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2005年11月02日

Rosenfole---Agnes Buen Garnas

[音楽--music ]

Rosenfole: Medieval Songs from Norway
----Agnes Buen Garnas & Jan Garbarek 1989年 ECM
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「うた」というのは大地に根ざしたもの。
大地からうまれ、天空へと響く、声が。
北の大地に響く声が、漂着する、ここに。

遊牧の民は土地への愛着を持たないなんて大嘘だ。
NHKの新シルクロード「カラホト 砂に消えた西夏」には
土地を追われる遊牧民の悲しい姿が描かれていた。

我々は、大地の上に生きている。
嬉しいこと、悲しいこと、楽しいこと、いやなこと、様々な記憶とともに「そこ」にいる時間。
その時間が僕らの体と大地を結びつける。
それは、遊牧民とておなじことなのだ。
いや、かえって定着民の方が土地の所有権に振り回されてしまって
大地への愛を忘れかけているのかもしれない。

「うた」は大地への愛に根ざしている
そういうことをこのレコードを聴くたびに感じる。

アグネス・ビュエン・ガルノスはノルウェイのテレマルク地方で生まれた。
母は、高名な民謡歌手、兄はフィドルという弦楽器の演奏にかけてはリーダー的存在、という音楽一家。
そして、中世の音楽、テレマルク地方に土着の音楽を取り上げた、このレコードをつくるに当たって、そのアレンジを、北欧のテナーサックス奏者である、ヤン・ガルバレクに依頼した。

ここで聞かれるのは、ジャズでも民謡でも、民族音楽でもない。
それは、大地からうまれ天空へと響き渡る「音楽」の原初的な姿。
どんなジャンル分けも意味をなさない確かな音がここにある。

「音楽」と「建築」の様々な関係について
多くの人が語っているが
僕にとって、「建築」とは
このレコードで聴かれるような、大地との原初的なつながりをもったものでありたいと思っている。
それは「場所への愛」のよりどころとなろう。

フェリーニがローマを愛したように
中沢新一が東京を地層深く旅したように
大地との原初的なつながりをもった「場所への愛」が
「建築」にとっては、大切なもの、ひょっとすると失われてしまいそうなものなのではないかと考えていたら
このレコードのことをふと思い出した。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年11月02日 10:05

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コメント

大地という言葉は、現代の都会生活では違和感のある言葉になってしまいましたが、土地とか場所とか、住まいとかは、もっと大切にして行きたいです。縛られるんじゃなくて、積極的な愛。仕方なくそこに住むんじゃなくて、いとおしみながら住む。そうしているうちに、このうたみたいに、根ざした強さが宿るかも〜〜。やっぱ、愛ですよね〜。

投稿者 some ori : 2005年11月02日 13:59

some oriさん
すごいな!と思う建築に時々出会います。
その「すごいな」って、いったいなんなんだろう、と、ずーっと考えています。
some oriさんからいただいたコメントの言葉をお借りすれば
「根ざした強さ」がそこにはあるからなんだということなんですよね。
つくられたものが持つ強さが、存在感と説得力を持ってそこにあるということ。
それは、ただごとではないことです。
そうした「根ざした強さ」が、これからますます求められてゆくのだと思います。

投稿者 fuRu : 2005年11月02日 14:26