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2005年09月28日

「段ボールハウスで見る夢」---中村智志

[books ]


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「段ボールハウスで見る夢」
著:中村智志 出版:草思社
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吾妻ひでおの「失踪日記」のエントリーにTBをくださった
村上知奈美さんのブログ、☆ブログ版☆ 「東京ホームレス」にうかがった時に
この本のことが話題になっていた。
あー、そういえば、ずいぶん前だけれども
この本の存在を知って、読んでみたい本のリストとしてどこかにメモ書きしたままだったことを思い出す。

著者である中村智志は1993年12月から1998年の1月。
およそ4年間にわたり新宿の段ボールハウスに通い、
そこに住む住人達と時には寝食をともにして過ごした。
もともと、「週間朝日」の取材がきっかけだったとはいえ、
4年という歳月はしっかりと、この本の中に刻まれている。
段ボールハウスの住人の生の声として。

たとえば、マルさん

自分はこういうふうになりたいんだ、という意欲っていうのか、夢を持たなければダメなんだ。夢、希望がないってことは、孤独の第一歩だと思うし。でも、そのへんがない人が多いねえ。自分を捨ててるっていう人が多いですよ。国が仕事を与えていないのは確かなんだけど、それより根本的に自分はどう生きるんだということと、仕事がないから生きられないということは、それは別格の問題だね。今現状、生活していければいいんだ、という安堵感がある。僕はそう思う。

自らの仲間に向けられたこの言葉。
最近の定職につかない若者たちのことを言っているように聞こえませんか?

そして、段ボールハウスに、もくもくと絵を描く武さんは
段ボールハウスの住人ではないけれども
住人に対して悪態をつく一般人をみていてこんなことを感じたという。

僕は思うんです。毎日、毎日、自分のためにとは言いながら会社に忠義を尽くして働いているおとーさん達こそ、家族のためにと言いながら家族をかえりみずに働くおとーさん達こそ、そして社会的地位はあるけれど本当の心の居場所のない働き者のおとーさん達こそ本物のホームレスなんじゃないかって。

ホームレスは立派でもなんでもない。
しかし、ホームレスの中に自分の姿を映してみることって
結構、大切なことなんじゃないかなと、この本を読んでみて思ったのでした。


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投稿者 furukawa_yasushi : 2005年09月28日 09:20