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2006年03月15日

村上春樹の手書き原稿流出事件

[報道・TV--topics ]

先日、報道ステーションを見ていたら
見たことのある顔がアップで出てきたのでびっくりしました。

テレビでは、村上春樹が文藝春秋で発表した手記が話題となっていました。

中央公論社に所属していたある編集者に手渡した
手書き原稿が流出し、高値で取引されていることに対して
村上春樹は怒っているという報道。

これは、やはり、文藝春秋を読んでみないといけない。
本人が実際に書いているニュアンスを歪曲して報じられることが、こういう場合、時としてあるからです。

村上春樹がこのような手記を発表するというのは
きわめて珍しいことではないかと思います。
少なくとも僕は初めて目にします。

こうしたプライベイトなことに所属する内容のものは
あえて、表に出さないのが、村上流だと思っていたので驚きでもありました。

確かに、この問題となっている編集者が
村上春樹から受け取った手書き原稿を処分したという行為に対して
村上春樹は怒っているのですが、
今回の手記を読んでみて感じた僕の感想は
ここで話題となっている編集者のような人物は
実際にいるよなあ、というものでした。
その編集者の「人としての業」のようなものが
村上氏の淡々とした文体から、妙にリアリティを持って僕の前に立ち現れてきたのです。
そして、編集者の、この「人としての業」を、村上氏はいささかも否定してはいません。
逆に、人としての魅力として肯定しているところもあるくらいです。
そのことが、とても印象的でした。
何とも、的なずれな感想であるかも知れませんが、これが僕の感想です。

そして、今一度、村上氏の言葉を丁寧に読めば
手書き原稿を投資の対象として流通させてしまう社会のシステムや
そのシステムに荷担している人たちへの怒りがそこにあることに気がつきます。
それは、「人としての業」が、その社会のシステムと分かちがたく結びついてしまうという
そういう現象へのいかんともしがたい憤りと、
それが、いかに人の気持ちを傷つけているのかということへの深い悲しみなのだと思うのです。

そう考えたときに、村上春樹の語る言葉には計り知れない重さがあると、感じたのでした。

<蛇足>
「村上朝日堂」が再オープンしていました。
3ヶ月限定だそうです。
○「村上朝日堂

↓この本の出版記念とか。さっそく、買って読んでいます。面白い、です。

「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
amazon

<追記>
この本は、すでにCD-ROMとして発売されている
村上春樹と読者とのメール交換を、一部抜粋して書籍として出版したものだそうです。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2006年03月15日 11:15

コメント

こんにちは、fuRuさん。
やはり、この問題について書かれましたですね(^0^)。
「手書き原稿を投資の対象として流通させてしまう社会のシステムや
そのシステムに荷担している人たちへの怒りがそこにあることに気がつく。」
というところが重要ですね。あらゆるものが貨幣価値に置きえられていくこと
には、うんざりしますね。都市空間をめぐるアースダイバー的問題も、根本の
ところは同じだと思うのです。
村上朝日堂と本の情報、ありがとうございます。
中国に出張するので、その前に買って、ジェット機のなかや宿舎のベッドで
読むことにします。あっ、それからTBさせてください。

投稿者 わきた・けんいち : 2006年03月15日 12:48

わきたさん どうもです。
>あらゆるものが貨幣価値に置きえられていくことには、うんざりしますね。
まさにそのとおりですよね。

先日、NHKで「大森林の小さな家」というのをやっていました。
山奥の小さな家で山を守る仕事を続けている家族を紹介した番組だったのですが
1升瓶で50本収穫した1升2万円で取引されるという和蜂の蜂蜜を、現金に換えないのか、という質問に答えて
2万円は2万円でしかない、それよりも、いつもお世話になっている人にあげて喜んでもらう方が良い、と語ったご主人の言葉が忘れられません。

その番組が、僕のなかで韻を踏んでいるのだと思います。

加えて、アフターダークのエントリーで交わしたコメントで
村上春樹の視線が、そうした社会のシステムに向いているという実感も
この記事を書く礎(いしずえ)となっています。

投稿者 fuRu : 2006年03月15日 13:51

テレビでの怒っているという表現はどうなんでしょうかねい。
しかし、これだけは言っておかねばならない・・という、「やるせなさ」とか「切なさ」を本当に言葉を選んで書いているように思いました。(いや、これは怒ってますね・・・)
読んでいてこちらもやるせなくなるけど、「村上朝日堂」を見ると少しは元気が出るってもんです

投稿者 winos : 2006年03月15日 16:05

winosさん どうもどうも
例の報道ステーションでは「村上は大人げない」というようなニュアンスでもありました。
怒っているのは確かに怒っているんだけれども
その怒りのニュアンスが、違うぞ、ということでしょうか。
だから、ほんとにこの人達は文藝春秋の記事を読んでいるのだろうか?というところです。
ちなみに、僕は文藝春秋の手記を読んで落ち込んだ気分を
青本(330の質問)を読んで立ち直ろうかと思っています。

投稿者 fuRu : 2006年03月15日 16:27

fuRuさん、こんばんは。
「大森林の小さな家」の蜂蜜のお話し、すばらしいですね。
「いつもお世話になっている人にあげて喜んでもらう方が良い」という
ご主人の発言からは、貨幣・交換価値ではなくて、贈与的価値を大
切にすることが、この地域コミュニティでの暮らしには大切なことなの
だという確信のようなものを感じます。再放送してくれませんかね(^0^)。
ぜひ、見てみたいです。

投稿者 わきた・けんいち : 2006年03月15日 19:12

furuさん、こんばんは。こちらでは、はじめまして。
先日は、土曜喫茶にお越しいただきありがとうございました。
早速「330の質問」読みたいです。(村上さんのお誕生日をご存知でしょうか?
あの、別にプレゼントを贈ろうというのでなく、ちょっとした好奇心なのですが。)
それから、6月の目白バ・ロック音楽祭のパンフレットが今日届きました。
おちかいうち、三春堂のショップにお立ち寄りください。

投稿者 miharu : 2006年03月15日 22:29

miharuさま
土曜喫茶は良いですね。
また、よらせていただきます。
僕も「330の質問」を読み始めましたが、ほんと、いつもながらのおもしろさです。
ちなみに、村上春樹の誕生日は1月12日のようです。

さて、目白バロック音楽祭、今から楽しみです。
近いうちにお店の方に寄らせていただきますね。

投稿者 fuRu : 2006年03月15日 23:10

furuさん
ありがとうございます。お誕生日が同じでした!昔、なにかでお誕生日を
見かけた気がしたのですが、もうあやしくなってしまっていたのです。
村上春樹さん(サマ?)と同じだなんて、勝手にすごーく嬉しいです。

投稿者 miharu : 2006年03月16日 02:21

miharuさんも
村上春樹さんのフアンだったのですね。
近くに村上ファンがいたというだけで嬉しいかぎりです。
村上話で今度はもりあがりましょう。

投稿者 fuRu : 2006年03月16日 09:15

わきたさん。
「大森林の小さな家」については、改めて記事にしました。
中国、気をつけて行ってきてください。

投稿者 fuRu : 2006年03月16日 10:38