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2004年12月01日

「ソウル・オブ・マン」--ヴィム・ヴェンダース

[映画・ドラマ・舞台--movie/play ]

「ソウル・オブ・マン」
監督:ヴィム・ヴェンダース

映画の日、モーニングショーで朝一回だけ上映されている
「ソウル・オブ・マン」を観てきました。
kawaさんのThings that I used to do.でも紹介されていた
The Blues Movie Projectで製作された映画のなかの一本。
僕としては監督がヴィム・ヴェンダースというだけで観る価値があるというもの。

ブルースとの最初の出会いは高校生の時。
それは、レッド・ツエッペリンであり、クリーム、そして、ジミ・ヘンドリックスを通してでした。
その後、ロバート・ジョンソンのレコード(1930年代の録音)を買い
そこから流れてきた、ギター一本での弾き語りに僕はうなってしまったのです。

ブルースは魂の叫びである、というような言われ方をよくします。
それは、ブルースという音楽が人の生きているその場所から自然に生まれたからなんだと、この映画を見て思いました。

三人のブルースシンガー達。
ブラインド・ウイリー・ジョンソン、スキップ・ジョンソン、J.B.ルノアー
彼らはビッグマネーの動くショービジネスと縁のないままその死をむかえました。
でも、才能あふれる彼らの姿は、いくつかの録音として残されていました。
そして、その記録が彼らの死後も僕らに大きな影響を与えていることを考えると興味深いかぎりです。
そんな記録を聞いていて思うのは、彼らはなぜに唄を歌ったのでしょうか、ということ。
そして、どうして歌い続けたのでしょうか。
もちろん、唄を歌うことによってパンを買っていたのでしょう。
生きるための手段。でも彼らの姿には、それを超えたなにか、そうせずにはいられなかったような必然性を感じてしまいます。
ブルースは黒人音楽(大衆音楽)のルーツであると言われています。
そこには人々の生活をささえた「音楽」の姿があるのですね。
唄わずにいられなかった彼らの姿に「音楽」の原点を見たような気がします。

音楽は人の生活に結びついてきたわけで、その関係は、近代になり、社会と音楽という関係を迫ることになります。
J.B.ルノアーは1960年代に開花する公民権運動を音楽で表現したパイオニアでした。
同じ人間として生きているという主張、それがブルースの魂とこの時に深く結びついたのです。

メイオールはJ.B.ルノアーを広く世間に(若者に)知らしめ
ヴェンダースも彼の名を知ります。

映画の後半は記録フィルムをヴェンダースが編集したものをバックに
ブルースの歌声が響きます。
使われた記録フィルムには、KKK団、ヴェトナム戦争が写っています。

僕は、ポール・オースターの「ミスター・ヴァーティゴ」で
主人公と一緒に暮らす黒人のイソップ少年とネイティヴインディアンの女性が
KKK団に捕まって馬で引きずり回され、つるし首にされ、焼き殺されるシーンを思い出しました。
アメリカが抱えている暗い歴史にブルースはその根っこの部分で共鳴しているのです。
そして、暗い歴史を抱えてただ暗い目をしているだけではない、明るい未来をけっしてあきらめない、そういう強い意志もブルースの中には脈々と熱く流れているのだと、この映画を見て強く感じたのでした。
音楽に何が出来るか、そういう原点を考えさせ感じさせてくれるとてもいい映画だと思いました。

The Blues Movie Projectというのは
やはり映画監督のマーティン・スコセッシンが音頭を取って
”ブルース誕生100年”である、今年-2004年に行われた記念事業。

The Blues Movie Project-公式ホームページ

「ソウル・オブ・マン」はシブヤ・シネマ・ソサイテイでモーニングショーにて公開中。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年12月01日 14:37

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映画の日だったので、札幌駅前のシネマフロンティアというシネコンで、ヴィム・ヴェン [続きを読む]

トラックバック時刻: 2004年12月02日 00:01

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コメント

TBありがとうございます!いい映画ですねえ。シリーズみたいと思ってます。

投稿者 コンサおじさん : 2004年12月02日 00:11

コンサおじさん こんにちは
ほんとにいい映画で、僕は後半、目元がうるんでしまいました。
これって、歳なのかな。

投稿者 fuRu : 2004年12月02日 10:17