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2005年09月05日

JIDA Design Museum Selection Vol.7

[建築--architecture ]

AXISギャラリーで開催中の
JIDA Design Museum Selection Vol.7に行ってきた。
尊敬する建築家であり、ブログの師匠であるところの
秋山東一氏が長年関わってこられたフォルクスハウスに端を発する
Be-h@us」が、プロダクトのひとつとして選ばれている。
会期は明日(9月6日)まで。

さて、Be-h@usのコーナー。
展示されているものはBe-h@usのマニュアルのみである。
その、マニュアルだけを展示するということに
秋山東一氏からの我々への問いかけがあるように思った。

それは、とりもなおさず、
「住宅」が「プロダクト」になるうるのか、
なるとすれば、それはいかなる形態においてか、という問い掛けでもあろう。

SonyのVAIOコンピューター、Canonのプリンター、ホンダ、トヨタの車、ヤマハのタンデム、スズキのバイク、
などなど数え上げればきりがないセレクションのなかで
「Be-h@us」は、ひときわ異彩をはなっていた。

それは、単純な話であって、ようするに「形なきもの」として、展示されていたからだ。
それが、マニュアルだけを展示されていたということである。

「プロダクト・デザイン(生産デザイン)」というものが、
「インダストリアル・デザイン(産業デザイン)」であり、
それがとりもなおさず、マスプロダクション(大量生産)を前提として
大量消費を、補いうながすものであるとするならば
そこには、巨大な資本が介在することになるだろうし
さらにそこには、資本主義の利益を生み出し資本を増強してゆくという力が存在することになる。
そして、現代の大量消費社会を支えているのは「その力」であることに間違いはない。
もちろん、そこでデザインの目的さえ間違わなければ、ヴィクター・パパネックの「生きのびるためのデザイン」を持ち出すまでもなく、何の問題もないわけである。
しかし、一方で、生産者からの一方的な生産物の提供、過剰なイメージの押し売り、が、あまりにも日常的になってしまっていて、消費者のとる態度はとてもパッシブになってしまっている。そこでは、消費者が選択出来る自立した道は隠蔽されてしまいかねないのだ。さらに、悲劇的なのは、その隠蔽工作が消費者自らの手によって助長されているように見えることだろう。

「住宅」もしくは「建築」は、場所をもつものである。
すべての場所は世界にひとつだけであり、その場所のために、たったひとつの建物は建てられる。
それゆえ、建物のデザインは一個一個違ったものになり、たとえ同じ形でつくられたとしても、窓から見える風景は、隣同士でも異なったものになるわけである。それゆえ、建物のデザインには固有性が強い。ようするに個別対応されたデザインとなる。
個別対応とマス対応、プロダクトデザインと建物のデザインの間には大きく一本の線が引かれることが多い。美術学校のコースでも「プロダクトデザイン」と「建築」は、まったく違ったカリキュラムを組まれている。

では、建物の世界が、マスプロダクションによって可能となった、コストと品質の恩恵を受けることはないのか、ということになるが、そんなことはない。事実、アルミサッシュを始めとする工業製品の恩恵に十分にあやかっている。しかし、基本的な部分は町場の工務店さんの手腕に頼ることになり、大きな意味での個別対応のデザインであることには変わりがない。
しかし、その個別対応であるはずのデザインも、大手ハウスメーカーを筆頭とする、過剰なイメージ戦略、イメージの押し売りによって、消費者がわの自立した判断が見失われがちになっていることも事実なのだ。

いま、自立した家づくりを目指すとすれば、自立した家づくりを理解しサポート出来る設計者が不可欠だ。そして、家づくりのメソッドとしても、開かれたオープンな技術によるシステムが必要となってくる。
そのシステムは、ものを大量に生み出すシステムではないだろう。ものを大量に生み出すシステムは、時として本来の目的から逸脱してしまう。そのシステムは、使う者にとって考えるツールとなるべきものである。

もし、「住宅」で「プロダクトデザイン」が可能ならば、それはどういうものであるべきなのか。
それは、住まい手の多くの様々な要求に個別に対応出来る、個別対応のシステムであるべきだ。
しかし、それは、過剰なイメージの渦に呑み込まれた消費社会の被害者の欲望を満たすだけのようなものであっていいはずがない。それは、住まい手の自立した家づくりをちゃんと支援出来るシステムとしてあるべきではないだろうか。

「Be-h@usとはマニュアルである」という秋山東一氏の問いかけから
そんなことを考えてしまった。

「住宅」における「プロダクトデザイン」というもの。
Be-h@usが目指しているものは、いたく刺激的である。

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年09月05日 17:00

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トラックバック時刻: 2005年09月05日 17:14

コメント

今回の「JIDA Design Museum Selection Vol.7」に選定された「Be-h@us」というものを、こんなに深くお考えいただきありがとうございます。建築とプロダクト、その違いと関係、古川さんのお考えによってより明解に理解できるように思います。
自分自身で作ることを忘れてしまった人々に、作ることをうながす、それはマニュアルの公開、共有、そこに CITROHAN.net の目的があります。

投稿者 AKi : 2005年09月05日 17:23

AKiさんこと秋山さんご自身からのコメント、ありがとうございます。
>自分自身で作ることを忘れてしまった人々に、作ることをうながす
その通りだと思います。
そして、つくる喜びをそれぞれの手に少しでも取り戻すことが出来たらと考えます。

投稿者 fuRu : 2005年09月05日 17:56

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