« 「我輩は施主である」-赤瀬川原平 | メイン | 「毎日かあさん」-西原理恵子 »

2004年04月06日

「沈黙の春」-レイチェル・カーソン

[books ]

「沈黙の春」
著:レイチェル・カーソン 発行:新潮社
amazon

レイチェル・カーソンの有名なこの本は、とても恐ろしい。農薬が恐ろしいと言うのはもちろんだが、この本が書かれた1962年から40年以上経った今でも、その恐ろしさがそのまま残っていると言う、そういう恐ろしさ。
ホームページの書評から転載する。

---------------------------------------------------
1962年に出版された古典的な名著を手に取りやっと読む機会が訪れた。日本訳も1964年。いまから40年近く前だ。僕の生まれたのが1963年。そんな時代にこんな本が世の中に問われていたというのは大きな驚きだ。そして、シックハウス症候群や環境ホルモンの話題が高まっている中、根本的なところでこの本の持つ意味は全く失われていないということは、衝撃的でさえある。この本についてとやかく言うのは無意味だ。多くの人に読んで欲しいと思うばかりだ。ここでは、本の内容について簡単に触れておこう。全17章で書かれていることだ。「」は本文からの引用である。
---------------------------------------------

1、明日のための寓話
春が来ても自然は黙りこくってる そんな恐ろしい近未来の姿が描かれる


2、負担は耐えねばならぬ
害虫の防除のために化学薬品を使う必要があるのならば、それについて知る権利がある。
ジャン・ロスタンの言葉「負担は耐えねばならぬとすれば、私たちには知る権利がある」


3、死の霊薬
合成殺虫剤 毒からからだを守る機能を果たしている酵素を破壊する、肉体のエネルギー源である酸化の働きを阻害する、そのほかいろいろな器官をいためつけ、悪性の腫瘍を発生させる。そうした、殺虫剤の代表的なものについて書かれている。
DDT、クローデルン、ヘプタクロール、ディルドリン、アルドリン、エンドリン、パラチオン、マラソンなど。


4、地表の水、地底の海
殺虫剤がおよぼす水資源の汚染について書かれている。散布された殺虫剤が河川、湖沼に流れ込み、そこで暮らす生物に化学薬品が蓄積されること。


5、土壌の世界
殺虫剤がおよぼす土壌汚染について書かれている。土壌の世界はさまざまな生物が織りなす糸によってたがいにもちつもたれつしている。そのような世界を破壊すること。その恐ろしさ。


6、みどりの地表
除草剤の影響について書かれている。雑草を化学薬品で枯らして対処する方法ではなくて、植物を食べる昆虫の働きに注目して対処する方法に目をむけるべきだ。


7、何のための大破壊?
昆虫駆除剤、除草剤などの散布でいかに大きな破壊が起きたかについて書かれている。
「生命あるものをこんなにひどい目にあわす行為を黙認しておきながら、人間として胸の張れるものはどこにいるであろうか?」


8、そして、鳥は鳴かず
化学薬品が食物連鎖の中でその影響を広く持つことについて書かれている。直接、殺虫剤にあたって死ぬのではなく、食べ物として摂取するミミズを経由して中毒を起こして、大きな被害を受けたコマドリの例など。


9、死の川
河川の汚染について書かれている。広い森林地帯の科学的昆虫防除の結果、魚の生命がおびやかされているなど。幼生は微量の化学薬品でも死んでしまう。貝などの軟体動物は毒物を体内に濃縮する。濃縮した毒物を食べる他の生物が死の憂き目にあうこと。


10、空からの一斉爆撃
化学薬品の航空散布の影響について書かれている。航空散布によらない方法を。ヒアリは巣への直接散布が有効である。


11、ボルジア家の夢をこえて
人間の食べ物にも殺虫剤がふりかかっていること。我々の生活環境そのものが化学薬品の影響から逃れられないこと。


12、人間の代価
人間への直接の影響について書かれている。有機燐酸塩中毒のおそろしさ。神経系を直接冒す薬たち。


13、狭き窓より
生物細胞のひとつひとつに、その分子の原子反応に化学薬品がどのような影響を及ぼすのか。ミトコンドリアとATPについて。生殖機能への影響。染色体異常など。


14、四人にひとり
発癌物質。悪性腫瘍について。


15、自然は逆襲する
昆虫駆除剤。昆虫は昆虫で人間の化学薬品による攻撃を出し抜く方法をあみだしていること。複雑な生物の世界。自然のバランス。化学薬品が自然相互のやりくりを狂わせてしまう結果を生むこと。一種の駆除が多種の異常発生を生むなど。


16、迫り来る雪崩
昆虫抵抗時代。前章の具体的な事例。


17、べつの道
我々の知る権利。そして生物学的な解決について。
「私たちの住んでいる地球は自分たち人間だけのものではない--この勧化から出発する新しい、夢豊かな、創造的な努力には<自分たちの扱っている相手は、生命あるものなのだ>という認識が終始光りかがやいている。生きている集団、押したり押しもどされたりする力関係、波のうねりのような高まりと引き---このような世界を私たちは相手にしている。昆虫と私たち人間の世界が納得しあい和解するのを望むならば、さまざまな生命力を無視することなく、うまく導いて、私たち人間にさからわないようにするほかない。」
----------------------------------------------

背筋も凍るような内容。事実の集積。明日にむけての静かで強いメッセージ。心を打つ本である。
(2003.05.09記)


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年04月06日 19:38

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://af-site.sub.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/12

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「沈黙の春」-レイチェル・カーソン:

» 沈黙の春 from 無精庵徒然草
 有名に過ぎて、なかなか読めない本があるものだ。その本や本の著者についての話、あ [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年07月24日 12:46

» 半蔭地選定 沈黙の春 from 宮沢賢治の風 from 方城渉
 月齢 5.1日   ■宮沢賢治で 病気もストレスも吹き飛ばせ  今日は宮沢賢治の「半蔭地選定(はんいんちせんてい)」から。  半蔭地〔ハーフ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年04月04日 15:42