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2004年06月20日

「建築はほほえむ」-松山巌

[books ,ゆっくり--slow ]

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松山巌 著
西田書店 ISBN4-88866-385-9
定価:1300円+税

書かれている言葉の一つ一つが
スポンジが水を吸い込むみたいに吸い込まれる。
どこに?
そんな本はずいぶんと久しぶり。
言葉たちはどこに吸い込まれたのか・・・・。

僕は松山巌さんとは面識がない。
東京芸術大学卒。
現在、小説・評論の執筆活動をされながら、芸大で教えられている。
この本は、これから建築を学ぼうとしている学生にむけて書いたのだという。
しかし、引用されるジオ・ポンティの「建築を愛しなさい」と言う言葉が
この本の底辺に最後まで響いているその調べを聴くと
これは、学生むけの入門書のような薄っぺらなものではないのは明らかだ。

建築家のN氏は、何度も読み返す本だよ、とこの本を薦めてくれた。

「不思議に思えてくるのが不思議だ」
この不思議な言い回し。
本を書くという行為や批評するという行為が
知らぬうちに身にまとってしまう特別に高くしつらえられた視座。
そうではなく、「日常」にレベルを設定されるべき「建築」を見る眼。
不思議なことではない「日常」、それをありのままにとらえること。
この本は、そういう視線に貫かれている。
そして、その視線は「建築を愛しなさい」という言葉と響きあい
「日常への愛のまなざし」をつむぎ出す。

僕は住宅の設計をやっているが
住宅の設計とは「日常をデザインする」ことだ。
何の変哲もない我々の、
そして設計を依頼してくださる住まい手を取り巻く「日常」を
「家」というかたちにすること。
そこには奇抜なレトリックも何も必要とはされず
「日常」をしっかりと受け取る器が必要とされる。
我々住宅設計者に求められているのはその器だ。
しかし、これは住宅だけに限らない。
人のいる場所、すべてについて当てはまる。

僕が住宅の設計という現場でいつも考えていること。
「日常をデザインする」ということ。
そのことが、この本の中にストレートに語られている。
そのストレートな言葉が僕の中に響く。
井戸の底に小石を投げ入れたみたいに。底の奥から。

「あなたが好きな場所」
「小さな場と細部」

人間の日常という視点に立って
建築を考えること。
その当たり前のことがあまりにもないがしろにされてきたのではないか。

この本は建築を学ぶ人に限らず
多くの人に読んで欲しい本だと思う。
これから家を建てる方には特に読んで欲しい本だ。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年06月20日 20:55

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