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2009年12月09日

Someday My Prince Will Come---Miles Davis

[ジャズ--jazz ]

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Someday My Prince Will Come
Miles Davis 1961年
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マイルス・デイビスは「Kind of Blue」に続く作品としてこのレコードを発表しました。
高校生の時に「Kind of Blue」の斬新さに心底魅了されていた私にとっては、どうして次の作品がこの保守的なアルバムなのか、まったく理解できずにいたのです。
正式な次作としては「Sketches Of Spain」というアルバムがありましたが、これは「Porgy And Bess」を完成させたものであり、その意味では単独作というよりもギル・エヴァンスとの共同作業ですから、全く別の流れと理解できます。すると、「Kind of Blue」から直線でつながる次の作品はこのアルバムになるのです。

私には、ここで演奏されているのが、あまりにも保守的なジャズ。ハードバップの延長にしか聴こえなかったのですね。なにせ「Kind of Blue」の次ですから、もっととんでもない方向に飛んで行っても良いのではなどと思ったわけです。

実際に、ここで聞くことができるのはジャズの王道、ストレートアヘッドなジャズ。ジャズといえば誰もが思い浮かべることができるような、そいう音楽です。
細かく聴いてゆくと、実に斬新なところもあるのでしょうが、2009年の私の耳には「ジャズ」と一括りにされる音楽の中にうもれてしまうような違いなのでしょう。

でも、逆に、このレコードを聴いていて「ジャズ」ってなんだろうと、今更ながらに考えることができたような気がします。

なんといってもこのレコードの白眉はタイトル曲のコルトレーンのソロでしょう。2分足らずの演奏ですが、その2分のためにこのレコードを買っても良いほどのキラメキに満ちています。
マイルスが当時のバンドメンバーだったハンク・モブレイだけでは、何か足りないと思ったそのヒラメキが全てかもしれません。
モブレイも絶頂期に入ろうというコルトレーンとソロを比べられてしまうのですからたまったものではありません。それでも決して下手なソロではないのですが、その違いは十分に出てしまっています。

ピアノのウィントン・ケリーも、新しい音を弾こうとしているような感じですが、今ひとつです。ビル・エヴァンスのようにはゆきません。ベースのポール・チェンバースはあくまでも堅実にビートを刻みます。

革新、確信、保守、健闘、挑戦。

ひとつの演奏の中に様々な顔が浮かび上がります。
そう考えると実にバラバラな演奏、バラバラな音楽作品かもしれません。

ところが、ジャズと言うのはそうしたバラバラさを優しく包み込んでくれる懐の深さを持っているのです。

ジャズと言うフォーマット、ジャズと言うプラットフォームの魅力。
バラバラなものを包み込む大きな力。

ああ、それがジャズの魅力だったんだよなあ。
思い出すように、そう感じながらこのレコードを聴くのでした。


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投稿者 furukawa_yasushi : 2009年12月09日 19:50

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