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2009年10月17日

河口龍夫展@東京国立近代美術館

[アート--art ]

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10月13日になりますが、竹橋の東京国立近代美術館で開催中の「河口龍夫展 言葉・時間・生命」のプレビューに行ってきました。今回のプレビューはTwitterユーザー限定のレセプションへのご招待。つぶやいた人の中から抽選で選ばれるという仕掛け。私もちょっとつぶやいてみたら見事当選したというわけです。
「黄金のシカン展」「皇室の名宝」に続いて、ブロガーであったりツイッターであったり、インターネットの世界に何か発信している人たちにむけて、こういう機会が設けられるというのは、今の時代の一つのあらわれなんだと思います。マスメディアではなくミニコミ、口コミの有効性が認識されてきています。

ブログとかツイッターというのは口コミの道具として有効です。私もいちユーザーとしてブログやツイッターから様々な情報を得ていますし、そこで流通している情報には有用なものが多いということを感じています。
逆に、個人のブログに商品の宣伝のような記事を書いてもらって広告効果を得るという手法が盛んになっていて、そうした記事に対して広告なのか個人の記事なのかを明確に記述することが求められ始めています。

というわけで、河口龍夫展のご紹介です。念のために言っておきますが、今回のご招待はブログへの記事を書く義務を課されていません。あくまでも個人的に記事を書いております。

最初の写真は「関係-無関係・立ち枯れのひまわり」。今回の展示の中で一番好きな作品かも知れません。なお、掲載させていただいている写真はすべて主催者側のご了解を得て撮影されたものです。
古来芸術作品は経年変化に対して耐久性のある画材であるとか素材を求めてきました。絵画で言えば、テンペラ、フレスコ技法。彫刻で言えばあえて硬い石で彫るなど。それに対して河口の作品には「生もの」が登場します。種子であるとか草であるとか。1998年のこの作品でもひまわりが大胆に使われています。「生もの」をあえて使うことによって作品の中に独自の時間が生まれています。草は枯れやすいのですがハスの実については古代ハスの数千年前の種が発芽したというニュースを引用して、その時間に特別な力を感じていると河口氏は語ります。その特別な時間が表現につながっています。

新作である「7000粒の命」という作品ではハスの実が鉛の薄板で丁寧にくるまれており、生命の力を大切に封印しているようです。

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これまた新作である「時の航海」では使われなくなった漁船にやはり鉛の薄板で包まれたハスの実が針金で放射状に付けられています。この作品の中央には「木馬から天馬へ」という作品が乗っていて、この作品にはハスの花托が象徴的に空に向かって伸びています。

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河口氏の作品にみられる「時間」と「空間」の感覚は少しだけ超越した世界を見つめていて、その少しだけ超越したところが、多くの人の心をとらえるのではないかと思いました。

「関係ー時のフロッタージュ・5億6000万年」(2009)は古代生物の化石をフロッタージュした作品です。フロッタージュという技法によって、そこに何か別の時間が浮き出てくるようです。

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また、「DARK BOX」には年号が記載されていて、その年に封印されてきた時間の経過そのものが作品となっています。

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1974年の「COSMOS」のシリーズには天空への思いが込められています。
作品を保護している表面のガラスが光ってしまってうまく撮影が出来ませんでしたが、夜空の星を忠実に紙に落とし込んで、星の名前を青いペンで書き込んでいる作品です。とてもきれいでした。

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そしてこちらは大きな作品です。インスタレーションというジャンルになるのでしょうが、1972年の「関係ーエネルギー」。宇都宮美術館所蔵とのことですが、そのまま展示されていました。この作品では光とともに音が重要で、耳を澄ますと聞こえてくる様々な音がこの空間を立体的に浮き上がらせていました。

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プレビューでは河口氏や美術館関係者による記者会見もあり、その時の河口氏の言葉がとても印象に残りましたので書き留めておきます。

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展覧会は作家と学芸員とのコラボレーションだ。
その考えで1年間にわたり月1回のミーティングを行い展示内容を決めていったそうです。

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芸術は精神の冒険だ。

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展覧会そのものが大きなひとつの作品となるように考える。
しかし、近代美術館の内部は天井が低くて苦労したというこぼれ話も。

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「言葉」も「時間」も「生命」も普通の言葉。美術の専門用語でもイズムでもない。
今回の展覧会では美術の専門家でなければわからない用語が一切使われていない。そこが気に入っている。

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発表したからには、作品は社会化され、自分のものではなくなる。
だから、破壊することは作者であれど許されない、

などなど。

最後に「プレスtwitter」のワッペンの写真です。

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河口龍夫展 言葉・時間・生命
東京国立近代美術館
10月14日から12月13日まで
入場料 850円です。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2009年10月17日 10:50

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コメント

河口先生、近代美術館で展覧会だなんて、今も元気に大活躍なんですね~。
こんなスゴイ先生に授業で教わっていたなんて、なんだか恐れ多いです。

投稿者 ぴょんきちりぼん : 2009年10月17日 15:02

ぴょんきちりぼん さま
我々が筑波にいた頃、河口先生が赴任してまもない頃だったようです。先ほど年表を見て確認しました。私は大学院でしたが河口先生には何度かお会いしている記憶があります。でも、20年も前のことをいきなり先生に切り出しても混乱を招くばかりと思い、先生にはお声掛けするのをやめてしまいました。でも、筑波にいたんだということくらいはお話しておけば良かったなと今更ながらに後悔しております。
ところで、先生は偉そうにしていないところがやはり凄いなと思いました。
元気元気で、これからって感じでしたしね。新作の大作が多いのにも驚きですよ。
上野の博物館の若冲と合わせて上京されてはいかがかな?

投稿者 fuRu : 2009年10月17日 15:14