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2004年12月31日

2004年から2005年へ

[01-森林をいかす家づくり--moriiki ,いろいろ--misc. ]

2004年の初頭に僕は何を考えていたのかなと思って
「アトリエフルカワ通信 Vol.42-2004年1月9日号」をみてみました。
アトリエフルカワ通信というのは2002年の5月からごく個人的に始めた不定期のメールマガジン。

さて、そのVol.42で書いていたことを紹介しましょう。

新春読書--新年の初頭に思う-その2

昨年のベストセラーに「年収300万円の時代を生き抜く」というのがあります。--タイトルは不正確に記憶しているものです---気になって昨年暮れに一気に読みました。
新年の毎日新聞には「りそな銀行」の話題が一面にでていました。
年収300万円の時代に大きなリアリティがついてきました。
では、年収300万円の時代の家づくりというのはどうなるのでしょう?
超高収入の一部の人にしか家は造れなくなるのでしょうか?

以下、私の楽観的な予測です。

1-超高収入の人たちは勝手にやっている
2-その他大勢の人は 物事の価値や生き方を考え始める
3-今までのような とにかく自分の家が欲しい ということはどんどん少なくなる
(ちょっと強迫観念みたいな「家を持たねば」というのは最終的にはほとんど無くなると思います。核家族化と同時進行の住宅のスクラップ・アンド・ビルドへの大いなる反省もそこに重ね合わせて考えられることでしょう。)
4-新築件数 激減!(ここで、生き残らないといけませんね)
5-リフォーム市場・中古市場活性化
(住宅が社会のストック-資産であることが一般的な認識となる)
6-社会資産として価値のある住宅に評価が高まる
7-社会資産として価値のある家づくりを出来るものが生き残る

というわけで、ここで社会的資産として価値のある家とは何か、ということですが、それは、地場産材を使った木の家とコーポラティブハウスだと私は考えています。
そうした流れの中で、設計という職能は大きく変わってゆくはずだと考えます。

さて、どうなることやら。神のみぞ知る、というところでしょうか。

ところで、超高収入の人の家は誰が設計するんだろう・・・?

実はこの記事には続きがあります。

新春読書--新年の初頭に思う-その2 さらに・・・

「年収300万円の時代を生き抜く経済学」という昨年のベストセラーを読んで考えたことを、前回の通信で書きましたが、ちょっと補足しておきたいと思います。

私の楽観的な予測で、これから生き残る家というのは
1、地場産材を使った木の家
2、コーポラティブハウス
と ふたつ あげさせていただきました。

これからは社会的資産として価値のあるものが求められてゆくだろうという見通しの上での展望です。

1番の地場産材の木を使った家というのは
森林と共生する家づくりと言う意味で これは社会的な基盤と言えます。
森林と共生するということは、森林で育った木を育った分だけ次の世代のために使ってゆくというサイクルです。これは地球の資源を必要以上に無駄に使わないと言う考えであり、そこから求められる家づくりのシステムです。昨年暮れから始めた「森林をいかす家づくりの会」は、そのシステムを模索するために始めました。
こうした木の家づくりは、そのシステムそのものが社会的な資産なのです。
さらに、品質の高い木の家はメンテナンスをしっかりすれば100年以上にわたりすみ続けることが出来る、つまり次の世代に引き継ぐことの出来る社会的な資産としての価値があり、さらに空気中の炭素を木材として固定していることにもなりますから、二重にも三重にもさまざまな意味で木の家は社会的な資産と言うにふさわしいものだといえます。

2番目のコーポラティブハウスは、住まい手の意識が家の価値を変えてゆくという展望から書きました。
コーポラティブハウスというのは、集合住宅の一種で、一緒に住む人たちが組合を作ってその組合を母体として、集合住宅造りを進めてゆくものです。
日本では、土地が高価なこともあって本来の意味で住民主導型のコーポラティブハウスは実現が難しいのが現状のようです。一方、コーディネーター主導型のコーポラティブハウスは結構実績もあって、わたしも小金井のプロジェクトに参加させていただいた経験があります。
コーディネーター主導型のコーポラティブハウスというのは、コーディネーターが土地探しと住民募集を行い、集まった住民で組合を作ってもらいます。募集の段階で建物の基本設計が出来ている必要がありますから、設計先行で事業は進められ、住民による組合が結成されてから、設計者は組合の承認を得て次の段階に進むと言う具合になります。
ところで、こうしたコーポラティブハウスを支えている考え方に「スケルトン・インフィル」があります。これは、十分丈夫な(100年以上の)耐久性がある鉄筋コンクリートの箱を「スケルトン」つまりは「骨格」として、それを土地と同じ資産価値があるとみなし、その中で住まい手の多様な生活を支える内装や設備は「インフィル」つまりは「内装」としてわけて考える考え方です。一戸の空間はコンクリートの壁で囲まれたワンルームのフリースペースとして提供されることが、「スケルトン・インフィル」の前提条件です。これは将来的な「スケルトン」のみの売買が行われるときに、より自由な空間の組み立てが出来ることに価値があるとの判断ですし、一方で、それを支える「スケルトン」というものへの資産的な価値(土地と同様)を明確にしています。
さらに、「スケルトン」に土地と同様の定期借地権を設定する「つくば方式」などさまざまな展開が広がってきています。
質の高い「スケルトン」であれば、これは間違いなく社会的な資産でしょう。そして、今までのように出来たものを買うというマンションの売り買いではなく、住まい手の積極的な参加が「インフィル」として可能になってくる訳で、これは住まい手の意識をかえてゆくものはずです。

さて、以上のふたつの流れとは別に、もう一つの流れが「年収300万円時代」にはやって来ると思います。それは「セルフビルド」です。これについて、前回は書きそびれていました。

「年収300万円時代」では、多くの人がお金はないけれど自分の時間はあるという状況になる。確かに、その通りだと思うのですが、そうなると今までは時間がなくて、工務店などにお任せだった家づくりに住まい手がどんどん参加してくるのではないかと考えています。実際に、私のところに相談に来られる方の多くが出来るだけ自分でやってみたいと言われています。でも、時間的な余裕がないために、やれることは限られてしまうのが現状なのです。これが、もっと時間に余裕があれば、と思うと「年収300万円時代」はなかなか愉しい時代ではないかと思っています。

と言うわけで、「木の家」「コーポラ・・・」に加えて「セルフビルド」も重要なキーワードです。
そして、「年収300万円時代」にむけて、もっともっと楽しい家づくりをこれらのキーワードをもとにサポートしてゆきたいと私は考えています。

ずいぶん長い引用になってしまいましたが
はたして2004年はどうだったのでしょうか?
現実的には年収300万円時代というのは、まだやってきていません。
これについてはいろいろな考えがあるかとは思いますが、僕としては確実にそういう時代はやって来ると考えています。やってきたら考えればいいということもありますが、その時にはすでに遅いということもあります。特に、「木の家」のこと。社会的なストックとしての「木の家」の実現は大きな課題だと思っています。その課題の根底にある日本の林業が抱えている根本的な矛盾。その矛盾を今から少しづつ良いほうに向けてゆかないと、それこそ本当に手遅れになってしまうのではないでしょうか。なんと言っても、何十年単位でしか変わっていってくれないのです。森というのは。

というわけで、2005年に向けて「木の家」をもっと前向きに考えてゆきたいと思っています。
森林をいかす家づくりの会」の活動にももっと力を入れてゆくつもりです。
森林インストラクターの資格も取ったことですしね。

ちなみに「アトリエフルカワ通信」というのは、設計の相談を受けた人や、家がすでに完成した方、先輩・知人にあてて送っています。
最近は月曜日に前の週にエントリーしたブログの記事のお知らせが中心になっていて、
以前のように長い記事を書くことがなくなりましたが、
もし、送って欲しいという奇特な方がおられましたらメールでお知らせください。登録させていただきます。

では、みなさん。よいお年をお迎えください。

投稿者 yasushi_furukawa : 2004年12月31日 00:55

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コメント

フルカワさんこんばんは。
今年もいよいよ残りわずかですね。
フルカワさんのBlog、いつも楽しみに読ませていただきました。住宅関係の記事はとても参考になります。来年も何卒宜しくお願いいたします。ではでは、あと数時間ですがよいお年をお迎えくださいませ。

PS:記事にて紹介のありました、メールマガジン。ぜひ、登録させていただきたいと思います。お手数ですが、このコメントに登録したメールアドレスでぜひ、宜しくお願いいたします。

投稿者 sunneko11 : 2004年12月31日 21:36

sunneko11さん こんにちは
村上春樹ネタではお世話になりました。
アトリエフルカワ通信ですが
さっそく登録させていただきます。
あと1時間ほどで新年です。
来年もよろしくお願いします。

投稿者 fuRu : 2004年12月31日 22:59