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2005年08月08日

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」---ポール・オースター編

[books ]

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」
編:ポール・オースター 訳:柴田元幸他 出版:新潮社
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ポール・オースターの呼びかけで
集まった数々のストーリー。
「私たちの物語を送ってほしい」
「ただし、条件がある。短い、本当に起きた話でなくてはならない。」

1999年10月。第一土曜日のラジオ。
一年間で4千通以上の投稿。
それらをすべて読み(オースターは「格闘」と表現)
毎回5〜6話をラジオで朗読した。
その放送を聴いて、さらに多くの人が投稿した。

この本は、ラジオで紹介された話をさらに絞り込んだ179の話。
(オースターにいわせると、ここに収録された話には同じ部類の話が他に何ダースもあるという)
それが、一冊の本として、このように我々の目の前に差し出されたのだ。

このなかには、ありそうもない不思議な話ばかりがおさめられているわけではない。
なんということのない、普通の話もかなりある。
そして、その普通の話の多くにこそ
僕は心惹かれ魅了されたのだ。
いかに、我々の普通の暮らしのなかにこそ、多くの豊かな物語が潜んでいることか。
物語は、けっして映画や小説・ドラマのなかだけにあるものではないのだ、という気づき。
我々の人生がいかに豊かな物語で満たされているのか。
この本は、その存在で持って僕らに語ってくれている。

先ほど読み終えて、なんともいえない余韻に浸りながらこの記事を書いている。

ちなみに、原題は「I Thought My Father Was God 」。
確かに、アメリカ人の目から見ればこのタイトルこそが言い得て妙なのではあるのだろうが
日本人には通じないだろう。


侵略と拡張を原理とするナショナリズムとは違う、もうひとつの「ナショナル」な声(あとがきより)

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」という邦題を選んだ柴田らの考えなどもあとがきに示されていて興味深い。

<追記>
池袋のジュンク堂書店で翻訳者の柴田氏のトークショーが行われたそうです。
僕はいけませんでしたが、サーチさんのブログ「オーパス・ワン」に記事があります。
柴田元幸先生、「ポール・オースターのナショナル・ストーリープロジェクトについて語る」1〜4


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年08月08日 09:20

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» 編者P・オースター『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』 from mono-log,mono-list
発売当時手に取ったものの、ポール・オースター本人の著作でないということで興味が薄れ、読みそびれていた『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』。ポール・オー... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年06月22日 23:51

コメント

こんにちは。以前ヴェンダースの写真展についてコメント&TBさせていただいたsesamiです。
リスト機能が変更になって以来使いこなせておらず、こちらをまだリストに追加できずにいるのですが、
その後もちょくちょく訪問させていただいています。

同じ本、おくればせながら先日読み終えましたものでTBさせていただきました。
柴田さんのトークショーあったんですね。行きたかったなあ〜〜。

オースターの新作、待ち遠しいですねえ。

投稿者 sesami : 2006年06月22日 17:03

sesamiさん こんにちは
コメントありがとうございます。

ほんと、オースターの次の邦訳が待ち遠しいですね。
噂によれば、この秋にでもということのようですが
超多忙な柴田さんですから、長い目で見ていることにしています。

それよりも、やはり秋に村上春樹訳の「グレート・ギャッツビー」がでるようです。
こちらは、村上さん自身が確約してくださっていますので確かですね。
それにしても、この秋は来るのが楽しみな秋になります。

投稿者 fuRu : 2006年06月22日 17:19