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2008年04月08日

「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書 」

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「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書 」
著:アンディ・サマーズ 訳:山下理恵子 出版:ブルース・インターアクションズ
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原題は「One Train Later」。一本乗り過ごして行こうか、という感じでしょうか。
それにしても邦題の「ポリス全調書」はなんとかならなかったのでしょうかね。

二部構成の本書は
第一部にポリス結成直前までのストーリー、
第二部にはポリス結成から解散までのストーリーが綴られています。
どちらもとっても面白くてあっという間に読んでしまいました。

アンディ・サマーズ、Andy Summers、本名:Andrew James Summersは1942年12月31日生まれ。65歳。
生い立ち、音楽との出会い、ギターとの出会い。
ソニー・ロリンズの「ブリッジ」。セロニアスモンク。10代のアンディ。時代は50年代。まだロックは生まれていない。ジャズへの傾倒。
16歳。テレキャスターとの出会い。1958年。ケルアックの「路上」。
ブルー・ノートでの幕間の演奏。
ズート・マネーとの出会い。ズート・マネー&ザ・ビッグ・ロール・バンドの誕生。プロのバンドマンとしての人生の始まり。

エリック・クラプトンの登場。ブルースリバイバル。
1965年。ズート・マネー&ザ・ビッグ・ロール・バンドとしての初レコーディング。23歳。
1960年代。アニマルズとの交流とLSD体験。
ダンタリアンズ・チャリオット。サイケデリック。ジミ・ヘンドリックスの登場。

バンドの解散。途方に暮れるアンディ。
ソフト・マシーン。USA。

帰英。クラプトンとの交流。ジミ・ヘンドリックスとの交流。

アニマルズへの参加。1969年「Love is」。27歳。

アニマルズの日本ツアーでのトラブル。

ケイトとの出会い。

ここまでが第一部。
何だか、ロックの歴史を生きてきた生き証人の話に耳を傾けているようです。
原題の「One Train Later」、一本乗り過ごして行こうか、というのは
自分の歩んできた足跡を振り返って言っているのでしょうか。

第二部はアンディがポリスに参加するいきさつから。

もともとスティングとステュアートがつくったポリスにはギタリストがいたので当初はギター2本のバンドとして活動していました。
でも、スティング、アンディともに、なにか大きな可能性を感じたのだといいます。その可能性を開くためには元ギタリストは力不足。確かに、残されたポリスの初レコーディングはそのギタリストなのですが、明らかに音楽性という面ではいけません。というわけで、三人になったポリス。でも、ヒット曲もなければ知名度もまったくない。どさ回りに明け暮れる日々。それでも三人は可能性を信じて進んでいった。それが、「白いレガッタ」を生むことになるのです。

ステュアートはDVDのインタビューで、一番好きなポリスのレコードは「白いレガッタ」だと言っていました。私も個人的にポリスのレコードの中では一番好きですし、高校生の時にリアルタイムで聞き込んだ記憶は身体の一部となっていると思えるレコードです。なにか、とても自然体で3者の信頼感が新しい響きをつくっている感じがして良いのですよね。

本書の後半3分の一は赤裸々な告白と言っても良いものです。ポリスというバンドの内部で何が起こっていたのか。アンディの口から語られるのは大きな痛みを伴った3人の苦悩。「白いレガッタ」以降、3人の亀裂は深まるばかりだったようです。読んでいるこちらも心が痛みます。

「ゼニヤッタ・モンダッタ」でのコマーシャリズムにたいする複雑な感情。
「ゴースト・イン・ザ・マシーン」で独裁的になるスティングとの軋轢。

その緊張感は「シンクロニシティ」で極限まで達していた。
なんと、レコーディングは三人別々の部屋で行ったということ。
しかし、「見つめていたい」のトラックが完成しようというとき
スティングがアンディにギターのリフを入れて欲しいとたのんだこと。
スタジオに入り、リフがひらめいたアンディ。
そのリフはバルトークの影響があると語っているのも興味深い限りですが
最後の最後の最後の糸がそこでつながっていたと思うと
「シンクロニシティ」というレコードの奇跡が少しだけわかったような気がしました。

第一部のロックの歴史から
第二部の赤裸々なポリス白書まで。

一冊の本で二冊分楽しめる本でした。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2008年04月08日 13:30

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コメント

アンディが65歳!?と調べてみたら、ミックジャガーより年上でした。意外!
スティングの圧倒的なソングライティングと、それを凄まじく展開してしまう3人のミュージシャンシップは、恐ろしく危ういバランスで保たれていたんでしょうね。このエントリーを読むだけでも十分伝わってきます。

それにしてもブルース・インターアクションズって渋い音楽本を出版しますね。

投稿者 kass : 2008年04月08日 14:55

kassさま
アンディはずいぶんと年寄りなんですよね。
ズートマネーのバンドでも、すでに老齢なプレイを聞かせてくれていますが
ジャズギタリストとしてデビューしていたというのが驚きかもしれません。

出版社のことに触れられていましたが
この本、訳も良いですよ。

投稿者 fuRu : 2008年04月08日 15:12

とても興味深いです♪

投稿者 ピョン太 : 2008年04月13日 22:44

ピョン太さま
この本、期待していなかったのですが
とんでもなく面白い本でした。
是非、お時間を見て読んでみてください。

投稿者 fuRu : 2008年04月13日 23:37