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2005年05月30日

Since We Met----BILL EVANS

[ジャズ--jazz ,音楽--music ]

Since We Met----BILL EVANS
1974年1月11,12日 Village Vanguard (new York)でのライブ
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ビル・エヴァンスは何度もトリオでニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードに出演している。
最も有名なのは、スコットラファロとのトリオで出演した時のもの。
1961年6月25日。
そして、それから13年後のこのライヴ。
僕は、エヴァンストリオでのゴメスは、
どうしても、あの彼特有のバチバチ叩き鳴らすような弾き方が気になってしまう。
でも、ここでの演奏は彼がそのことを意識しているのかどうかわからないが、
叩きつけるような弾き方を彼はひかえている感じ。
そんな、ちょっと柔らかくなったゴメスのベースとビルのピアノが
ヴァンガードの空間を突き抜けて、僕の耳に飛び込んでくる。

マイルスの動的なイメージを引き合いに出すと
ビルは対照的に、静的なイメージでとらえられる。
そして、自分の音楽を変えないという保守的なイメージさえ持っている。

確かに、マイルスのように時代と戦うかのように自らのスタイルを変革していったわけではないが
ビルのスタイルは時とともに確実に変わっている。
この1974年のライブは
最近になって手にしたのだが、とても新鮮に僕の耳に聴こえた。

それは、ピアノという限定された楽器(楽器はすべて限定されたものだ)に向かったビルの目の前に広がっている空間が違っているということだ。
鍵盤を叩く事。弦がはじかれ音が響く事。
叩く→はじかれる→響く。
この一連の行為に含まれている時間、タイミングの感覚。
その質が明らかに変化し、その変化が、彼が座るピアノの周辺の空間をつくる。
築かれた空間の質的な変化。

ビルは一度築いた自らのスタイルに甘んじていた事など一度も無いのだと
その時に、僕は理解する。

そして、それはマーク・ジョンソンが加わった最後のトリオで明らかになる。
本人が発表を承認していた録音としては最後の演奏だった1980年6月。
それは、偶然ながらヴァンガードでのライブ録音だった。

<蛇足>
それにしても、1961年のヴァンガードの聴衆と1974年の聴衆の対照的な事。
1974年の会場にはビルの音を求めてやまない耳がある。

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年05月30日 09:30

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