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2011年04月20日

「下水道革命」---石井勲

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「下水道革命」
著:石井勲 出版:藤原書店; 改訂二版 (1995/11)
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師匠である長谷川敬さんの事務所に私が入るきっかけとなったのは、長谷川さんからいただいた一枚の年賀状に描かれていた浄化槽のイラストでした。
年賀状には、その浄化槽で処理した水は飲めるくらいにきれいになるんだよという夢のようなメッセージが書かれていました。
ちょうどその頃、その時に務めていた設計事務所で水の問題についてのレポートをまとめなくてはならなくなり、長谷川さんにその浄化槽について話を聞きに行ったのを今でも覚えています。
その時に、長谷川さんからは「石井式浄化槽」というものを教えていただき、あわせてこの「下水道革命」という本も紹介いただきました。

浄化槽というのはバクテリアに有機物を分解してもらう装置です。酸素を使って分解するバクテリアと酸素が嫌いなバクテリアがいて、大きく二種類に分けられるバクテリアのためにそれぞれ部屋をつくって、そこに有機分を通して分解・浄化します。市販の浄化槽も原理は全く同じなのですが、どうしても処理能力があまり高くない。

石井氏は市販の浄化槽の問題点を大きく2点にまとめています。
ひとつはバクテリアの生活圏である槽の大きさが十分に大きくないことであり、
もうひとつは槽内の環境が複数のバクテリアが共存するのに適していないことです。バクテリアは複数種がコロニーを形成してバランスを取ることによって活発に活動するようになるのです。

こうした問題点を解決するために、まずは、市販の浄化槽よりも大きな槽にしました。そして、バクテリアの生活環境を良くしてあげるために、エアーの調整をまめにして、さらには様々なバクテリアが生活できるよな環境を作るためにヤクルトの空き瓶を槽の中に充填しました。その結果、飲用が出来るほど綺麗に浄化することができる浄化槽の開発に成功したのです。

この高性能な浄化槽があれば、河川の汚染を防ぐことができます。また、数軒から数十軒程度の処理能力を持った浄化槽をコミュニティで共有することで、下水道という巨額のコストが掛かるインフラからの脱却が出来るのです。

今回の震災での下水道インフラへの大きなダメージを考えると、個人でこうした高性能な浄化槽を持つことはその対策としてとても有効だと思います。ただ、槽の大きさが大きいので敷地に余裕が無いと設置できないという問題があります。ですから、一軒で使うというよりも、数十軒で共有する事で、中域、小域での下水処理を実現すれば、災害時のリスクを分散する事が出来るわけです。下水道というような広域を対象とした考え方ではない、中小を対象とした小さなインフラの集合体で考えること。そのためには、石井式浄化槽の考え方が有効ではないかと思ったのでした。ずいぶん前に読んだ本ですが、この機会にご紹介させていただきました。


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投稿者 furukawa_yasushi : 2011年04月20日 09:45

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