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2007年02月16日

武家屋敷「岡崎邸」@鳥取

[建築--architecture ]

鳥取は32万石という城下町。140年ほど前には城下に約4420世帯あったそうで、もちろん武家屋敷も多かったわけです。しかし、昭和18年の鳥取地震と昭和27年の大火でほとんど失われ、今ではこの「岡崎邸」と「福田邸」が残るだけなのだそうです。
この「岡崎邸」も、最近まで実際に住まわれており、大幅な増改築がされていますが、内部には鳥取の武家屋敷を伝える興味深いことがたくさん残されていました。

鳥取環境大学の教授であり「NPO市民文化財ネットワーク鳥取」の理事でもある、渡辺一正先生にご案内いただきましたので、いくつかの興味深いところをご紹介させていただきます。

まずはお座敷です。
壁が崩れ落ちて、何かが見えています。

実は、これは壁の中に隠していた梁と柱なんです。
真壁の建物ですから、構造上必要な柱はそのまま見せていると思いきや、このように漆喰の壁に塗り込んで隠している。
実はこの梁は、中二階の床をささえるために必要なもの。お座敷の天井を高くすると見えてしまうのですね。この家をつくった人は、梁を見せたくなかったわけです。

真壁・大壁論争というのがあります。
多くの木造では、柱を立てて梁をかけて空間を作ります。
簡単に言ってしまうと、その柱と梁を見せる作り方が真壁で、壁で塗り込んでしまうのが大壁。
真壁・大壁論争では、大壁か真壁か二者択一という論議になりやすいのですが
この「岡崎邸」のように、あるところは真壁で、あるところは大壁という作り方をみていると、
二者択一の論争は不毛に思えてきます。
ようするに、見せたいか、見せたくないかという意識(気持ち)が先行している、それが人間であり、人間の行為、デザインであるのだと。大壁で見せたければ大壁でつくるし、真壁で見せたければ真壁でつくるのです。
この隠された梁を見せられたときに、江戸時代にこの建物をつくった棟梁のデザイナーとしての自由な精神を感じさせてもらったような気がしました。

次は2階のお座敷です。
柱も廻縁も面皮になっています。
床の間の落とし掛けも面皮です。

丸太を製材するときに、丸い角を残せば材料を無駄なく使うことが出来ます。
「岡崎邸」では、あちこちに面皮をつかっているのですが
それは材料の無駄をなくすために考えられたということになっています。
でも、私はこの面皮の造作を見せていただき、面皮の丸い部分がとても柔らかい表情を空間に付けていることが印象的でした。
材料の無駄ということもあるのでしょうが、やはりここでもデザイナーの強い意志、面皮のカーブを空間の表情を付けるために必要としていたという強い意図を感じたのでした。これは、物をつくる者の精神があらわれていると思いますし、それこそがデザインという行為なんだと思うのです。

NPO市民文化財ネットワーク鳥取のHP
「岡崎邸」の詳しい紹介があります。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年02月16日 19:10