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2005年09月07日

「ECMの真実」---稲岡 邦彌

[books ,ジャズ--jazz ]

「ECMの真実」
著:稲岡 邦彌 出版:河出書房新社
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ECMはレコード会社の名前だ。
大変個性的な音づくりで知られる。
「あれ、これECM風だねえ」なんて思っていると
それは本当にECMのレコードだったりする。
たぶん、ECMのレコードは、誰が聴いてもその特徴的な響きを聞き取ることが出来るのではないだろうか。
この本は、そんなECMの生い立ちから現在の地位を築くところまでを
日本人である著者が、ECMのレコードを日本で売り出す経験を通して描かれている。
加えてECMをつくってきたミュージシャンや関係者へのインタビューも収録されており、ジャズのレーベルのひとつとして発足したECMが、いかにして独自の世界を持ちながら商業的に成功したのか、その裏側を覗くようで読んでいてとても楽しかった。

いちばん印象に残ったエピソードは
プロデューサーである、マンフレッド・アイヒャーの怒りをかって
リッチー・バイラークの参加した3枚のレコードが
ECMのカタログから削除されたという話だろう。

プロデューサーという仕事がどういう仕事をする人なのか
僕は正確に理解しているわけではないが
ECMの個性的な音は、あきらかにプロデューサーのアイヒャーの力によるものだろう。
しかし、アイヒャーは実際に演奏するわけではない。
そこがポイントだ。
ECMの個性的な音は、音響的なものだけではくて、
ハーモニーなど明らかに演奏者の判断によっている部分にまで及んでいるからだ。

アイヒャーが譜面を書くわけでもない。
アイヒャーは自分のレーベルで録音するアーティストを選んでくる。
その判断にすべてがある。

「ECMにジャズ・メッセンジャーズ(アート・ブレイキー)はいらない!」
と、リッチー・バイラークに吐いた言葉に
アイヒャーの存在がある。

<蛇足-1>
その後、いまは亡きレスター・ボウイの「グレート・プリテンダー」というレコードを制作した時に
「いままでの、ECMと明らかにカラーが違いますが」という質問に答えて
「ECMはひとつのカラーにこだわっているわけではない」と答えたアイヒャーも
時代の流れに応じ、何事にも捕らわれない自由な一面もみせている。

<蛇足-2>
カタログから消えたリッチー・バイラーク参加のレコードは
一枚は発売されたが残りの2枚はいまだにお蔵の中だ。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年09月07日 10:00

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コメント

チックコリアの売れ筋ECM盤はポリドールが押えていたりとか、トリオ・レコードがECMとレーベル契約するまではアルバム単位で各レコード会社が契約して国内リリースされていたのでジャケットデザインがオリジナルと異なるものもありましたね。当時としてもジャズに力を注いでいたトリオ・レコードとECMとのレーベル契約は画期的なことでした。

投稿者 iGa : 2005年09月07日 11:29

数日前に、久々にECMのPat+JacoのCDを聞きました。
PatはECMに合いますが、
Jacoは違うようです。

投稿者 maida01 : 2005年09月07日 12:39

iGaさん どうも
トリオレコードというのは、もうないんですね、なんて思い起こしながら読んでしまいました。
そういえば、先日ブルーノートで聴いた
JESSE VAN RULLERの新譜をプロデュースした五野洋さんも
トリオレコード在籍中にECMに関わったことがあるとのことで、
関係者の一人としてコメントを寄せられていました。

maida01さん こんにちは
じじじ、実は僕、Patはちょっと苦手だったりします。
何でだろう。あんなに人気があるのになあ。
最近再発されたオーネットと共演しているのも、前から持っていますし
ジム・ホールとのデュオも持っていますが、どうしても遠い感じです。
唯一、ビル・エヴァンスに捧げた「September Fifteenth」の収録されている
「As Falls Wichita,So Falls Wichita Falls」だけは、良く聴きます。

投稿者 fuRu : 2005年09月07日 19:24