ一つ検証して
試し織りを繰り返して、一枚の布を完成させてゆく作業が語られているが
そうした根気と集中力が必要な作業を何年もやり続けられていると言うところに
宮本英治の非凡なものがあるのだと思った。
そして、その非凡さはイッセイミヤケとのコラボレーションとして結実してゆく。

なんだか、知れば知るほど、大変な人が作った生地で出来たジャケットを目の前に広げられたわけである。
袖を通せば、まるで私のために仕立てられたかのようにすっぽりと包まれた。
こういうのも運命なのかもしれない。

というわけで、思い悩むこと半年。
さきほど、清水の舞台から飛び降りて購入してきたのがこのジャケットなのであります。

ちゃんと、三春堂のタグも付いていますよ。

「もの」というのは、本当に奥が深い世界を持っているものだと思いましたし
その奥の深さも、こうした出会いがなければ知らないで通り過ぎてしまうわけですよね。
なんだか、不思議な気分で、いま、ジャケットを眺めております。

みやしん(株)ホームページ

サイバーシルクロード八王子の宮本さんのインタビュー記事

投稿者 yasushi_furukawa : 2006年10月30日 10:15

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コメント

宮本英治という名は初めて耳にしましたが、イッセイミヤケのプリーツ・プリーズを八王子の織物業者が生産しているのは、テレビ番組の特集でみたことがあります。
PS:プラスチックハンガーではジャケットが可哀想。

投稿者 iGa : 2006年10月30日 10:58

宮本さんという方は八王子に本拠地があります。
記事中の「みやしん」というのは宮本さんの会社ですね。
iGaさんがコメントされているイッセイの仕事も宮本さんとの仕事だと思います。

>PS:プラスチックハンガーではジャケットが可哀想。
ご指摘、さすがです。これは、事務所で写真撮影用につるしたものです、なんて、言い訳していますが、
今は、自宅でちゃんとつるされています。(^^;)

投稿者 fuRu : 2006年10月30日 11:09

糸を作る段階、織る段階、仕立て、流通、、、、
魂の入った仕事の連鎖の最終担い手となるのは、文化の循環の輪をまわす事だと思っています。カチッと音をさせるのは、使ってくださる方だと思います。
いつか私も、fuRuさんのお仕事の最終担い手になるわぁーーん♪
このジャケット、ステキ。男前、あがるわぁーーーーーん♪♪

投稿者 some ori : 2006年10月30日 22:19

some oriさん
こんばんわあーーーーーー♪♪
語尾が伸びておられるのが、ちょっと気になりますことヨ。
私も語尾が伸びてしまったヨ。
私もそのうちに和服の似合う男になりたい所存でありますことヨ。
その時は、一反匁、でなくて、一反織ってくださりませ、と思う次第でございますことヨ。
では、では。

投稿者 fuRu : 2006年10月30日 23:06

furu さん
清水の舞台から飛び降りさせてしまいました。お怪我はありませんか。でも、そのジャケットをお召しいただき、着心地や味わいを深く知っていただけると、更に納得していただけると思っているのですが。(とくに、数年後に)
それにしてもジャストサイズとは、あのジャケットは長ーいことfuru さんをお待ちしていたとしか思えません。これも、奇跡のような出逢いという気がしています。

投稿者 miharu : 2006年11月01日 06:37

miharuさま
こんにちは
清水の舞台というものは
飛び降りると、そのまま落っこちてしまう場合と、背中に羽が生えて飛んでゆく場合があります。
私の場合、まだ、ちょっとどちらかわからないのですが
願わくば飛ぶほうを、と思っています。
しかし、これ、本人次第なのでありますね。(^^;)
服に負けないようにがんばりますね。

投稿者 fuRu : 2006年11月01日 09:39

このジャケットに合わせるトラウザーズを選ぶ所から勉強が始まりますね。

投稿者 いのうえ : 2006年11月03日 00:56

おおっ!
いのうえさん こんにちは。
先日は、ユコトピア、ご一緒できませんで残念でした。
うん、プロからコメント、ですね。ちょっと緊張しますね。
ちなみに、このジャケットですとジーパンでも似合うのですよね。
ずいぶんと、安上がりな発想をしていますが
実は、きっちりとしたマオカラーのジャケットと、このジャケットで悩んでいたんですが
古川らしさを自然に表現しているのはどっちかなと考えて
こちらの、軟らかい表情の方にしました。
まあ、普段着、というふうに割り切れる値段の服ではないのですが
服は着てなんぼ、の世界だと思っていますので、ある程度雑に着ても良いかなと思っています。
今度、テーラードの御指南、よろしくお願いします。

投稿者 fuRu : 2006年11月03日 09:28

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