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2009年12月13日

「アメリカの住宅生産」---戸谷英世

[a-家づくりについて---house_making ,books ]

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「アメリカの住宅生産」
著:戸谷英世 住まいの図書館出版局 住まい学体系089
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個人住宅を建築家が設計するということが日本ほど普及している国はないのかもしれません。
この本では、アメリカの住宅生産の歴史をたどりながら、現在のアメリカで主流となっている住宅生産の在り方について語られています。
他の国の話に耳を傾けてみると自分たちの姿が良く見えてくる、そういう意図がこの本にはあります。

前半、半分ほどまではアメリカの住宅史が淡々と語られていて、資料的には良いのですが、どうも読んでいてちょっと辛いところがありました。しかし、ちょうど半分位から歯に衣着せぬ戸谷さんの激しい言葉が現れ、暗闇で頭を叩かれたような具合で一瞬のうちに惹き込まれてしまいました。

注文住宅は、住宅会社や建築家の肩書きある者に頼めば、期待通りのものができると信じ込まされてきた。しかし、これらの住宅は、住宅設計に専門的知識や技術を持たない建築主の住宅に対する断片的な思いが、設計能力の薄弱な業者に裏切られ騙されて、工事用図書として纏めただけのものである。 注文住宅といっても、奇抜さや目新しさで味付けしただけのものであるならば、そのデザインも住宅機能も社会性がなく、物理的性能だけは一定の内容を持っていても、住宅市場では第三者の批判に耐えられないものが殆どである。(126ページ)

アメリカの住宅生産が素晴らしいと言って、両手を上げて受け入れるだけではいけません。日本になじまない分も多いでしょう。しかし、住宅の建設コストがアメリカと日本で雲泥の差があること。それは、生産システムの合理化がアメリカでは進んでいてコストがコントロールされているためです。それに対して、日本ではコストが客観的にコントロールされる地盤そのものが、大多数の住宅生産者側(町場の工務店さん)にないこと。スタンダードな家づくりが確立されていないことがあげられています。
これからの社会を考えると、日本でもアフォーダブル(支払い負担能力範囲内)な住宅の生産方法が確立されなくてはならないことは必須です。とすれば、住宅のコストの問題に真正面から取り組まなくてはならない。
我々設計者も大きな課題を突きつけられているのです。
アメリカ式の住宅生産を見習うのか独自の方法を見つけるのか、どちらの道を選んでも大変なパワーが必要になることには違いません。
アメリカ式を見習うのは簡単そうに見えますが、日本の住宅生産とのギャップが大きすぎて大混乱を招くことになるでしょうし、今まさにその大混乱は起ころうとしているかのようです。大混乱のあとに、日本独自の方法が見つかるのかもしれません。時代は待っていてはくれないのです。


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投稿者 furukawa_yasushi : 2009年12月13日 22:15

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